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バットマン(映画)

てぃむばーとんばんばっとまん

1989年公開のアメリカ合衆国のヒーロー映画。DCコミックスのアメリカンコミック『バットマン』の実写映画化作品であり、監督はティム・バートンが務めた。
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「I made you...you made me first.」


作品解説編集

DCコミックスによる同名のアメリカン・コミックス『バットマン』を原作とした1989年公開のアメリカ映画

1969年公開の旧テレビシリーズ(邦題『怪鳥人間バットマン』)の劇場版『バットマン オリジナルムービー』から20年ぶりの『バットマン』の実写映画化作品である。

配給はワーナー・ブラザース


監督は1988年公開の『ビートルジュース』の大ヒットで一躍有名監督の仲間入りしたティム・バートンが務めた。また、主演のマイケル・キートンも『ビートルジュース』で主役を演じており、ティム・バートンたっての希望による起用であった。


当時のアメコミ界は86年のフランク・ミラーによる原作コミック『バットマン:ダークナイト・リターンズ』が起こしたムーブメントによって全体的にシリアスでリアルなドラマ性を重視した方向性に移行していった時期にあたり、本作もそれに連なる作品である。

時代設定こそ現代だが、舞台となるゴッサム・シティゴシック調建築と工業都市をミックスしたデザインで造形され、一般大衆も男性はほぼ全員ハットを着用するなどファッション面でも戦前ぽさを前面に押し出し、1900年代前半のアメリカのようなレトロな雰囲気が漂う。

また、物語の大筋自体はシリアスなものだが、シニカルなユーモアやブラックジョーク、ダークで幻想的な世界観、異形への偏愛といったティム・バートンならではの要素も大いに込められた作りとなっている。


公開前、マイケル・キートンの容姿が原作のブルース・ウェイン(バットマン)と全くイメージが違うことや、ジョーカー役のジャック・ニコルソンが出演料として総制作費の半分に当たる額を要求したこと等から、前評判はあまり良好とは言えなかった(一応フォローすると当時のジャック・ニコルソン級の俳優ならば金額自体は妥当な範囲であった。本作の制作費が比較的低予算であったことから相対的に高く見えてしまったというのが実情である)。


しかし、公開されるや否や大ヒットを記録。特に「内なる狂気を抱えるバットマンと狂気を体現するジョーカーの対決」という作品テーマや、マイケル・キートンとジャック・ニコルソンの熱演、作品美術は評論家だけでなく多くの古参ファンからも高く評価され、本作は今なおティム・バートンの代表作の一つとして数えられている。

また、本作で登場したボディアーマー調のバットスーツのデザインやジョーカーの漂白された顔面の設定はコミックにも逆輸入され、最終的に本作の提示したバットマン像はクリストファー・ノーラン監督による『ダークナイト・トリロジー』の登場まで『バットマン』シリーズ全体の一般的なイメージを支配するにまで至った。ダニー・エルフマンの手による音楽も好評で、本作後アニメ版のタイトルでも本作で作られたバットマンのテーマが使われていた。

一方、ティム・バートンの作風上、本作のバットマンは殺人を犯すことも辞さないキャラクターとなっている点(本来、バットマンは殺人は避ける信条である)は物議を醸し、世界観と描写も暗くて暴力的過ぎるとの批判もあったが、原作最初期のバットマンは殺人を平然と実行できる人物であり、ある意味で原点回帰とも言える。

更に言うと世界観や描写に関しても当時の原作に追いついた、と言った方が正しいかもしれない(本作が公開されたのはあの『キリングジョーク』の翌年である)。


第62回アカデミー賞において美術賞を受賞。

1992年に監督ティム・バートンと主演マイケル・キートンを始めとして引き続き同じ主要スタッフによって製作された続編『バットマンリターンズ』が公開された。


あらすじ編集

ギャングマフィアが闊歩し、犯罪と暴力がはびこる犯罪都市ゴッサム・シティ。


この街に闇に紛れて犯罪者を次々と倒していく異形のボディスーツを纏った黒い怪人が現れた。

その名はバットマン。彼は制裁を加えた犯罪者たちに「仲間に自分のことを話せ」と言い残しては闇へと消えていった。

いつしか“蝙蝠男”と呼ばれ都市伝説として街で流布されるこの噂を、特ダネに目が無い新聞記者ノックスと聡明な女性カメラマン・ヴィッキーは周囲に冷やかされながらも追及を開始する。


一方、ゴッサムマフィアの一員ジャック・ネーピアは、仕えていた幹部グリソムの愛人に手を出したことで怒りを買い、罠にはめられ、警察に売り渡されてしまう。

街外れの化学工場で警官隊に追い詰められ窮地に立たされたジャックは突然乱入してきたバットマンとの格闘の末、顔面に傷を負って化学薬品の液槽に転落。

一命を取り留めたジャックだったが、化学薬品の作用で肌は真っ白に漂白され、傷により顔面の神経が麻痺したことから極端に引きつった笑い顔のまま表情が固定されてしまった。トランプのジョーカーの如き自分の姿に大きなショックを受けたジャックは、精神に異常をきたす。しかしその狂気は彼が持ち合わせていた明晰な頭脳と残虐性を更に研ぎ澄まし、グリソムを手始めとして次々と裏社会の大物たちを笑いながら殺害していき、ゴッサムの暗黒街を掌握する。


笑う殺人鬼・ジョーカーと化したジャックはゴッサムを支配するべく、恐るべき計画を実行に移す。一方、ジョーカーを止めるためにバットマンもまた、孤独な戦いへと乗り込んでいく。

だがゴッサムの二人の怪人、バットマンとジョーカーの間には重大な過去の因縁が存在していたのだった。


主な登場人物編集

演:マイケル・キートン(吹替:渡辺裕之

夜な夜なゴッサム・シティで犯罪者やマフィアに制裁を加える謎のクライムファイター。その正体はゴッサム随一の大富豪ブルース・ウェインその人。

強い正義感の持ち主だが、その内面には孤独と静かで歪んだ暴力性を秘めた人物でもある。


原作のブルースはバットマンとしての正体がバレないように軽薄なプレイボーイを装っているという設定だが、本作においては楽天家のフリをしつつも他人に上手く接することができない人物として描かれ、ティム・バートンの作風上、狂気を内包した破綻者としての一面が強調されている。

演じるマイケル・キートンが原作のブルースのイメージとは似ても似つかなかったことから、公開前はファンからの批判が絶えずリコール要求すらあったほどだった。

しかし、公開されると彼の鋭い視線やマスクから覗く口元、潜在的な狂気を感じさせる演技が高評価され、批判の声は消えていき、やがて「バットマン」の一般的なイメージへと昇華されていった。

その一方でバットマンとして破綻したバットマンでもあり、上述の通り殺人への躊躇も葛藤も無く、バットウイングの兵装とはいえ銃火器も平気で使うことからも、本作の彼もまた狂人であることが分かる。

こういった一面は未だにキャラクターとしての評価が分かれる要因となったが、同時に本作におけるバットマン独自の魅力なのも事実である。


演:ジャック・ニコルソン(吹替:デーモン小暮

ゴッサムの裏社会を牛耳るマフィアの幹部グリソムの右腕。有能なキレ者だったものの、グリソムの愛人を寝取ったことで警察に売られ、紆余曲折の末に化学工場の廃液タンクに落ちて顔が漂白された上に、表情の神経が破壊されたことで狂った笑顔が張り付き、精神が破綻してしまった。

しかし、元々持っていた残虐さと知性が、狂気に取り憑かれたことでむしろパワーアップ。マフィアの親玉達を血祭りに上げてゴッサムの暗黒街を掌握した上、文字通り「笑顔で逝ける」毒物・スマイレックスを混ぜた化粧品や理容品を街中にばら撒いての無差別殺人といった凶行を繰り返す。

殺す前の相手に「月夜に悪魔と踊ったことはあるか?」と訊く癖があるが…。


アルフレッドが調査した報告書によると、「15歳の時に凶器を用い暴行」「精神鑑定では頭脳明晰だが情緒不安定。科学や芸術に才能を示す。特に化学」。


上述の通り、演じるジャック・ニコルソンが出演料として総製作費の半分に当たる額を要求したことから、公開前こそファン達からは横暴として反感を抱かれていたが、それが妥当に思えてしまう程文句の付け所の無い圧倒的な熱演を披露。原作の古参ファン達をも『ちょっとふとましい点以外は完全にジョーカー』と言わしめ認めさせてしまった。

ジャック・ニコルソン自身もジョーカー役には相当な思い入れがあるらしく、後に『ダークナイト』にてジョーカー役に自分ではなくヒース・レジャーが起用されたことについて、「ジョーカーが出演する続編については、一切話はこなかったよ。私はジョーカーをどう演じたらいいのか知っている。一言で言えば、今は物凄く怒っている」とライバル心剥き出しのコメントを残している。

なお、出演料の件は『ダークナイト』の劇中にて盛大にパロられた。


バットマンとは「お互いを作ったヴィランとヒーロー」の関係に当たる。


映画劇中で語られなかったが、ノベライズでは自身を「プエルトリコ人」と語っている。


  • ヴィッキー・ベール

演:キム・ベイシンガー(吹替:宮崎ますみ)

ゴッサムタイムズの女性カメラマン。

美人だが気が強く、自ら最前線に赴き撮影をする等、肝が据わっている。

ゴッサムの謎の蝙蝠男をスクープするべくゴッサムにやって来た。

ブルースの謎めいた魅力に惹かれ、彼の過去を追うが…。

ブルースの方も彼女に惹かれており、よりにもよって自分がバットマンだとヴィッキーに暴露しかけたことも。

日本では殆ど知られていないが、実は彼女も原作コミック(それも割りと初期のエピソード)が出自である。


  • アレクサンダー・ノックス

演:ロバート・ウール(吹替:大塚芳忠

ゴッサムタイムズの記者。

三枚目調で、慇懃無礼な口を利く為に煙たがられているが、実際はなかなかに有能な人物。

ゴッサムの蝙蝠男を追っており、初めての同志であるヴィッキーに好意を寄せる。

バットマン=ブルースから見れば恋敵ポジションの1人と言えなくもないが、正義感と気骨もある良いヤツ。

執拗な取材ぶりから三流記者と邪険にされつつも警察・犯罪組織双方にある程度名を知られている。


演:マイケル・ガフ(吹替:松岡文雄

ウェイン家の執事。

上品かつ人当たりも良く、浮世離れした主のフォローを公私共に完璧にこなす執事として理想的な人物。

幼くして両親を失ったブルースを育て上げ、広大な屋敷の全てを把握する、ブルースとは別の意味でアルフレッドもまた超人である。


登場ガジェット編集

  • バットスーツ

バットマンが纏う特殊スーツ。

日本刀を腕で受け止める防刃性や、銃で撃たれて倒れてもすぐに起き上がって戦闘を再開できるほどの防弾性を持つ。胸の黄色い楕円にバットエンブレムをあしらったマークは70年代のリニューアル後のコミックに由来する。


シリーズ関連作品の中でも、それまでのようないわゆる全身タイツではなく、各部にプロテクターが付いたハイテクボディアーマー風のデザインを採用した最初のバットスーツである。

本作の成功後、原作コミックにもボディアーマー風のバットスーツが逆輸入されて登場するようになっていった。


ちなみに本作の撮影で使われたバットスーツはデザイン上、首周りが固定された構造になっていることから首を回すことが殆ど出来ないため、上下左右を向くには上体ごと傾けなければならなかった(『ダークナイト』ではこの件を意識してか、劇中にてブルースが「首を動かしたいから装甲を分割してくれ」とルシアスに頼む一幕がある)。そのため本シリーズにはバットマンが上下左右を確認するときに上半身ごと動かす印象的なアクションがある。


  • バットラング

バットエンブレムを象った手裏剣。シリーズお馴染みの武器。


  • スピアガン(グラップルガン)

高圧ガスでアンカー(鉤爪)が付いたワイヤーを射出する銃。


バットマンが駆るコウモリの意匠を取り入れた高性能車両。

スーパーカーのようなヘッドライトを持ち、未来的な洗練されたデザインながら、中央にピラーの入ったキャノピー、レトロカーのようなフロント中央部など、どこかクラシカルな雰囲気もあわせ持つ。その影響力は非常に強く、「バットモービル」と聞いたら恐らく最も多くの人が想像するのはこのデザインのものだと思われる。

防弾装甲と2門のマシンガンを搭載し、バットマンの音声を認識することで無人走行も可能。さらに車体全体を覆うシールドを展開し、強力な防御態勢を取ることができる。

また、見た目的に最も特筆すべき点として、TVシリーズ版でもお馴染みだった最後尾部の排炎スラスターの演出に説得力を持たせる為か、超大型ジェットエンジンが車体を前後に貫く様に搭載されている。よって、車体前部には大口径吸気口がキャノピーよりも目立ちかねない形で設置されており、威圧感をマシマシにしている


  • バットウィング

バットマンが駆る小型戦闘機。垂直離着陸が可能等、高い性能を誇る。

ミサイルや機銃の他、何故かハサミが付いており、これでジョーカーの毒ガス入り風船を運び去った。

バットエンブレムそのものの平面形をしており、本機が満月をバックに飛行するシーンは大変印象的だが、ジョーカーとの戦闘シーンは凄いマジメなのにとてもコミカルというティム・バートンらしい演出が光る。


  • スマイレックス

本作では化学分野に才能ありとされるジョーカーお手製の神経毒で、摂取した者はひとしきり大笑いした後でジョーカーのような引きつった笑顔のまま死んでしまう。

ジョーカーはこれを街中の化粧品や整髪剤といった理容製品の中にランダムに混ぜてばら撒いた。単品では作用しないが、複数種類の製品を特定の組み合わせで使用すると毒性が発揮される仕組みになっている。


ちなみに劇中ではジョーカーがスマイレックスをばら撒いたことを宣言するTV放送が流れた後、バットマンによってどの組み合わせで毒性が発揮されるかが解明・公表されるまで人々が警戒して化粧品を使わなくなったため、当初はちゃんとしていたニュースキャスター達がどすっぴん、ヒゲも剃れず、髪も乱れたひどい顔のままTVに出るというシャレの効いた演出が為されている。


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