概要
時代劇『水戸黄門』では水戸光圀は身分を隠して旅をしているため、自己紹介の際には「越後のちりめん問屋の隠居で、光右衛門(みつえもん)と申します」と名乗る。「ちりめん」とちりめんじゃこではなく布地の一種である「縮緬」である。現代風に言えば「新潟のアパレル企業の元社長」と言ったところか。
石坂浩二が光圀を演じたシーズンでは「江戸の太物問屋の隠居」と名乗るなど、時期によって揺れがある。
また、同じシーズン内でも、越後を舞台とする回では「水戸の~」など別の地名を名乗ったり、話の流れによっては全く違う稼業を名乗ることもある。例えば、盗賊のゲストキャラに手を貸すため盗賊を名乗るなど。
本シリーズにおけるエピソード
1973年に放映されたシリーズの中で、実際に「越後のちりめん問屋の隠居、光右衛門」が、初代黄門役の東野英治郎が二役を演じる形で登場している。
越後を旅している最中に出会ったこの商人が強欲かつ陰険と絵に描いたような悪徳商人であり、黄門様一行も彼に間違われて石を投げつけられるなど散々な目に遭うが、後に黄門様本人に説得され改心するという内容であった。
以前のシリーズまでは単に「ただの旅の隠居」と名乗るだけであったが、この回以降、「越後の-」と名乗るようになった。
尚、当の越後ではこの肩書を名乗ると、身バレしてしまう為、越後と同様に縮緬の産地として知られる「丹後の縮緬問屋」「京(または江戸)の和菓子屋」「江戸の戯作者」と称するなどしていた。
例外的に、石坂浩二が演じたシリーズでは「江戸の太物問屋の隠居、光右衛門」または「日新斎」(これは光圀の実際の号でもある)と名乗っていた。
なぜ「越後」なのか
「越後」が選ばれたのには、実際の光圀が越後の縮緬を愛用していたという理由もあるが、実は以下のような背景もあったとされる。
旧律令国における「越後国」とは現在の新潟県から佐渡島を除いた部分であるが、実は北前船に代表されるように、江戸時代には日本海側は一大商業地帯として栄えていた。
そこで「越後の縮緬問屋の隠居」と言えばほぼ間違いなく「大資本の元経営者で大金持ち」という肩書きになり、「現役から退いた変わり者の老人が潤沢な資金を背景にお供を連れて全国を旅している」という設定が出来上がるのである。
実際、この肩書を用いる事で、黄門様一行は旅先で出会った地元の人間から基本的に丁重に饗されている事が多い。
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越後屋 ライバル?