概要
真経津鏡(マフツノカガミ)という別名も持つ。
日本神話における『天の岩戸隠れ』伝承で、石凝姥命が天照大神を引きつけて岩戸から誘い出すために作りだした。
当初の目論見通り、外の騒ぎが気になった天照大神が岩戸を少し開けたところでこの御鏡を用い、自分の映った姿を見せてさらに興味を持たせ、最終的に天手力男命によって引き出され、この世に再び太陽が戻ったという。
のちの天孫降臨の際に、天照大神はニニギノミコトに餞別として、御剣と御玉とともにこの御鏡を渡している。
天照大神の詔(斎鏡の神勅)によれば、御鏡はご歴代の天皇が同殿同床をなさるという。
崇神天皇の時代、これでは神威を冒涜する恐れがあるというので、宮中に同殿同床であったのを別に社を建て、同殿同床ではないことになった。
宮中以外に奉斎することになり、最初は笠縫、それから伊勢にご鎮座になった。
これは大神の神霊が同殿同床と仰せられ、必ず宮中でなくともよろしい、むしろ宮中以外に鎮座をしたいとの思召があったものと思われる。
のちに八咫鏡は伊勢神宮に祀られた御神体と、皇居に安置される“賢所(かしこどころ)”の鏡の二つが存在する事となった。伊勢の神鏡は「八葉」と言う御名が奉られており、明治天皇による天覧があったのを除けば、常に内宮で奉祀されている。一方の賢所で祀られた鏡は火災(藤原道長公が改鋳を訴えたが却下)、戦災(壇ノ浦で一度は沈むが源氏軍が掬い上げる)など、幾度か災難に遭いつつも今なお皇居に鎮座ましましている。
創作での扱い
同じ三種の神器である天叢雲剣(草薙剣)に比れば、出自やインパクトに欠けるため、あまり陽の目を見ることがない…。
しかしながら『機動戦士ガンダムSEED』に登場したアカツキにビーム反射装甲として『ヤタノカガミ』が搭載されたことで、多少は注目されるようなった。
私達と八咫鏡
歴代の陛下でもその形を見たことは稀で、ましてや一般人など…と言うのが三種の神器への一般的な考え方だが、実は我々も意外な所で三種の神器、とくに八咫鏡に接している事が多い。
神社や寺院ないしは神棚に祀る神鏡は八咫鏡と同じく神霊を宿すモノとされ、元旦でお目にかかる鏡餅はこの聖なる鏡に見立てたと言う説も存在する。草薙剣と比較すれば知名度は低いが、逆に言えば馴染み深いために目立たないと言う解釈も可能な神器と言える。
その他の使用例
日本の裁判所のシンボルマークにも八咫鏡が使われており、裁判官や裁判所職員が身につけるバッジは八咫鏡に「裁」の文字をデザインしている。