概要
直翅目バッタ科に属する昆虫の総称。イナゴはイナゴ科に所属するため分類上は飛蝗には入らないぞな、もし。
またトノサマバッタ・サバクトビバッタなどの群生相は翅が発達し長距離を飛ぶことから、これらを孤独相と区別して特にこう表記する場合もある。この場合の読みは音読みで「ひこう」。俗にイナゴと呼ばれるが、飛蝗はあくまでもバッタのことであり、イナゴでは無い。
バッタの相変異
飛蝗による害は古くから知られて来た。大規模なものになると、文字通りぺんぺん草も残らないほど植物を食い尽くしてしまい、人が育てた作物にも大きな被害を与えてきた。
しかし、これらは、普段生息しているバッタとは別種と考えられてきた。
色が違い(平常時は緑、飛蝗は茶色や黒)、性格が違い(平常時はおとなしめだが、飛蝗は人間にも噛み付くなど好戦的)、体格が違い(平常時はジャンプするだけだが、飛蝗は文字通りかなりの距離を飛ぶことができる)、生活パターンが違う(平常時は一人暮らし、飛蝗は集団を好む)からである。
ボリス・ウヴァロフ(ロシア帝国出身でイギリスに帰化)は1921年、両者が同じ種類の変種という仮説を立て、南アフリカのヤコブス・フォールらがこれを実証した。
バッタの幼虫を集団で育てると、平常時と飛蝗の中間的な姿になり、さらに次の世代には完全な飛蝗になったのである。
そこで、平常時を「孤独相」、飛蝗を「群生相」(移動相)と区別するようになった。
相の切り替わりは現在でも研究途上だが、次のような条件があることがわかっている。バッタによって、一部の条件は当てはまらないものもある。
- 仲間の密度 仲間の多い環境だと群生相になる。単独でも、狭い場所に閉じ込めると群生相化する。このことから、刺激の多さが判定基準になると推測されている。
- 卵の大きさ 群生相は、卵の数が少なく、1つの卵が大きくなる。前野ウルド浩太郎によると、サバクトビバッタの卵黄の一部を摘出したところ、群生相の親から孤独相が生まれた。ただし、他のバッタではこの現象は再現できないという。
- ホルモン 相の切り替わりに働くホルモンがある。セロトニンは群生相化を促すという。
バッタが相を切り替えるのは、生き残るためである。
餌が多く、仲間の少ない環境では、長距離を移動する必要が無いので孤独相になる。
しかし仲間が多い環境では、餌不足になるので長距離移動に適した姿になり、群生相になる。
そして新天地に移住して仲間の密度が減ると、徐々に孤独相に戻って行くのである。
関連項目
ななか一派 - 『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』で、自分たちの仇を「飛蝗」と呼んでいる