小説や映画、演劇、RPGなどのゲームなどで見受けられるストーリーの作劇手法の一つである。
概要
なんらかの事実が明らかになった、もしくは何かしらの出来事が発生した時など、ストーリー上に何かしらの大きな動きを作った際に、それらを都合よく持ち出してきたと思わせないように、前の段階で展開の発生を予め仄めかしておくこと。またはその仄めかされた要素のこと。
この言葉は「敷く」または「張る」という表現をされ、内容が明らかになった場合には「回収する」という言い方をすることが多い。
フラグとの相違
フラグとほぼ意味合いは同じであるが、フラグというのはある意味定型化しており、割と早い時期に回収されるものを指すことが多いのに対し、伏線というのは定型化しておらず、基本的に暗に仄めかされるに留まり、わかりやすい形で明確に掲示されない。
伏線の例
例えば幼馴染みの主人公とヒロインがいたとして、主人公とヒロインは友達以上恋人未満といった間柄であるとする。
ある日突然ヒロインから電話が掛かってきて「今日遊びに行かない?」と言われたとする。
普段自分から誘ってくることなど無いヒロインの言葉に戸惑う主人公だったが主人公はその日新作ゲームの発売日でありどうしてもそれを買いに行きたかったのでその誘いを断ってしまう。
そして数日後、主人公は親からヒロインが引っ越ししてしまったことを聞いたとする。
ベタベタかつ上手い例ではないのだが、この場合ヒロインの「今日遊びに行かない?」というセリフは「引っ越す」ということの伏線であると言える。
この時は何気ない日常会話として流すことが出来るのだが普段誘ってくることはない、としてあることで、このセリフは読者にとっても何かしらの意味があることはすぐに分かるだろう。
伏線のタイプ
主な伏線のタイプは以下の通りである。なお、ここに上げた分類名は便宜的なものである。
明示型
上述の例のように読者に伏線を敷いたことを知らせるタイプである。
思わせぶりなセリフであり読者にとってはこれは伏線だろう、というのが分かるものであるため伏線を回収した際に「あれが伏線だったんだな」とすぐに分かることが多い。使いやすい伏線ではあるがあまり伏線としての効果は大きくないのが特徴。
暗示型
伏線を敷いたことは分かっても弱い伏線と見せかけるタイプである。
例えば先ほどの例を少しだけ変えてみる。
誘ってきたヒロインに対して「悪い、今日は無理なんだ。また今度にしないか?」と主人公が言ったとする。
「……そっか、残念……。最近ずっと勉強に追われて疲れてるから遊びに行きたかったんだけどな」とヒロインは返したとする。
この場合伏線としての読者の印象は先ほどよりは弱くなるが、「何かありそうだ」とは思える為伏線であることを意識はするのは間違い無い。
例の場合、直後に真相が判明しているが
真相判明までに時間が掛かると「やっぱりあのセリフは意味無かったのか」と伏線そのものを忘れられるケースもあり得る。
二重型
伏線を回収した、と見せかけて実は回収していない、という高度なテクニックである。
例の部分の断ってしまった。の後に以下の状況が入ったとする。
次の日、主人公は学校で友人と昼ご飯を食べていた。
「そういえばあの子( ヒロイン )ってお前のこと好きみたいだぜ」とその友達が主人公に言ったとする。
この時、主人公にとっては前日のヒロインのセリフは「自分のことを実は好いていた」ということだったと理解する。
これにより読者もあのセリフの意味はここにあったと理解することになる。
しかしながら実際の伏線の回収は「ヒロインが引っ越す」という状況でありこの時点では伏線を回収したように見せかけているだけである。
このように一見伏線を一旦回収したように見せかけるというテクニックは高等ではあるが効果は大きく、2回目に読んだ時にこれが伏線だったのか、と気付くケースも多い。
誤解型
いわゆるミスリードと呼ばれ、これはミステリー小説やコメディなどで用いられるテクニックであり、伏線を回収した、と見せかける部分は一緒であるがこちらは読者に誤解を与えるような伏線の回収をさせる点で異なる。
例えば犯人がAであるミステリー小説があったとする。
事件前突然ガサッ、という物音が聞こえた、という描写がある時にBだけがその場にいなかった。という書き方をしたとしよう。
この時このガサッという音は犯行に関わる音である、と多くの読者は考える。そしていなかったのはBである、ということはBが何らかの行動をとったではないか、というわけである。
勿論このような例はミステリー小説では逆に怪しくないケースが多いかも知れないがミスリードを招く伏線の敷き方であると言える。
また、ミスリードはオチを際立たせる手法の一つにもなるため、コメディ作品に用いられることも多い。
前出の例を引用すれば、Bはそのときたまたま激しい下痢に襲われて外で用を足してしまい、雑草を使って拭こうとしたときにした音がそれであった、など。
また、伏線に見せかけた何でもない行為、という例も存在する。これは他の伏線をカモフラージュする、あるいは伏線を張っていたもののストーリーの変更等により回収しなかった場合もある。
先の例だと「音は偶然の産物であり全く無関係」ということにするという手段がある。
その他
通常の伏線とは事情が少し異なるが、「後付け設定を伏線にする」「以前あった何ともない描写を伏線にする」なども存在する。後者は本編で行った場合は作者が明言しない限り通常の伏線との区別が困難であるため、スピンオフや外伝、前日譚で行うとシリーズファンに対してより高いカタルシスを与える。
伏線とフラグ
上述のように伏線とフラグは似たようなものである。
代表的なフラグとして死亡フラグがあるが、これはもうお約束と言ってもいいようなものであるが、死亡フラグを伏線と考えるとする。
例えば友人が「俺、試験に受かったら彼女に告白するんだ」と言ったとする。
勿論何気ない会話の中でこの表現を含めた( 典型的な死亡フラグである )とすれば、これが伏線とは気付かないかも知れない。
しかし案の定友人は試験に落ち彼女に振られてしまった。という展開になったとすると
このセリフは、後に彼が試験で落ちることを臭わせていた伏線である、といえる。
勿論今となってはこのセリフそのものが死亡フラグの代表例であるため、このセリフが出た瞬間「あ、こいつ落ちるな」と多くの人が気付くであろう。
その為フラグは分かりやすいというか分かるためにある伏線という表現も出来る。
ピクシブにおける伏線
pixivはイラスト中心のサイトであり、一枚のイラスト作品において回収に時間がかかる伏線というのは難しい為、イラストではあまりタグとして用いられることは無いであろう。
逆に漫画や、小説においては技術的に利用されるため、こちらで使用されるものと思われる。