「この子、うちで飼っていい?」
「寂しくなったら会いにおいで」
「うちの弟は真面目なのでからかわないでください」
人物像
デフォルト名が同じであるあんさんぶるスターズ!の主人公については転校生ちゃんを参照の事。
主人公である転校生の義理の姉。
かつて君咲学院に在学しており、茶道部の部長を務めていたが、湖南やこや黒森すずら「問題児」と呼ばれるグループの一員となった。交換留学のような形で転校生の通っていた男子校に転校し、遅くとも三年三学期開始までに学校を辞めて就職している。
他のヒロインがHappy Elements 株式会社の基本設定を元にシナリオ上で動いているのに対し、彼女は純粋にシナリオの都合上発生した人物であるためビジュアルが存在しない。ただし、あんずに変装した義弟が写ったカードが1枚存在している。なお、名前があんずなのは作品名『あん』さんぶるガール『ズ』!が由来という説があるが真偽は不明。
メインストーリー時点で高校3年生で誕生日は公表されていないが、12月の時点で既に自動車運転免許を取得しているため1月以降ではないようである。
円城寺れいかから「勇敢で前向きな物語の主人公みたいな少女」と評される一方、幼馴染みである三波なつみからは「意外に抜けているところがある」、中学からの同級生伊藤さくらからは「いつもボケ~っとして」おり「てきとう」、君咲学院で仲が良かった黒森すずに至っては「たぶん馬鹿な人」と評している。(しかし、この「馬鹿な人」というのは、自分が罵声をたくさんあびせたのに毎日話しかけてくれた、という思い出のエピソードのことを言っているのであり、ただの「馬鹿」とは種類が違う)伊藤と黒森が言い争う中、黙々と集中して空の絵を描くなどかなりマイペースな人物とも言える。
なお、多いやりがある、自己犠牲的という評価もあるが、それはあくまで在学中の評価であり、後述する通り転校への意思決定から転校後までの行動には自己中心的かつ利己的としか言いようがない描写が多々ある。
マイペースな一面は転校生にも共通する特徴であり、長町やえが家出してくるエピソードを見る限り二人の感性はかなり似ている様子。
幼少期に自分と1歳差しかないなつみと義弟を抱っこと肩車で同時に運んで見せたり(しかし、現在はさすがには運ぶことは出来ず、寝ている転校生をそのまま寝かせて毛布を掛け、なつみのみ転校生の部屋に運んで寝かせるなどしている)、あんガル名物の桁数のおかしいミッションを義弟と同じようにこなしてみせるなど身体能力はかなり高い。また、幼い頃の寝起きの悪い転校生を「抱っこ」して遊園地のアトラクションのように回転させて起こしていたらしく、根本的にラフな性格であるらしい。
特技は絵画と裁縫で問題児たちのために衣装を作ったり、文化祭の出し物でファッションショーを主催するなどデザインから製造までかなりレベルが高いようである。
転校への背景(ネタバレ注意)
経緯
1年生の頃、あんずは黒森すずとともに屋上で過ごしていたところ湖南やこ、並びに八雲ちづると遭遇する。そして屋上を自分の活動の拠点にしようとした湖南が「番長」山條ぎんに返り討ちにされた後、傷の治療を保健室に拒否されたのを目撃。湖南の手当を自身が所属する茶道部部室で行ったのが、後に問題児と呼ばれるグループに属することになるきっかけとなった。
その後は湖南が新入生を自分の手駒にすべく洗脳することを目的として計画した「学校説明会」のジャックを皮切りとして様々な悪戯や悪ふざけに関わっていくこととなる。
他にゲーム内で語られただけでも秘密基地の建造や移動用の人間大砲の設置、隠し通路の設置、茶道部部室の占拠などがあげられるが、イベント『風雲児来たる!君咲く楽園の扉』で描かれた「学校説明会」のジャック以外、どのような経緯でそれが成されたかは詳しくわかっていない。
この内、茶道部部室の鍵の付け替えによりあんずと中学校からの親友であり、正規の茶道部員である伊藤さくらが部室に入れなくなり部活動ができなくなったことを、当時生徒会役員かつ同じ茶道部部員であった「姫殿下」円城寺れいかに零したことが彼女の転校へと繋がっていく。
当時、生家が学院の出資者である自分の影響力に自覚のなかった円城寺が世間話として教師陣に茶道部のことを話したところ、教師陣やそれを伝え聞いた多数の生徒達が円城寺への点数稼ぎも合わさって過剰に反応し、あんずを始めとする茶道部の関係者は陰湿ないじめの標的となった。これを受け、ゆるく活動していた茶道部や問題児グループは完全に崩壊し、あんずは転校することとなった。
屋上は封鎖され、問題児を支援していた学院に居場所がない者たちはそこから追い出されることになった。あんずらの学院の自由化のための活動は彼女らにとって完全に逆効果であり、それどころか結果的には自分たちの自分勝手な行動を正当化するためのダシに使っていた形になる。このことは問題児グループだけでなく、いじめの原因を結果的に作ってしまった円城寺や伊藤にも暗い影を落とし、後々の彼女たちの方針に影響を与えている。
なお、伊藤にせよ円城寺にせよ「委員長」や「生徒会」という秩序を重んじるそれぞれの立場から正しいと思ったこと、やるべき事をやっただけであり、いじめに追い込む害意があったわけではない。伊藤は一連の事態に円城寺が介入する事の危険性を早い段階で憂慮しており、問題児グループの発足から事件発生までは自力による解決を図っていた。再三再四の警告・制止を無視して破滅の道を突き進んだのは問題児グループであり、同情の余地は少ない。また、最終的に自分たちの非を認め、贖罪のために動いたのは彼女たちであるが、問題児の壊滅は、問題児側の行動がそもそもの原因なのであり、根本的には自業自得に過ぎないことに注意。
他方、問題児グループの活動にしても熾烈な学力競争の影響で笑顔が見られない学院をもっと自由な青春を満喫できる環境にすることを目的としたものであり、少なくとも彼女らにとっては筋が通ったものであった。ただし、彼女らにとって「学院の自由化」や「屋上にしか居場所がない者たちの救済」は自分たちの活動を正当化するための大義名分に過ぎず、その証拠に後にその大義名分が失われた後も以前と同様の騒動を引き起こしている。これは彼女らの活動が首魁である湖南やこの「他人の注目を集めたい」、「騒動を起こして人が慌てふためかせたい」という歪んだ承認欲求の充足が根本的な動機であるためである。
転校の真相
いじめと前後して共学化する計画を立てていた君咲学院の首脳陣は近所にある男子校と交流を持つために実験的にお互いに在学生を交換する計画を立案。渦中にいたあんずに話を持ち掛けた。
いじめに遭いながらも挫けることなく(なお、繰り返しになるがこのいじめ自体の根本原因は自分自身の問題行動)新天地と自由を求めていたあんずはこの計画に協力した。そして偶然その男子校に通っていた義弟と交換する形で学院を去る事となった。
だがこの事は職員の間でのみ共有されており、生徒にはほとんど伝えられていなかったため「暗黒文化祭騒動」へと繋がっていくこととなる。こうしてあんずは周囲に謝罪や反省の意志を示すこともないまま、仲間たちや自分を守り自分が守ってきた者たちを見捨てて、自分を苦しめた人間たちの手が及ばない自分にとって都合の良い世界に逃げ出すことになった。あんずは程なくして転校先の学院にうまく溶け込み、楽しい学院生活を謳歌することに成功している。なお、転校先で自分が犯した悪行について公表していたかどうかは不明である。
なお、この転校があんずおよび問題児が引き起こした損害に対する『贖罪』であるという解釈がある。しかし仮にそうだとしても後述の通りこの転校自体が周囲に多くの被害を引き起こす性質のものであり、転校後に発生した損害を相殺する性質のものではない。また、君咲学院は後に円城寺れいかの暗躍によって自由化が実現されているが、あんずらの活動自体は失敗に終わっている事に注意。
この時期に君咲学院は荒れていく学院から去る生徒が多発する苦難の時代に突入する。これを後に湖南は『地獄の季節』と称した。繰り返しになるが、この間あんずは転校先の学院にうまく溶け込み、楽しい学院生活を謳歌していたのである。
ちなみに「生徒会長再任選挙」後、学院の首脳陣は「共学化の実験がうまくいった」ことを理由に転校生くんとあんずをそれぞれ元の学校に戻すことを計画する。ただその裏には首脳陣の円城寺への機嫌取りとしてあんずを学院に戻すという意図が含まれていた。(ストーリー:第3回君咲学院選抜総選挙「大歓迎会」に該当)
※この計画は円城寺が望んだわけではなく、見当違いの忖度の類であることに注意
なお、アプリのシステム上あんずのセリフ等の意思表明はすべて代弁方式を取っているため、それぞれの出来事・人物への実際の心境や彼女自身の見解が本人から語られることはない。
ただし、あんずは謝罪に訪れた円城寺を数日に渡って自分の用事を優先して放置しており、円城寺らに対して謝罪する意志を持っていないことは明白である。あんずは転校後も八雲ちづると連絡を取り合っており、自分の無事さえ知らせれば暗黒文化祭に至る一連の事態の進行を何時でも食い止めることが出来る立場にいたが、何もしなかった。まるで円城寺が自主的に退学して学院を去るのを待っていたかのようである。なお、円城寺はあんずの転校が敵味方無差別に傷つけるためのある種の自爆テロである可能性に言及している。
転校の影響を受けた人物
※順不同
- 転校生くん…上記の事情のもと女子校である君咲学院にただ一人の男子生徒として転校してきた。なお、あんずが転校した時点では君咲学院は問題児の革命が頓挫し、どう転ぶかわからない状況にあった。あんずは義弟である彼が自分と同等かそれ以上のいじめにの対象になる可能性を知った上で君咲学院に送り出したことになる。
- 三波なつみ…隣家に住む幼馴染み。裁縫において師弟関係にあり、美術部員でありながら服飾関係の仕事を引き受けている。
- 黒森すず…元々は引っ込み思案だったがあんずと出会い少し明るくなった。しかし彼女との別れを最後まで受け入れられず喧嘩別れしてしまい、その反動か中二病を拗らせ自らを堕天使と自称するに至る。暗黒文化祭後は転校生の看病を任されるなど便利に使われている。
- 伊藤さくら…中学生時代からの茶道部仲間。問題児らに事実上のいじめのような仕打ちを受けていたが、問題児グループ壊滅後、自主的な校内清掃を自らへの罰として課し、かつての自身の潔癖さがもたらした結果を悔い(※繰り返しになるが彼女の立場として当然のことをしたまでであり、結果は問題児らの自業自得によるもの)、綺麗にしていいものと悪いものを注意深く見極めながら卒業までを過ごした。
- 円城寺れいか…自身がもたらす影響を自覚し、贖罪として転校生であり問題児たちの活動を知らない鶴海ひまりを後継者として育て、後に生徒会長の地位を譲った。その後、陰ながら問題児たちの目指した学院の自由化に取り組んでいく。これが「あんさんぶるガールズ!」最初のストーリー、「生徒会長再任選挙」に繋がっていくこととなった。このストーリー内で円城寺自身も一度は自主的な退学という決断を下している。これはあんずが自身の無事を知らせていさえすれば回避できた事態である。なお、円城寺は問題児らのような集団が現れぬように率先して憎まれ役を引き受けて再発を防いでいる。要するにきちんと己の失敗を反省し再発の防止に努めた人間が悪役を引き受けた上にモノ笑いの種にされ、無責任に逃げ出した人間が英雄として祭り上げられている構図である。ちなみに、円城寺は責任を負う自身の立場も相まって、問題児グループの自由な活動への羨望を持っていたと後に語っていたりもする。
- 小鳩あずさ…あんずの転校を知らないまま問題児組にあこがれて入学。学校説明会で断片的に問題児組に起こったことを知り、ちづるの願いもあって問題児たちとの関係性は周囲に伏せ、かつて憧れた「キラキラ笑顔」で学校生活を楽しむことを決める。
- 鶴海ひまり…れいかから生徒会を引き継ぐことになった新たな生徒会会長。あんずとの面識はないが、鶴海が目指す学院の姿は「問題児」たちが目指したものと方針が近く、それがかつての「生徒会」支持者からも「問題児」支持者からも協力が得にくくなる原因となる。
- 榊むつみ…憧れの先輩に追いつくべく真面目に勉学や部活に打ち込む陸上部員。問題児の『革命』の影響により学院が緩くなった結果、不真面目な部員たちにより準備や後片付けを押し付けられる実質的なイジメを受けるようになる。問題児たちによる間接的な犠牲者。なお、三年生になって部長に就任した後、陸上にやる気のない部員たちを追い出している。
- 屋上組…過当な競争社会だった君咲学院の授業についていけず、『番長』が守る屋上にしか居場所を持たない者たち。山條ぎん曰く「家にも学校にも味方がいなくて、ひとりで泣くしかないような子」、「どこにも行き場がない、帰れる場所もない、そんな子たち」、「息苦しいこの学院で、それでも必死に喘ぎながらがんばってる子たち」。作中で名前は与えられていない。問題児たちの活動を支援していたが問題児の壊滅にともない屋上が封鎖されてしまう。その後、学院に留まったのか転校してしまったのか言及はない。問題児たちは立場の弱い彼女らを盾に自身の活動を正当化し、挙句の果てに彼女たちから最後の居場所を奪ったことになる。また、あんずは自分に与えられた交換留学の枠を譲渡すれば彼女らのうち一人は救えたはずだがそうしなかった。これはあんずが自己犠牲的な人間ではなく利己的な人間である証左である。
- 合唱部部長…問題児の台頭から崩壊によって治安が悪化した影響で潔癖な部員たちが次々に部を辞めてしまい、廃部寸前に追い込まれた。あんずらの活動が間接的に悪影響を及ぼした人物の一人。
- 曽根セイラ…あんずの転校後、持病が悪化し本格的な闘病生活を始める。あんずは八雲ちづるを通じて彼女の病状も知ることができる立場にいたはずだが、一度として見舞いに訪れることはなかった。
その後
「生徒会長再任選挙」後、どのようにして再会したかは定かではないが黒森や円城寺、天宮るりなどかつての関係者が自宅に訪ねてくるようになり、義弟の応援のため運動会などの学校行事に顔を出すようになった。
また、転校生くんとあんずを元の学校に戻そうとする学院側の動きに抵抗した生徒たちの開催した「大歓迎会」においては、黒森が自分を戻すために「大歓迎会」を妨害しようとしていることを曽根や山條から伝えられ、黒森をなだめる手紙とステージ用のアイドル衣装を託した。
他には、体育祭のお昼休みでは義弟は勿論のことかつての問題児たちや伊藤・円城寺と一緒にお弁当をつついたり、新生徒会就任式で円城寺の企てに乗って大人しく弟の扮装をして縛られたり、同窓会で伊藤と共に軽音部の演奏を応援していたりする姿が確認されている。
義弟との関係
前述の通り、転校生とは血が繋がっていない姉弟である。
それにも関わらず容姿や性格は何故か似ているという描写がいくつか存在する。
具体的にどのような関係なのかについて作中で言及されていないが、メインライターの日日日がTwitterで語った所によると転校生があんずの家に居候している形を想定しているらしい。
なお転校生は転校直前まであんずの家以外の場所から通っており、同じ通学可能圏内であるにも関わらず何故別れて暮らしていたのかについては特に言及がない。なお、『風雲児』イベントで中学生時代の三波なつみのセリフからあんず自身も現在の家から離れた場所で暮らしていた時期が存在するようだが、具体的な時期は不明である。
作中では黒森との関係を誤解した三波なつみの誤解を解くために問合せに応じたり、義弟を籠絡出来るデートプランを知りたい八雲ちづるの問合せに応じたりしている。
ただし、北川ゆきの告白に対する返答をずるずると先延ばしにする義弟に対しあんガル最強存在の一角を差し向ける一幕も存在する。
二次創作上の取り扱い注意
転校生ちゃんで詳述している「あんガルあんず-あんスタ転校生ちゃん同一人物説」は全面的に支持されているわけではなく、パラレルワールドとして肯定する人もいれば、同一人物と見なすには矛盾点も多々あることから完全な別人として否定する人もいるデリケートな側面を持つことに注意すること。
なお、同一人物であるとすれば、かつての仲間たちが苦しんでいる中、誰も自分を責める人間がいない環境でどれほど学院生活を楽しんでいたかを描いていることになる。なお、転校生ちゃんは作中で転校前の学校から昔の友人を呼んで自分が担当するアイドルの勝利に貢献させており、自分が他人を利用して横暴を繰り返していたことについて全く反省をしている様子は伺えない。
関連タグ
- 転校生ちゃん…別作品の登場人物。デフォルト名「あんず」。あんずと同じく(ただしこちらは学校内ではなく学科内で)唯一の女子生徒として転校してきた。漫画・舞台では存在をオミットされている。小説版においては語り部として登場し、その転校の理由が「どうでも良くなった」からである事が明言されている。2019年放送のアニメ版にも出演。美術関連は得意分野であり、転校前には文化祭の劇などの衣装などを作ったことがある。ただし本格的なアイドル衣装を作るのは初めての為、縫製技術を基礎から学び直すこととなった。
- 狂乱家族日記…日日日によるライトノベル。番外そのはちに収録されている「暗黒少女領域」にあんずの原型らしきキャラクターが登場する。