概要
歌う骨とは、グリム童話に収録されている童話の1つである。日本でも各地によく似た民話が存在し、地域によって細かい差異はあるが「唄い骸骨」等の題名で呼ばれ、まんが日本昔ばなしでも「しゃれこうべの歌」という題で放送されている。
また、これによく似た民話はアフリカ等にも存在するという。
本稿ではグリム童話と日本の民話について解説する。
グリム童話版あらすじ
昔、ある国で大きなイノシシが暴れ、人々を困らせていた。
そこでこの国の王様は「イノシシを殺した者を私の娘である姫と結婚させる」とお触れを出した。
すると、2人の兄弟がこれに名乗り出た。弟は心優しい性格で純粋にイノシシに困っている人々を助けたいと考え、兄は欲の深い野心家で姫と結婚する事を狙って名乗り出たのだった。
兄弟はイノシシが棲むという森へ、兄は西から、弟は東から入っていく。
すると、弟の前に小人が現れ、イノシシを倒せる特別な槍を授ける。イノシシを前にした弟がこの槍を構えると、イノシシはまっすぐに突き進んでそのまま心臓を貫かれ死んだ。
同じ頃、西の方から森へ入っていった兄は、そこで酒盛りが行われている所に出くわし、参加していた。弟が1人でイノシシを倒せるはずが無いと油断していたのである。ところがそこにイノシシが刺さった槍を担いだ弟が現れる。手柄を弟の物にされる事に焦った兄は弟を殺して橋のたもとに埋め、自分がイノシシを殺したと偽って姫と結婚した。
数年後、羊飼いが橋のたもとで骨を拾い、それで笛を作った。そしてその笛を吹こうとすると、笛はひとりでに歌い出し、兄の悪行を全て語りだした。
羊飼いはすぐさま王様の所へ行って骨の笛が歌う歌を聞かせる。これを聞いた王様は娘婿となっていた兄を水に沈め、弟の骨を掘り出して立派な墓を立て手厚く葬った。
…このように最後は勧善懲悪となってはいるが、素直にめでたしめでたしとは言い難い結末となっている。
日本版あらすじ
地域によって細部が異なる話が多く存在するが、おおよその共通点をまとめると以下のようになる。
昔、ある村に働き者と怠け者の2人の若者がいて、都へ出稼ぎに出る事になった。数年経ち、故郷の村へ帰る事になるが、働き者が真面目に金を稼ぎ貯めていた間、怠け者は遊んでばかりいたので殆ど稼いでいなかった。
そして帰り道の途中、怠け者の若者は働き者を殺して首を刎ね、働き者が稼いだ金を奪って持ち帰った。
怠け者は故郷でも奪った金で遊んで暮らし、結局すぐに使い果たして再び出稼ぎに出る事になった。すると、道の途中で草葉の陰から楽しそうな歌声がする。何かと思い見てみればなんと髑髏が歌っていた。
これは楽して金を稼げると思った怠け者は髑髏を都に持って行き、歌わせて見世物にする。歌を歌う不思議な髑髏の見世物はたちまち評判となり、終いには噂を聞きつけた殿様が怠け者を呼び出して「髑髏が歌うという噂が本当なら大金をやるが、嘘だったら首を刎ねる」と言いつけた。
さっそく怠け者は髑髏を歌わせようとするが、どういうわけか髑髏は急に黙り込んでうんともすんとも言わなくなってしまう。怠け者は嘘つきだったことになり打ち首にされてしまった。
こうして怠け者の首が落ちると、髑髏は再び口を開き、「これでやっと願いが叶う」と楽しそうに歌い出した。この髑髏は殺された働き者の骨だったのである。
バリエーション
上述した通り地域によって細部が異なり、
- 2人の若者に具体的な名前が設定されているパターン
- グリム童話版と同様に髑髏が自分の受けた仕打ちを暴露するパターン
- 頭蓋骨だけでなく全身の骨が出てきて踊る「踊り骸骨」というパターン
- 殺人のくだりは全く存在せず、野ざらしにされていた骨を手厚く葬る事で恩返しを受けるという正反対のパターン
などがある。
関連項目
真・女神転生シリーズ:従来作品では『ラフィン・スカル(笑い骸骨)』名義で、葛葉ライドウシリーズでは『ウタイガイコツ』名義で登場している。