｢そんなモン貰たら、立小便出来へん。｣
国民栄誉賞を固辞して 福本豊
概要
元阪急ブレーブス外野手。元世界の盗塁王。1970～1982年には、13年連続で盗塁王を獲得。通算記録（1067盗塁）もシーズン記録（1972年に106盗塁をマーク）も日本では未だに破られていない、というか破りようがない（なおメジャーリ－グではリッキー・ヘンダーソンが両方の記録を上回る盗塁数をあげている）。現役時代、自分の足に1億円の保険金を懸け、話題をさらった。
王貞治の本塁打記録、福本の盗塁記録はメジャーにも記録されているが、王が持つ記録はあくまで参考とされたのに対して、福本の盗塁記録は正式記録として採用されていたりする。「球場の大きさなどに左右されるホームランと違って（※メジャーの方が外野が広い事が多いらしい）、塁と塁の距離や、マウンドやキャッチャーから塁までの距離はどこの球場でも変わらないから」だとか。
高校卒業後、プロにはならず松下電器の野球部で活動していたが、1968年、阪急がドラフト7位に福本を指名し、プロ入り。
なお、本人はドラフトで指名されたことを全く知らず、翌朝会社の先輩がスポーツ新聞を読んでいるのを見て「なんかおもろいこと載ってまっか?」と尋ねたところ、「おもろいことってお前、指名されとるがな」と返され、初めて知ったという。
また、プロ入りの際、婦人に「松下から阪急に転職した」としか言わなかったため、婦人は夫が阪急電鉄の駅員になったと思い込んでいた。どの駅を見ても福本がいなかったため、駅員に尋ねたところ「もしかして阪急ブレーブスの福本選手のことでは」と言われて、初めて夫がプロになったことを知った。
その偉大な功績を称えようとして、国民栄誉賞を国が授与しようとしたら「そんなモンもろうたら、居酒屋にも気安く行けへんし、立ちションも気安くできへんから、（もらうのを）やめておくわ！」という理由で（ホンマに）断ったすごい漢だ。
ちなみに国民栄誉賞を断った事が判っている人物は2015年6月現在で3人いるが（残り二人は古関裕而とイチロー）初めて断ったのが福本氏である。
盗塁ばかりが注目されているが、通算2543安打（NPB通算6位、ただしNPBとMLBにまたがって記録を持つイチローを除く）、通算208本塁打（初回先頭打者本塁打43本は日本プロ野球記録）、通算115三塁打（歴代一位）、通算打率.291を記録するなど確実性とパンチ力のある打撃、中堅手としても広い守備範囲を誇る外野守備で、山田久志、加藤秀司らとともに阪急黄金時代の主力として活躍した。
その他珍言集
- スコアボードに0点が並んでいる状態を見て｢たこやきみたいやね｣。
- その後一点が入り「たこやきに爪楊枝が付いたな」。
- 広島東洋カープの東出輝裕がボールがキャッチャーミットに届いてから空振りし「着払いやね」。
- ナゴヤドームで勝つことができない阪神について｢どうしてですかね？｣と訊かれ｢屋根があるからちゃう？｣。
- ｢今のプレーはどうですか？｣とアナウンサーに訊かれ｢ごめん見てへんかった｣。
- 甲子園での試合が終電間際の時間まで長引いた際、「加古川より向こうの人帰られへんね」。（なおこの発言のしばらく後に終電の時間が伸びたんだそうな…）
- 阪神が4点差付けられた状態で阪神が攻撃を迎えた際に、実況に｢阪神はどう攻めるべきでしょうか？｣と訊ねられ、｢まず4点取らなあかん。｣
- 話題が福本自身の記録になり、実況が｢福本さんみたいに盗塁するためにはどうすれば良いでしょうか？｣と訊ねられ、｢まず塁に出なアカン。｣(盗塁数ばかり注目されるがヒットの数もハンパじゃない上、コーチ時代の指導も盗塁術よりも打撃術に重きを置いていた)
- テレビの企画で競走馬と競い、そのシーズンのある試合で実況に｢競走馬と勝負されたそうですが？｣と訊ねられ、｢勝ったがな｣。(マジで勝ちました)
- 非常に調子の良い投手の攻略法を訊ねられ、｢勝負したこと無いからわからん｣。
- アナウンサーの「福本さん、今のプレーまずいですね」に対して「まずいねぇ。うどんの方がよっぽどうまい」。
･･･などなど。興味の沸いた方は、｢福本豊 迷言｣で検索を。
珍言を言われる方でも秀逸で後述の引退となった上田監督のスピーチも有名だが、ある時など、先頭打者で本塁打打ったら「何打ってるねん、塁出て走らんかい」と盗塁を楽しみに見に来た観客にヤジられた。ちなみにこの試合ではその後の打席で自身初（かつ唯一）のホームスチールを成功させ、福本の面目躍如となった。
しかしながら…
解説者としての珍言・迷言ばかり目立つが最初にある通り、福本豊自身は野球選手として偉大すぎる記録を残している。
また、福本豊の存在が野球と言う競技を発展させたと言う声も少なくない。
詳細は割愛させていただくが野村克也氏は福本豊攻略法として、ピッチャーの投球モーションを大幅に早くさせた｢クイックモーション｣を開発。
後に福本豊が、そのモーションすら見抜いてしまった為に完全な攻略法にはならなかったが、福本豊自身が｢今の投手はノムさん(野村克也氏の事)に、特許料を払わなアカン。｣と語っている。
また、福本自身「盗塁をするには、まず確実に出塁するべき」「どんな投手にもこっちが盗塁しやすいかそうでないかで癖がある、投手の癖を見破れ」「（塁からの）スタート・（走る）スピード・（塁への）スライディング、この3Sが盗塁には重要」など、1番バッターや盗塁王としての心構えについて多くの金言を残している（もちろん、実際にはいつも通り関西弁でもっとフランクな口調だったが）。野球部とかで1番バッターをやったことがあるなら一度は教わったことがあるのではないだろうか。
この他にもその俊足を生かした戦術は、当時のブレーブスの黄金パターンとしても猛威を振るった。
福本が単打どまりだったとしても…
1.お得意の盗塁で二塁に進む
2.2番バッターが進塁打・送りバントなどで、福本を三塁まで進める
3.3番バッターが犠牲フライを放ち、その俊足を持って一点を捥ぎ取る
…とワンヒット、あるいはノーヒットで点数を取りにいくスタイルでブレーブスの黄金期を支えた。
韋駄天、その意外すぎる結末
これも詳細を割愛されているが、福本豊が引退した原因と言うのが監督がインタビューで言い間違えた為だったりする。
当初は｢去る山田、残る福本｣と言うはずが、｢去る山田、そして福本｣(実際には違うが、ニュアンス的にはこんな感じであった)と言ってしまい、流れで引退した。
福本本人はこの件に関して、｢弁明するのが面倒臭い｣と理由で本当にやめてしまうのだから、｢立ちションが出来なくなる｣と言う理由で国民栄誉賞を辞退する人間は一味違った。
山田久志との対談ではこの時の理由を「翌年から門田（博光）が来るから厄介払いしたのではないか」
と本気とも冗談ともつかない推測をしている。
関連動画
3分少々でよく分かる｢解説者：福本豊｣。
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宝塚歌劇団・・・ファンであることを公言しており、週一で観に行くんだとか。曰く「自分に会いたかったら、月曜日に宝塚の劇場で待っていればいい」とのこと。
