加古川飛流
かこがわひりゅう
概要
『仮面ライダージオウ』EP25『アナザージオウ2019』にて初登場した、アナザージオウの変身者。
かつてタイムジャッカーによってアナザーライダーにされていた人間達を襲撃し、彼らの中に残っていた「仮面ライダーの力の残滓」を奪い取ってアナザーウォッチを精製し、ジオウと対峙する。
黒ウォズが言うには、歴史が変わった以上彼らに仮面ライダーの力が残っているということは考えにくいらしいが…。
冒頭の台詞からするとソウゴのことを以前から知っていたようだが、ソウゴには彼の記憶が全くないという。
ツクヨミの調査によると、ソウゴの両親が死亡した10年前のバス事故にてそのバスに同乗していたらしく、ソウゴと共に生存者として新聞に写真が掲載されていた。
ソウゴを狙う理由は、2009年に起きたバス事故で父「流三」と母「瀬名」を失ったため。
実はソウゴもこの事故で両親を亡くしているのだが、飛流はこの際、「ソウゴの名を呼びながら銃を発砲する白い服の女」を目撃しており、このことから「ソウゴがいなければ自分の家族は死ななかった」と考え、アナザーライダーの力でソウゴを抹殺しようとしている。
要するに逆恨みですらない完全な八つ当たりであり、当然ながらソウゴの方は面食らっていた。
ただしこの八つ当たりという感想はあくまで真実を知っている視聴者や王に選ばれたソウゴだからこそ言えることであり、当の飛流本人や同じく選別の為にさらわれた他の子供たちからすれば王の選別という理由で親を失い、飛流以外の子供は「王に選ばれなかった」だけで命すらも奪われたという理不尽以外の何物でもない目に遭わされていることは事実である(同じく両親を失っても尚、未来に向かって進み続けるソウゴのメンタルが強すぎるという声もある)
特に飛流に関しては、なまじ生き残ってしまったばっかりに本来あるべき親子のふれあいといった子供としてのありふれた幸せを奪われ天涯孤独の身で生きねばならないという、幼子には酷な人生を歩む羽目になる。
一方で事故を引き起こした主犯である白い服の女に対してどういう感情を持っているのかは描かれておらず(彼女の目的自体は知っているようだが、彼自身がその素性をどこまで知っているのか、彼に彼女の行動理由を教えたのが誰なのかについては現状不明)、タイムジャッカーとどういう関係にあるのかも明確には描かれていない(一応スウォルツは手助けをした上で撤退を指示しており、その指示には素直に従っている)。
後の話でバス事故の真相が語られ飛流の記憶の中の白い服の女は犯人ではなく、むしろ真犯人を止めようとして発砲したことが明らかになった。
放たれた銃弾が弾かれた末に飛流の座っていた椅子の近くに被弾したショックで飛流は気絶し、そのまま誘拐されてから救助されるまでずっと気絶していた模様。
そして、アナザージオウの力は皮肉にも両親が命を落とす元凶の男から受け取ったものだが本人はその事実を知らない。
更に言うならば、他の王候補の子供たちが全員死んだ中、何故王に選ばれたソウゴだけでなく飛流が生き残ったかと言えば、『他の子供と同様に瓦礫に圧し潰されそうになった飛流をソウゴが「アブナイ」の文字を実体化させることで助けていた』からであり、謂わば飛流にとってソウゴは命の恩人である(ただ、前述したとおり生き残ったことが飛流にとって喜ばしかったことかはまた別だが)。
確かに悲劇的境遇ではあるものの、一方で憎しみで目が曇っているのか良心が欠けている面もある。
かつてアナザーライダーであった人々を襲ってアナザーライダーの残滓を奪った挙句、無関係な人々にアナザーライドウォッチを次々と埋め込んで再生アナザーライダー軍団を結成するというのは典型例であり、自分の復讐に周囲を問答無用で巻き込むその姿は決して単なる被害者とは言えない。
何せ再生アナザーライダーにされてしまった人達はもとより、かつてアナザーライダーだった人々も時間の修復によってアナザーライダーであったという歴史が消えているのだから、二重の意味で被害を生み出してしまっている。
アナザージオウへ変身しその力を存分に使いこなしながら幾度となくジオウと互角に戦い、さらにタイムジャッカー達の助力によってアナザーライダー軍団を結成、徐々にソウゴを追い詰めついには満身創痍にまでソウゴを追い込んだ。
だがとどめを刺す直前に紆余曲折の末再び共に戦う道を選んだゲイツが突如乱入。二人が力を合わせた事によってアナザーライダー軍団を次々に倒され、自身もゲイツリバイブとジオウⅡの連携によって倒されてしまう。
敗北後にソウゴから励ましの言葉を掛けられ手を差し伸べられるも未だソウゴへの憎しみは消えることは無く、その手を振り払いながらも力が無いゆえ静かに涙するしかなかった……。
だがこの時、砕け散ったはずアナザージオウウォッチが瞬時に再生するという不可解な現象が発生。
そして書き換えられた歴史の中、彼が新たなる魔王として立ちはだかることになる……。
新たなる魔王
アナザージオウとの戦いを終え、さらに多くの試練を乗り越えついに魔王の力こと「グランドジオウ」の力を手にしたソウゴ。しかしとある事情でオーマジオウに敵わなかったソウゴはウォズに助けられ元の時代である2019年に戻される。
だがそこで見たのは元々ソウゴがいた世界とはあまりにも変わり果てた世界だった。
街は破壊され廃墟となり倒したはずのアナザーライダー達が人々を襲っており、さらには育ての親の順一郎や仲間であるはずのゲイツとツクヨミからも自分の事を忘れたばかりか、戦うためにジオウに変身した途端二人から魔王として一方的に敵視される始末。
その様子はまるで初めて自分に出会った頃に逆戻りしてしまったようだった。
突如現れたウールの助力により辛うじて逃げ出すも途方に暮れるソウゴだが、そんなソウゴの前にウォズが現れる。現状唯一頼れる仲間であるウォズとの再会に安堵するソウゴだが、「君に紹介しなければならない人物がいる」というウォズの言葉と共にある人物がソウゴの前に現れる。
そこにいたのは新たな魔王となっていた加古川飛流であり、さらに彼は「自らが2019年の世界を変貌させた張本人である」と語りだす。突然のことに唖然としながらも「なぜそんなことをしたのか?」と問うソウゴに対し飛流が憎しみの眼で睨みながら答える。
世界を変わり果てた姿にした理由……それはソウゴに対する復讐であった。
「“今の為に生きる”だと? ふざけるな!お前は何にも分かっちゃいない。選ばれなかった者の悲劇を…!
だから、試してやるんだ。お前から全部を奪って、同じ事が言えるかどうかをな!」
かつて自身が敗北した際にソウゴに掛けられた言葉。
その言葉はたしかにソウゴ自身の心からの言葉だったのかもしれない。だがそれは、曲がりなりにも王として認められ少ないながらも大切な人や居場所を持っているいわば「選ばれた者」の言葉でしかなく自分やあの時理不尽に死んだ者たちのような「選ばれなかった者」達からすればその言葉は侮辱以外のなにものでもなかった。
また劇中の描写からして、未だにツクヨミがソウゴや飛流に事件の真実を話している描写が無かったために飛流のソウゴに対する誤解が解けておらず、ソウゴの言葉は皮肉にも火に油を注ぐ結果となってしまった。
こうしてソウゴへの憎しみを爆発させた飛流はアナザージオウⅡの力を使って歴史改竄を行い家族や仲間たちと過ごした事実、大切な自身の居場所、さらには魔王へと至る未来といった
文字通り常盤ソウゴの全てを奪う事でかつての言葉が口だけだと証明しようとした。
さらにはその後の戦闘でもアナザージオウⅡの力を存分に振るい(直前のゲイツリバイブとの戦いのダメージや精神的な疲労があったとはいえ)グランドジオウを圧倒する戦闘力を見せつけた。
だがその裏には自身の真の仇であるスウォルツの思惑があり、その思惑通りに動かされてることに未だ気づいておらず、復讐の為とはいえ世界を荒廃させ結果的に絶望の未来を促してしまう。
奇しくもその姿はソウゴが頑なに否定していた最低最悪の魔王そのもの。
その後はゲイツやヴォズ達と合流し改めて自身を打倒しに来たソウゴに対して、なんとほぼ全てのアナザーライダーを召喚しソウゴ達を迎え撃つべく自身の城で待ち受ける。
「逃げずにここに来た事は褒めてやる、常磐ソウゴ。
お前のせいで俺の人生は無茶苦茶になった…。
俺が、お前の存在そのものを消してやろう」
ソウゴへの憎しみを爆発させた飛流は今度こそソウゴを葬り去るべくアナザージオウⅡへと変身し、アナザーライダー達と共に圧倒的な物量でソウゴ達を磨り潰すべく襲い掛かる。
だが改めて一致団結を果たしたソウゴ達には到底かなわず次々とアナザーライダー達は倒され、自身もアナザージオウⅡの力による未来予知で動きを見切ったうえで攻撃を放つもなんと「自身を光の粒子に変換して回避する」という、自身が見た未来とは全く異なる行動で無効化され逆に反撃を受けてしまう。
「何故だ…。何故、俺は奴に敵わない!?」
互角どころか劣勢に追い込まれ、敵わない理由も「過去しか見ていないから」とソウゴに突き付けられて心身共に満身創痍となりながらなおも足掻くが、最後はグランドジオウの「オールトゥエンティタイムブレーク」による全平成ライダーによるオールライダーキックを受けまたしても敗北を喫し、改竄した歴史も元に戻されてしまう。
撃破された後もなおソウゴに挑むべく、傷だらけの体を引きずりながら近くに落ちて無事だったアナザージオウⅡライドウォッチに手を伸ばすが、寸での所でこの機を待っていた海東にウォッチを奪われてしまう。
さらにウォッチを取り戻そうと海東に追いすがる飛流の前にスウォルツが現れ「自身が仕えていたのはある目的の為だけだ」と暴露される。
スウォルツ「お前の役目は終わりだ。お前には王たる資格など…ない。ひとときの夢を見られただけでもありがたいと思え。」
「そんな…。」
スウォルツの目的の為に用いられたあげく冷酷にも切り捨てられ、「自分はただ利用されていただけだった」という事実を正面から見せつけられた飛流は、またしても地に伏し絶望に打ちひしがれるのであった。
ちなみに劇中の描写を見るに辛うじて生きてはいるようだが……。
なお、後になって、彼からアナザージオウウォッチを奪った海東が、そのウォッチの力を使用したところ、副作用によって暴走する事態になっていた。
その暴走は“最後のお宝”=“士の命”を手に入れるといって襲いかかるもので、彼の心の底の欲望が凶暴化したものである。
このことから加古川の一連の支離滅裂な思考・行動も、実はこのアナザージオウウォッチの副作用によって引き起こされた可能性がある。
ちなみに加古川本人はスウォルツに見捨てられたシーンを最後にフェードアウトしており、その後は存在すら触れられることなく最終回にも登場しなかった。
しかし、時間軸こそ異なるが彼のその後は意外なところで描かれるのであった。
ファイナルステージ
女王となったツクヨミと赤ウォズが差し向けたザモナスとゾンジスとの戦いに苦戦するジオウとゲイツの前に颯爽と登場。しかも仮面ライダーバールクスに変身する力まで入手していた。
彼曰くツクヨミ達はライダー懐古主義者に操られているらしく、ソウゴとゲイツの昭和ライダーのライドウォッチ集めに協力する。
彼は何度にも渡るソウゴとの戦いで改心したというが…。
詳細はこちら(リンク先ネタバレ注意!)を参照。
余談
加古川は「過去」、飛流は「時の流れを飛ぶ」(時間旅行からの連想)がそれぞれ由来と思われる。また、川(or河)は流れ続けるが決して戻る事はない時の流れを表す比喩的表現として用いられる事が多い。ちなみに「加古川」という名の河川は実在する。
演者の佐久間氏は東映特撮には初参加。
テレビ朝日の公式ページのキャスト一覧に名前が載っており、ゲストではなくメイン格としての出演である。