概要
ヤマトシリーズの劇場版3作目で、テレビシリーズも含めると通算6作目。
『さらば宇宙戦艦ヤマト』で誕生した新世代のファン向けに企画された(意外と意識しないが第1作と『さらば』は4年空いている。現代なら普通かもしれないが当時は半年とか一年で新作出していたので)。しかし、仮にも『さらば』で一度完結と銘打ったので、続編を作ると旧来のファンが反発すると予想されたため、緩衝材としてTVスペシャルの『宇宙戦艦ヤマト新たなる旅立ち』を挟んでいる。
地球が正体不明の敵に占領され、それを救うためにヤマトが敵の本拠地目指して旅立つという内容。さらに今までずっと一緒にいた古代進と森雪が離れ離れになるという初めての展開があるのが特徴。
本作に込められたテーマとしては、松本零士的には「機械化を推し進めた成れの果てが敵として登場し、地球も一歩間違えればこうなるという警告」、西崎義展的には「恋人が離れ離れになり、さらに横恋慕する存在が現れてもなおお互いを想い続ける『信じあうという愛』」といったものが挙げられる。
後者に関しては、離れ離れになった古代と雪に、それぞれ古代×サーシャ、雪×アルフォンという構図が作られ、それでも結局は古代×雪を貫くという形になっている。挿入歌である「銀河伝説」の歌詞はまさにこのテーマをド直球で表した内容である。
スケジュールの都合で松本氏参加比率が低かった『新たなる旅立ち』とは逆に、こちらは松本率がやや高め。特に機械化・自動化に批判的な部分はいかにも松本色である(原案ではもっと濃かった)。原案自体も松本氏の書いたものであり、それもあってシリーズで初めて「原作」とクレジットされた(まあそのせいで後々面倒くさいことになるわけだが……)。
しかし、松本氏は『新たなる旅立ち』が気に入らなかったようで、「『永遠に』は『さらば』および『ヤマト2』の続編のつもりだから『新たなる旅立ち』の続編とは思わないで」とまで言っている。
そのせいなのか直系の続編なのに繋がりが結構薄い。一応山崎奨や徳川太助が引き続き登場したり古代守が地球に帰ってきていたりと、『新たなる旅立ち』から引き継いだ要素も無くは無いのだが、仮にも同じ敵が攻めてきたのにキャラクター全員まるで記憶喪失にでもなったのかと言いたいほど『新たなる旅立ち』の出来事にはほとんど触れない。
なお、シナリオ面での松本氏の関わりは深くなっているが、デザイン面ではこの頃にはもう一線からほぼほぼ引いており原案ラフすら描いた数は少ない(松本原案デザインと確定しているのは戦艦グロデーズとスカルダート(変装時)くらい。サーシャのラフも描いているが不採用)。
映像面、音楽面での完成度はシリーズ内でもトップクラス。本作から本格的に使われ始めた透過光による綺麗なビーム表現、爽快感のあるコスモタイガー隊戦闘シーン、二重銀河に代表される美術(二重銀河は斜め方向からの画なのに手書きで回転させてるそうな)、単体の曲としてのクオリティはそのままに一部フィルムスコアリングも使ってBGMとしての完成度も高めた音楽(『さらば』だと観賞用とBGM用を完全に区別して作っていたので、BGMの方は単体で聞くとちょっと厳しい曲もある)、等々。「ワープディメンション」と称した中盤で画面が広がり音響も立体的になるという方式を採用するなど新しい試みも見られた(もっとも当時実際に実現できた劇場は少なかったらしいが)。
一方でストーリー面では酷評され気味。元々原案時から内容が二転三転していて煩雑になっているうえ、上記の全く異なる複数のテーマを2時間半に収めるのは無理があったのか、全体的に駆け足かつ強引な展開が多い。死亡キャラと同じポジションに収まる瓜二つの弟、1年で赤ん坊から10代後半くらいまで急成長してヒロイン枠入りする女性、ちょっと目立つ光点があったので行ってみたらあっさり発見できた敵母星、それ以外にもツッコミどころは枚挙に暇がない。キャラの扱いも悪く、3人ほど雑に殺しており、特にそのうち2人に関しては現在でも批判されている。また、前作との整合性の低さも評価を下げる一因になっている。
第1作が松本氏と西崎氏の良いところ同士がうまく融合した作品だとすれば、本作は逆に悪いところ同士が融合した作品と言えるかもしれない。
「ヤマトシリーズは作品の不出来を映像美と音楽のパワーで誤魔化している」などといったことを言う人が偶にいるが、大体の原因は本作だろう。
なぜかDVDだと全体的に色味が暗く調整されており、こと暗黒星雲内のシーンではほとんど何も見えない。Blu-rayではきちんと調整されて大幅に視認性が上がっている。
あらすじ
西暦2202年。突如外宇宙から飛来した謎の飛行物体が太陽系の各基地を尽く壊滅させ、地球へと降り立った。それと時を同じくして、謎の奇襲部隊が地球各所を襲い、地球は完全に占領されてしまう。彼らは飛行物体改め重核子爆弾を用いることで地球人類を抹殺できると宣言し、地球人へ絶対服従を迫った。
辛くも地球を脱出したヤマト乗組員一行は隠匿されていたヤマトへ辿り着き、重核子爆弾の起爆を阻止するため、それをコントロールしていると思しき敵母星を目指して発進する。
一方、脱出時に負傷して地球に取り残された森雪は、敵将校であるアルフォン少尉に助け出され、彼の下に身を寄せることになる。古代のことを想い続ける雪だったが、アルフォンはそんな彼女の姿に惹かれ、求婚するのだった。
原案
原案での内容は有体に言えば松本氏の大好きな“腐った地球とそれに異を唱える主人公達”である。『さらば』『ヤマト2』の序盤部分を一層濃くしたものと思えばいい。
舞台は初代から数百年後の地球。登場するキャラクターはかつてのヤマト乗組員の子孫達。自動化が進んでおり、人間が操作するのは時代遅れと評される中で、それでもなお人の手で物事を為そうとする主人公。そんな中で200年未来の地球と称する存在の戦争が始まる。
最終的に敵が未来の地球というのは噓だったが、今のまま進めば本当にあのような醜い存在に堕ちてしまうという警鐘を鳴らして締めというのがざっくりした内容。
だが、他ならぬ松本氏自身が「子孫では気が乗らなかった」として舞台を数年後に変更。子孫設定も無くなったが、サーシャの処理に困ったため、イスカンダル人は短期間で大人に成長するというトンデモ設定が追加されることになった。
この変更があった後でもまだ自動化への懸念という要素は色濃く残っていたが、最終的には地球の無人艦隊や暗黒星団帝国の設定に名残は見えるものの、視聴者に訴えかけるほど強くは押し出されていない。
基礎設定だけ見ると2000年頃に連載された松本氏の漫画『新宇宙戦艦ヤマト』に共通する面がいくらかみられるため、同作品を読めば原案通りだった場合の『永遠に』がなんとなく想像できるかもしれない。