概要
宇宙戦艦ヤマトシリーズの劇場版3作目で、テレビシリーズも含めると通算6作目。時系列的には4番目の物語となる(2作品が総集編と途中分岐したパラレルワールドのため)。1979年放送のTVスペシャル『宇宙戦艦ヤマト新たなる旅立ち』の直接的な続編となっている。
『さらば宇宙戦艦ヤマト』で誕生した新世代のファン向けに企画された(意外と意識しないが第1作と『さらば』は4年空いている。現代なら普通かもしれないが当時は半年とか一年で新作出していたので……)。しかし、仮にも『さらば』で一度完結と銘打ったので、続編を作ると旧来のファンが反発すると予想されたため、緩衝材として『新たなる旅立ち』を挟んだ。
地球が正体不明の敵に占領され、それを救うためにヤマトが敵の本拠地目指して旅立つという内容。さらに今までずっと一緒にいた古代進と森雪が離れ離れになるという初めての展開があるのが特徴。
本作に込められたテーマとしては、松本零士的には「機械化を推し進めた成れの果てが敵として登場し、地球も一歩間違えればこうなるという警告」、西崎義展的には「恋人が離れ離れになり、さらに横恋慕する存在が現れてもなおお互いを想い続ける『信じあうという愛』」といったものが挙げられる。
後者に関しては、離れ離れになった古代と雪に、それぞれ古代×サーシャ、雪×アルフォン少尉という構図が作られ、それでも結局は古代×雪を貫くという形になっている。挿入歌である「銀河伝説」の歌詞はまさにこのテーマをド直球で表した内容である。
スケジュールの都合で松本氏参加比率が低かった『新たなる旅立ち』とは逆に、こちらは松本率がやや高め。特に機械化・自動化に批判的な部分はいかにも松本色である(後述するが原案ではもっと濃かった)。原案自体も松本氏の書いたものであり、それもあってシリーズで初めて「原作」とクレジットされた(まあそのせいで後々面倒くさいことになるわけだが……)。
しかし、松本氏は『新たなる旅立ち』が気に入らなかったようで、徳間書店の「ロマンアルバム」にて
「『ヤマトよ永遠に』は、『さらばヤマト』プラスTVのパートⅡの続編的意味合いが強いのです。決して、テレフィーチャ―『新たなる旅立ち』の続きとはみないでいただきたい。」(原文ママ)
とまで言っている。
そのせいなのか直系の続編なのに繋がりが結構薄い。一応山崎奨や徳川太助が引き続き登場したり古代守が地球に帰ってきていたりと、『新たなる旅立ち』から引き継いだ要素も無くは無いのだが、仮にも同じ敵が攻めてきたのにキャラクター全員まるで記憶喪失にでもなったのかと言いたいほど『新たなる旅立ち』の出来事にはほとんど触れない。
なお、シナリオ面での松本氏の関わりは深くなっているが、デザイン面ではこの頃にはもう一線からほぼほぼ引いており原案ラフすら描いた数は少ない(松本原案デザインと明言されているのは戦艦グロデーズとスカルダート(変装時)くらい。サーシャのラフも描いているが不採用)。
映像面、音楽面での完成度はシリーズ内でもトップクラス。本作から本格的に使われ始めた透過光による綺麗なビーム表現、金田アクションもりもりのコスモタイガー隊戦闘シーン、二重銀河に代表される美術(二重銀河は斜め方向からの画なのに手書きで回転させてるそうな)、単体の曲としてのクオリティはそのままに一部フィルムスコアリングも使ってBGMとしての完成度も高めた音楽(『さらば』だと観賞用とBGM用を完全に区別して作っていたので、BGMの方は単体で聞くとちょっと厳しい曲もある)、等々。「ワープディメンション」と称した中盤で画面が広がり音響も立体的になるという方式を採用するなど新しい試みも見られた(もっとも当時実際に実現できた劇場は少なかったらしいが)。
一方でストーリー面では酷評され気味。元々原案時から内容が二転三転していて煩雑になっているうえ、上記の全く異なる複数のテーマを2時間半に収めるのは無理があったのか、全体的に駆け足かつ強引な展開が多い。死亡キャラと同じポジションに収まる瓜二つの弟、1年で赤ん坊から10代後半くらいまで急成長してヒロイン枠入りする女性、ちょっと目立つ光点があったので行ってみたらあっさり発見できた敵母星、それ以外にもツッコミどころは枚挙に暇がない。キャラの扱いも悪く、3人ほど雑に死なせており、特にそのうち2人に関しては現在でも批判されている。また、前作との整合性の低さも評価を下げる一因になっている。
第1作が松本氏と西崎氏の良いところ同士がうまく融合した作品だとすれば、本作は逆に悪いところ同士が融合した作品と言えるかもしれない。
偶に「ヤマトシリーズはツッコミどころ満載のストーリーを映像美と音楽のパワーで誤魔化している」などと揶揄する人がいるが、大体の原因は本作だろう(次点で『完結編』)。
2024年にリメイク版である『ヤマトよ永遠に_REBEL3199』の公開が開始された。
あらすじ
西暦2202年。突如外宇宙から飛来した謎の飛行物体が太陽系の各基地を尽く壊滅させ、地球へと降り立った。それと時を同じくして、謎の奇襲部隊が地球各所を襲い、地球は完全に占領されてしまう。彼らは飛行物体改め重核子爆弾を用いることで地球人類を抹殺できると宣言し、地球人へ絶対服従を迫った。
辛くも地球を脱出したヤマト乗組員一行は隠匿されていたヤマトへ辿り着き、重核子爆弾の起爆を阻止するため、それをコントロールしていると思しき敵母星を目指して発進する。
一方、脱出時に負傷して地球に取り残された森雪は、敵将校であるアルフォン少尉に助け出され、彼の下に身を寄せることになる。古代のことを想い続ける雪だったが、アルフォンはそんな彼女の姿に惹かれ、求婚するのだった。
登場人物
太字は新キャラ。
地球
- 古代進(CV:富山敬) - 主人公。ヤマト艦長代理。
- 森雪(CV:麻上洋子) - メインヒロインの1人。古代の恋人。本作では地球に残留。
- 真田澪(CV:潘恵子) - メインヒロインの1人。森雪の代わりのレーダー手。
- 島大介(CV:仲村秀生) - ヤマト航海班長。古代の親友。
- 真田志郎(CV:青野武) - ヤマト工作班長。古代の兄代わり。
- 佐渡酒造(CV:永井一郎) - ヤマト艦医。
- アナライザー(CV:緒方賢一) - ヤマトの分析ロボット。
- 相原義一(CV:野村信次) - ヤマト通信班長。
- 南部康雄(CV:林一夫) - ヤマト戦闘班クルー。砲術関係の責任者。
- 太田健二郎(CV:安原義人) - ヤマト航海班クルー。航法関係を担当。
- 山崎奨(CV:寺島幹夫) - ヤマトの2代目機関長。
- 徳川太助(CV:古谷徹) - ヤマト機関部員。初代機関長である徳川彦左衛門の息子。
- 山南(CV:小林修) - ヤマトの新艦長。
- 加藤四郎(CV:神谷明) - ヤマトのコスモタイガー隊新人隊員。
- 東田(CV:無し) - ヤマト工作班新人クルー。
- 西尾(CV:不明) - ヤマト航海班新人クルー。
- 大門(CV:無し) - ヤマト戦闘班新人クルー。
- 菊地(CV:不明) - ヤマト機関部新人クルー。
- 地球防衛軍司令長官(CV:伊武雅之)
- 古代守(CV:広川太一郎) - 古代進の兄。
暗黒星団帝国
- スカルダート(CV:大平透) - 暗黒星団帝国の国家元首たる聖総統。
- サーダ(CV:中谷ゆみ) - 聖総統の側近の女性。
- アルフォン(CV:野沢那智) - 地球占領軍・技術部情報将校。
- カザン(CV:寺田誠) - 地球占領軍総司令長官。
- グロータス(CV:田中崇) - ゴルバ型浮遊要塞総司令。
イスカンダル
原案
原案での内容は有体に言えば松本氏の大好きな“堕落した地球とそれに異を唱える主人公達”である。『さらば』『ヤマト2』の序盤部分を一層濃くしたものと思えばいい。
舞台は初代から数百年後の地球。登場するキャラクターはかつてのヤマト乗組員の子孫達。自動化が進んでおり、人間が操作するのは時代遅れと評される中で、それでもなお人の手で物事を為そうとする主人公。そんな中で、劇中時代からさらに200年未来の地球と称する存在の戦争が始まる(つまり『新たなる旅立ち』以前から見たら〈未来の地球〉VS〈もっと未来の地球〉という構図になる)。
最終的に敵が未来の地球というのは噓だったが、今のまま進めば本当にあのような醜い存在に堕ちてしまうという警鐘を鳴らして締めというのがざっくりした内容。
だが、他ならぬ松本氏自身が「子孫ではどうもキャラに血が通わないし、私自身気が乗らなかった」として舞台を数年後に変更。子孫設定も無くなったが、サーシャの処理に困ったため、イスカンダル人は短期間で大人に成長するというトンデモ設定が追加されることになった。
この変更があった後でもまだ自動化への懸念という要素は色濃く残っていたが、最終的には地球の無人艦隊や暗黒星団帝国の設定に名残は見えるものの、視聴者に訴えかけるほど強くは押し出されていない。
基礎設定だけ見ると2000年頃に連載された松本氏の漫画『新宇宙戦艦ヤマト』に共通する面がいくらかみられるため、同作品を読めば原案通りだった場合の『永遠に』の雰囲気がなんとなく想像できるかもしれない。
こぼれ話
- 「ヤマトよ永遠に」というタイトルは、実は『宇宙戦艦ヤマト2』の最終話サブタイトルでも使用されている。
- ワープディメンション(以下、WD)は、元々70mmフィルムで作りたかったが諸々の事情で叶わず、代替案として提案されたものである。
- 予告編でも本作の目玉の一つと宣伝されたWDだが、実際のところ設備の問題などにより完全に実現できた劇場は45館だけだったという。
- 本作の画面サイズは、WD前がビスタサイズ(16:9)、WD後がスコープサイズとなるが、WD前に関しては制作自体はスタンダードサイズ(4:3)で行われており、上下をトリミングしてビスタサイズにしている。DVDだとトリミング後となっているが、Blu-rayでは大元となるトリミング前のもので収録されている(ビスタサイズも選択可)。
- ビスタサイズの場合、WD後の横幅がテレビの画面に合わせられるため、画面全周に黒帯が付いた額縁状態となる。DVDで視聴した際に最初の画面が異様に小さくても故障や不良品ではないので安心しよう。だがこのために家庭での視聴ではWDで画面が広がるという感動はいまいち味わいにくくなっている(「普通の画面→大画面」ではなく「小さい画面→普通の画面」という印象になるため)。
- スタンダードサイズからの変化の場合、実はWD前後で画面面積はほとんど変わっていない(例として32インチテレビで換算すると、大体18㎠、つまり約4cm四方の面積しか増えていない)。
- WD前の映像はトリミング前提だったのか否か、極一部シーンで絵が変な感じで途切れている(中盤のパルスレーザーなど)が、一方でトリミングで消えている部分に動きのある絵が存在するシーンもあり(序盤の迎撃ミサイル基地のシーンで画面下に車に乗り込む人間が描かれている)、スタンダードサイズで見ることでの新たな発見もある。
- WD前の音響は元々モノラルだったが、ビデオソフト化の際にステレオになった。DVD以降は音声変更でモノラルでの視聴も可能。
- ステレオ化の際にBGMも微妙に修正されている。例えば冒頭の迎撃ミサイルのシーンでは曲が始まるタイミングが若干ずれている。また、第一作や『さらば』と違って曲自体の差し替えは基本的に無いのだが、唯一古代達が小惑星イカルスに辿り着くシーンに関してはBGMが削除されている。流れているのがシーンの雰囲気にそぐわない穏やかな曲だったからだろうか。
- なぜかDVDだと全体的に画面が暗く、コントラストもやや低めに調整されており、こと中盤の暗黒星雲内のシーンではほとんど何も見えなくなってしまっている。Blu-rayではきちんと調整されて大幅に視認性が上がっている。
- 『完結編』までのシリーズ作品で唯一ガミラスが(回想シーンを除いて)登場しない作品となる。そのためデスラーも登場せず、彼の声を担当する伊武雅之は「デスラーがいないからちょっと寂しいと言えば寂しい」と述べている(出演自体は司令長官役でしている)。
- 上記の通り『新たなる旅立ち』との繋がりが薄いせいなのか、劇中では「暗黒星団帝国」という名前は一度も登場しない(一応予告編では言っている)。