概要
宇宙戦艦ヤマトの心臓部分に当たる部分。
このエンジンのおかげでヤマトはワープ航行が可能となっている。ヤマトがイスカンダルに辿り着くまでの航海を支えた大きな立役者である。
イスカンダルへの旅以降は、地球艦隊の基本装備となっている(一部には波動エンジンを改良して搭載した艦艇まで存在する)。
ちなみに他勢力のエンジンについてはほぼ描写が無いため不明だが、『宇宙戦艦ヤマトIII』に登場したガルマン・ガミラス帝国の次元潜航艇は波動エンジンを搭載していることがセリフで明言されている。
機能
波動エンジンは真空エネルギー(ダークエネルギー)を圧縮・加速させ、タキオン粒子を生成する。タキオン粒子は光よりも速く動き、それにさらに速度を与えて後方に噴出する事で推進力を得ている。
この生成したタキオン粒子を使った波動砲という兵器も存在し、作中の随所で活躍する。
この波動エンジンを起動させるには、補助エンジンからかなりのエネルギーを必要とする。
しかし、一度エンジンを起動させてしまえば後は勝手にエネルギーを生成する無限の永久機関と化す。
また、PlayStation用ゲーム版では、生成したタキオンはタキオン通信という超光速通信にも使用されていると明言されている。
リメイク版
「宇宙戦艦ヤマト2199」シリーズでは、名称が「次元波動超弦跳躍機関」となり、通称が「次元波動エンジン」となった。
旧作と扱いは同じだが、原理の部分は大幅に変更され、「M理論」と呼ばれる実在の仮説理論に基づいた設定となっている。
本シリーズではガミラスの宇宙艦艇にも同様の原理の機関が搭載されていると設定され、「ゲシュ=タム機関(もしくはゲシュ=タム・ドライブ)」と呼ばれている。
機能
ヤマトを始めとする地球艦の心臓部であるという基本設定は旧作のまま。
起動には心臓部に「波動コア」と呼ばれるユニットを組み込む必要がある。これはガミラス戦争当時の地球には生産できなかったため、イスカンダルからの2人目の使者によって送り届けられた。
ちなみにガミラス戦争後は地球も量産しているが、イスカンダル謹製のものと差異があるかは不明(ちなみに『宇宙戦艦ヤマト2202』が始まる前は、某機動戦士の太陽炉と擬似太陽炉のように、本物とコピー品という違いによってヤマトの主人公補正に理屈付けするという予想も見られた)。しかし、『3199』において地球製の波動コアはイスカンダル製のものより劣るという設定が明かされた。
始動時には大電力を消費するが、一旦始動してしまえば再始動用のエネルギーは自前で生成できる。
その恩恵はワープだけに留まらず、陽電子衝撃砲という、従来型のエンジンではチャージに時間がかかる決戦兵器も、その莫大なエネルギーによって通常火器化を実現させた。
ただし、艦内の各種サービス(照明とか自動ドアとか諸々)の電力に関しては、波動エンジンではなく第1補助機関であるレーザー核融合炉で賄われている(ちなみにいわゆる補助エンジンである「艦本式コスモタービン」は第2補助機関)。
原理
原理についてはざっくり2種類の解説がある。
余剰次元
M理論に基づくのはこっち。我々の宇宙は4次元(縦・横・奥行の3つの次元と時間の次元)で構成されている。しかし、実際には11個の次元が存在しており、5次元以上の次元は現在、観測不能な状態(カラビ・ヤウ多様体)となってこの宇宙に重なっていると予想されている。この5次元以上の次元を「余剰次元」と呼ぶ。
波動エンジンはその余剰次元を元の状態に戻すことで、余剰次元に関わるエネルギー(余剰次元に内包されていたエネルギーか余剰次元を抑えつけていたエネルギーかは資料によって曖昧)を取り出すことができる。
このエネルギーは一旦マイクロブラックホールという形で炉心内に現出する。ブラックホールはホーキング輻射というエネルギー放射によって蒸発すると考えられており、それはブラックホールが小さいほど早いとされる。したがって炉心内のマイクロブラックホールは誕生から間もなく蒸発し、大量のエネルギーを放出する。そうやって放出されたエネルギーを利用するというのが波動エンジンの仕組みである。
ちなみにどういう原理で余剰次元を解放しているのかは不明。劇中では「ブチンスキー波動方程式」という架空の方程式が登場している。
波動砲は、この余剰次元の展開を炉心内ではなく外部(砲の射線上)で行うことで、多数のマイクロブラックホールの生成と蒸発によって射線上の物体を軒並み吹き飛ばすという兵器になった。しかし、炉心内という制御された空間ではないので、万が一事故が起きれば宇宙に甚大な被害も与え得るらしい。
これに関する詳細は波動砲へ。
真空のエネルギー
別の解説(解釈)では「真空の相転移」を利用しているとされる。公式資料中ではなく、「宇宙戦艦ヤマト2199でわかる天文学」(『2199』の科学考証の人が出した本)での解説だが。
水が高いところから低いところへ流れるように、エネルギーも大きいところから小さいところへ移動する(熱で例えると、熱いところから冷たいところへ熱が移動し、最終的に全体で均一の熱さになる)。
そして、エネルギーを取り出す際にはこの移動が必要となる(水車で例えるなら、流れのある川に置けば水車は回ってエネルギーを回転運動として取り出せるが、水が均一に安定した場所=流れの無い池に置いても水車は回らず何の意味も為さない)。
宇宙に関して言うと、「真空」というのは「無」ではなく、「プラス」と「マイナス」がお互いが打ち消し合って結果的に「±0」という状態のことであり、エネルギー自体は存在している。しかし、局所的に見れば多少のエネルギーの高低差(エネルギー密度の差)はあるものの、全体で見れば凪いだ海のごとくなだらかのため、エネルギーを取り出すことはできない。
しかし、宇宙膨張などによって時空の性質が変化すると、真空の状態も変化する。これが「真空の相転移」と呼ばれる。
上記の海に例えると、凪いでいることに変わりはないが、海水面自体が上昇ないし下降する。もし、この2つの状態が直接繋がるようなことがあれば、当然海水面の高い海から低い海へ水が流れる。流れさえあれば水車でエネルギーが取り出せる。
それと同じことで、要は「真空の相転移」が起きると真空に相当するエネルギー状態も変化するので、この前後の状態を連結することができればエネルギー差から「流れ」が生じてエネルギーを取り出すことができる、という理屈。
「真空から無限にエネルギーを取り出す」という説明はこれに基づいている模様。『2199』第3話にて徳川機関長が呼んでいたマニュアルにも「その原理は未だ未解明なところがあるが、宇宙のインフレーション急膨張に生じたのと同様な状態を再現し、真空のエネルギーを取り出しているものと考えられている。」と書かれている。
『2199』第10話で起こった時空の性質が反転した空間に入ったことエネルギーを放出してしまうという現象も、エネルギーの高低差が逆転しているにもかかわらずそのまま連結してしまい、エネルギーが逆向きに流れてしまった故。
相転移前後の宇宙を繋ぐというのは、言い換えれば過去の宇宙と現在の宇宙を繋ぐということになるらしいが、やはりどういう原理かは不明。
ちなみに先述した徳川のマニュアルによるとこの連結には大量の反物質が必要とされ、その反物質は補助エンジンから供給される電力で生成機を稼働させて作り出すらしい。波動エンジン始動時には大量の電力を消費しているが、どうやら補助エンジンを回すのに使っている模様。
要するに
余剰次元にしろ真空の相転移にしろ内容が高度過ぎて、この2つが完全な別解釈なのか両立する設定なのかどうかさえも儂にはよく分からんが、まあそこまでストーリーに大きく影響するわけでもないので気にしなくても大丈夫さ、うん。
いずれにしても宇宙そのものをエネルギー源にしているに等しいので、得られるエネルギーは莫大なものとなる、ということさえ覚えていれば視聴には何の問題もない。
なお、「波動エネルギー」という用語は本シリーズでも出てくるが、旧作だと波動エネルギー≒タキオン粒子という解釈で良かったのだが、今回の原理だと波動エネルギーがどういうものなのかあまりはっきりしない。
波動エンジンを応用した兵器
劇中には波動エンジンの技術を応用した(主に波動エネルギーを用いた)兵器が登場する。
波動砲
波動エンジンで生成されたエネルギーをそのまま発射する切り札。
詳細はリンク先にて。
波動カートリッジ弾
『ヤマトよ永遠に』で初登場した装備。波動砲の100分の1のエネルギーを封入した、波動砲の簡易版ともいうべき実体弾。
詳細はリンク先にて。
波動爆雷
『ヤマトよ永遠に』で初登場した装備。波動カートリッジ弾と同様、波動エネルギーを用いた爆雷。
ヤマトの後部甲板上に発射管が設けられている。
主に弾幕として防御に用いられている。通常空間のみならず亜空間にも効果を及ぼすことができる特性があり、ガルマン・ガミラスの次元潜航艇との戦闘で活躍。
信濃のミサイル
『宇宙戦艦ヤマト復活篇』にて登場した兵器。要は波動カートリッジ弾のミサイル版(何気にテスト無しで実戦投入された点も同じ)。
ヤマトの艦載艇である「信濃」に24発搭載されている。
SUSの宇宙要塞との戦闘において、要塞のシールドを破壊するために出撃。手始めに6発撃ち込んだが効果は薄く、最終的に轟沈寸前の信濃が残りの18発を抱えたまま体当たりすることでシールドを破壊した。
波動防壁
『2199』にて初登場した、次元波動理論を応用した防御装備。
詳細はリンク先にて。
波動掘削弾
『2202』で初登場した岩盤破壊用兵器。テレザート星を覆うガトランティスが設置した岩盤を除去するために真田志郎によって急遽考案・開発された(ただ、急遽開発された新兵器の割には後述のバリエーションができるのがやたら早い)。
マイクロ化した波動機関ともいえる構造を持ち(小説版の解説では、解放寸前の余剰次元を内部に設置しているとのこと)、波動エネルギーが発生させる震動波によって岩盤を内部から崩壊させるとされる。
『2202』では形状の異なる3タイプが登場。
まずは真田が最初に開発したタイプで、第14話にてテレザート星の岩盤破壊に用いられた。二つの円錐をくっつけた独楽のような形をしており、赤いドリルが備わっている。大きさは十メートル前後あり、運ぶときは航宙機2機で曳航している。
次に登場したのは第24話ではガミラスが用いたもので、こちらは特殊削岩弾と同じ形状をしている。都市帝国との最終決戦に置いてガルントⅡが大量に発射したが、与えたダメージの程は不明。
最後に登場したのは第25話にてクラウス・キーマンのツヴァルケに搭載されたもの。形状は普通のミサイルであり、数メートルまで小型化しているため1機で持ち運べる。完全覚醒しかけている滅びの方舟を止めるため、変換炉を内部から爆破するのに用いられた。しかし、変換炉に傷をつけることはできたが、機能停止まで追い込むことはできなかった。
ちなみに脚本では都市帝国内部の戦闘でも用いられており、上記のツヴァルケのものはこの時の不発弾とされている。
『宇宙戦艦ヤマト2205』では戦闘空母ヒュウガに搭載。『2202』初登場時のものに若干アレンジが加えられたデザインで、さらにミサイルの先端に取り付けられ、遠距離から打ち込むことが可能になった。
また、最終話では弾頭部分のみがコスモハウンドの分離ユニット内に積載され、それをユニットごと自動惑星ゴルバに捕獲させることで、ゴルバを内部から爆破した。
波動共鳴導波装置
『2205』にて初登場した装備。次元波動機関に存在する「波動共鳴」という現象を利用したもの。波動実験艦銀河に搭載されたコスモリバースシステムの研究の成果として開発された。
波動エンジンの爆発などで生じる波動共鳴の干渉波は、それを浴びた波動エンジンに様々な影響を及ぼすことができ、「活性波動共鳴波」は波動エンジンを活性化させ、、「抑制波動共鳴波」は逆に活動を抑制させ、時には機能停止を引き起こさせる。
本装備は主に「活性波動共鳴波」を利用しており、非接触充電のような原理で他の艦の波動エンジンに実質的なエネルギー補給を行うことが可能。
波動防壁弾の運用にも必須となっており、弾頭に仕込まれた簡易波動炉心を活性波動共鳴波で起動させることで防壁の展開が可能となっている。
波動共鳴機雷
『ヤマトよ永遠に_REBEL3199』にて登場する兵器。
上記の波動共鳴導波装置と同じく「波動共鳴」を利用したもので、こちらは「抑制波動共鳴波」を利用している。
見た目は波動コアそのもので、敷設エリア内に多数ばら撒かれており、敵がエリア内に侵入するとそれらが波動共鳴波を発生させ、敵艦を一時的に行動不能に陥らせる。
ただし原理上、対象となるのは次元波動機関(地球の波動エンジンやガミラスのゲシュ=タム機関など)を搭載しているものに限定される模様。
なお、前身となるものは『2202』にて登場しており、土星域での銀河艦隊とガトランティス艦隊の戦闘において、艦載機ブラックバードで敵艦隊のど真ん中に量産型波動コアをばら撒き、それを銀河のコスモリバースによって遠隔地から暴走させることで波動共鳴を発生させ、敵艦隊を行動不能に陥らせた。