概要
「宇宙戦艦ヤマト2199」シリーズに登場するシステム。略称は「コスモリバース」、もしくは「CRS」(「Cosmo Rebirth System」の頭文字)。
イスカンダル星が保有するシステムで、「汚染を浄化し、惑星を再生させることができるシステム」と称される。
原作での放射能除去装置「コスモクリーナーD」に相当し、ガミラスの遊星爆弾によって汚染された地球環境を再生させて地球人類を滅亡から救うために、ヤマトがイスカンダル星への大航海を行うことになるというのが『宇宙戦艦ヤマト2199』のあらすじである。
本体は波動砲制御室内、制御装置は自動航法室内に設置されているが、システム設置にあたってヤマト自体にも改造が施されており、実態としてはヤマト≒CRSという状態。艦全体に脳の神経網のようなものを構築しており、真田志郎をして「一個の生命体のようなもの」と評している。つまりCRSの搭載によってヤマトは意思を持つ艦になったともいえる。
原作のコスモクリーナーDは一作限りの存在だった(強いて言うならPSゲーム版では『さらば』でも少し登場)が、CRSは続編でも引き続き登場し、物語に大きく関わってくる。
『2199』ではヤマトに搭載されたが、『宇宙戦艦ヤマト2202』で波動実験艦銀河に移植され、以降は銀河に搭載されている(ちなみに上記の通りCRSはシステム全体として見るとヤマトの船体に深く根付いているが、移設したのがどの範囲までなのか詳細は不明)。
機能
惑星再生装置として
ユリーシャ曰く、生命を宿した惑星には物質と生命の進化の記憶が時空を超えた波動として存在しており、星の想いを宿した「星のエレメント」と呼ばれる物質があるという。
CRSはその星のエレメントを触媒にして、惑星の記憶を呼び起こし、惑星を復元するという装置となっている(例えるならバックアップデータを使ってパソコンを過去の状態に戻すようなもの)。
星のエレメントは消耗品であるようで、一度使用すると消失してしまう。
応用として、エレメントを別の星に対して使用し、その星の環境を別物へと上書きすることも可能ということが『宇宙戦艦ヤマト2205』で明らかにされている。
なお、『2205』で明らかにされたCRSの本来の用途からして、『2199』での使い方は厳密には本来用途外である可能性がある(詳しくは後述)。
波動エネルギーの制御デバイスとして
惑星再生能力は地球再生に使用されることで失われたが、波動文明の粋を極めたイスカンダルの装置だけあって、波動エネルギーの制御デバイスとしてもこの上なく優秀。『2202』ではそこに目を付けた地球が銀河に移設したCRSを使ったバフ・デバフのシステムを構築した。
波動エンジンには「波動共鳴」という現象があり、発生した共鳴波を波動エンジンが浴びると活性化したり(活性波動共鳴波)、逆に機能が抑制されたり(抑制波動共鳴波)する。この現象自体はCRSに関係なく存在しているが、CRSを搭載した銀河はこの現象をコントロールして大規模な「波動共鳴波」を放射することができ、周囲の友軍艦を強化して大規模な波動防壁を展開したり、逆に敵艦のエンジンを停止させて行動不能にしたりといったことを任意で行える。
この機能は後に地球の技術でも再現され、銀河ほど大規模ではないながらもアスカ級補給母艦に搭載されることとなる。
また、波動エネルギーは空間に膨張・収縮といった影響を及ぼす(それを使ってワープしている)が、CRSはそれを細かく制御して空間そのものを任意の形に歪めてレンズのようにする「波動レンズ」を構築し、巨大な波動防壁を展開したり波動砲のエネルギーを収束・増幅させたり、劇中では描かれなかったが火焔直撃砲や拡散波動砲を反射して反射衛星砲のようなことを行うといったことも可能。
これらの機能は『2202』第21話での限界稼働によって破損して失われる。
演算装置として
惑星再生能力も波動エネルギーの制御デバイスとしての機能も失ったが、それでも並の地球製量子コンピュータよりも高い演算能力を有しているため、『2205』以降はガトランティス戦争で破壊された月や土星の修復作業に活用されている。
その他
銀河に移設されたCRSは、銀河に搭載されている指揮AIシステムとは独立した思考回路を有しており、独自のロジックで行動している。
艦全体のシステムを監視し、指令が発せられた際にその内容が他者を傷つける意図のものだと判断すると、指令が届かないように妨害。これにより、銀河は一切の武装を使用できなくなっている。艦自体の武装はおろか、その気になれば艦内の銃器使用すらも阻害できる模様。
逆に他者を傷つける意図でなければ普通に使用は可能であり、『2202』最終話での月面修復作業では、主砲塔からマグネトロンプローブを射出している。
また、『ヤマトよ永遠に_REBEL3199』第一章で起こったとある現象(ネタバレのため後述)など、その挙動にはまだまだ謎が多い。
劇中での登場
宇宙戦艦ヤマト2199
ガミラスの遊星爆弾によって汚染された地球環境を再生させて地球人類を滅亡から救うために、ヤマトが受領しに行く。
波動砲の存在を知ったスターシャ女王はCRSの譲渡を一度は渋るが、最終的に渡すことを決定。その際、波動砲を封印し、機構を取り外して空いたスペースに設置する形になった。
星のエレメントの核には当初古代守が使用されていたが、弟である古代進が森雪を失った悲しみに耐えかねているのを見て、沖田十三艦長に対し「艦をお返しします」と述べ、システムを発動して雪を蘇生。エレメントの消失によって一時は再起動不能になり、真田を始めとする技術科のメンバーは絶望するが、その少し後に息を引き取った沖田が新たなエレメントになって再起動。
ヤマトの帰還により地球は再生されることとなった。
宇宙戦艦ヤマト2202
CRSによって地球は再生したものの、その環境はガミラス戦争直前のものではなく、複数の時代が入り混じった混沌としたものだった。そのうえ、地下には「時間断層」と呼ばれる特殊空間が発生した。
こうなった原因としては『2205』での解説において、一個人レベルのエレメントでは惑星規模の再生には不十分だったためと推察されている(後述)。
地球再生後は波動エネルギーの制御デバイスとしての優秀さに目を付けられ、波動実験艦銀河に移設されることになる。
当初は平和利用のためだったが、ガトランティス戦争の勃発に伴って戦線に投入され、土星圏で地球・ガミラス連合艦隊を率いて戦うことになる。
銀河は指揮AIに従い、活性波動共鳴波によって周囲のドレッドノート級の波動防壁を強化して敵の攻撃を防ぎながら前進。さらに量産型波動コアを敵艦隊内にばら撒き、遠隔地からCRSを使って暴走させることで抑制波動共鳴波を発生させ、敵艦隊を行動不能に陥らせた(コントロールを失った敵艦隊はそのまま互いに衝突・誘爆して壊滅)。
最終的にアンドロメダ改の波動砲を強化するために限界稼働を行い、波動共鳴波を使う機能を失った。
宇宙戦艦ヤマト2205(ネタバレ)
本作でイスカンダルの歴史が明らかになるとともに、CRSの本来の用途も明かされた。
以下、ネタバレ注意。
数千年前、イスカンダルは星のエレメントを元に仮想現実を構築する「サンクテル」と呼ばれる設備を作り出し、イスカンダル自身を含む全ての文明を仮想現実に収めて互いの干渉しないようにすることで、争いのない平穏な世界を実現しようとした。
他文明から星のエレメントを収奪する際には波動砲を使って惑星と文明を破壊し、現実世界に戻す際にはCRSを使って再生させた。
つまり本来のCRSは、滅び掛けた惑星を再生する装置などではなく、エレメント化した惑星を現実世界に復活させる装置であった。地球の再生が不完全だったのも、本来は惑星を丸ごとエレメント化して運用する代物だったからではないかとパンフレットでは解説されている。
また、波動砲とは星の「破壊」と「再生」という点で対になる存在ということにもなる。
さらに、ガミラス星もCRSによって生み出された星であることが判明。
ガルマン星から連れてきた奴隷を住まわせるため、ガルマン人の一部をエレメント化し、不毛の星だったイスカンダルの双子星をCRSでガルマン星そっくりの環境に上書きしたのがガミラス星だった。しかし、星そのものではなく知的生命体(ガルマン人)のエレメントを用いたこと、しかも地球と異なり別の星を上書きする形であったことにより、多大な負荷がかかったガミラス星は大きく寿命を縮めることとなった。
なお、ガルマン星そのものをエレメント化しなかった理由については、天の川銀河へ進出した際にガルマン星を橋頭保にするつもりだったためとされている。
ヤマトよ永遠に REBEL3199(ネタバレ)
冒頭では土星修復計画に活用されている。
その後、ヤマトクルーの回収作戦に参加した銀河は、補給母艦アスカがクルーを収容する時間を稼ぐために囮となって敵艦隊を引き付ける役目を担う。
相変わらずCRSの干渉で武装が使えない銀河は波動防壁による体当たりや逃げの戦法などで騙し騙し戦っていたが、やがて限界が来てしまい、敵艦隊はクルーの収容も敵艦への反撃もしない銀河よりもアスカへの攻撃を優先。まともな攻撃手段が無い銀河は離れた場所にいるアスカを援護する手立てがなかった。
副長の神崎恵がCRSをどうにかしようとするが武装の妨害を止めることはできず、物理的に破壊しようとしても拳銃すら使えなくされた。堪忍袋の緒が切れた神崎は、CRSに対して「自分より大切にしたいものが人にはある」「必要なら私の命を上げる」「一発でいい。撃ちなさいコスモリバース!」と言い放つ。すると直後、神崎の目に死んだはずの夫子の姿が入り、子が指をさすとCRSが光り輝き、ショックカノンが発射された。放たれたその一発は敵のプレアデス級を直撃して撃沈。その隙にアスカはワープで地球圏を離脱することに成功する。
しかし、許されたのは本当にその一発だけであり、その後再び武装は使用不能となり、敵の猛攻撃を受けた銀河は月面に不時着することになる。
なお、本作ではグランドリバースというデザリアムの装置が登場しており、CRSと何かしらの関係性があることが匂わされている。
余談
原作のコスモクリーナーDから変更された理由としては、放射能を除去するだけじゃ破壊された地球環境はそのままじゃないかというツッコミへの回答だろうと言われている。
名前に関しても所謂「清浄機」ではないため「クリーナー」ではなくなったのは順当ではある。
また、名前の変更については某宗教が「コスモクリーナー」という名前の空気清浄機を作ってしまったためでは?とも囁かれている。
関連動画
『ヤマトよ永遠に REBEL3199』今日の科学ビギナーズ 第二回「コスモリバースの巻」