表記ゆれ:名誉棄損
名誉毀損罪
ある人に関する事柄を摘示し、その人の名誉を毀損する行為。
ここでは日本の刑法230条に規定される「名誉毀損罪」について解説する。
刑法上の名誉毀損罪は、
の4要件を満たしている場合のみについて成立する。なお、ここでいう「事実」は、「具体的な対象者と行為が特定されている」程度のことを意味し、根も葉もない中傷であっても該当する。またここでいう「人」とは個人(自然人)だけでなく法人や法人格のない団体なども含む。「事実を摘示」していない場合は侮辱罪に問われることがある。
「違法性阻却事由」とは、政治家や有名企業など社会的な影響力が強い人や組織のスキャンダルや不祥事について、真実であると信じるべき相当の根拠があることをいう。
名誉毀損罪は親告罪であり、当人が名誉棄損された事実や行った人物を知ってから半年以内に告訴しないと起訴することができない。
また、同条の2項には「死者に対する名誉毀損は、虚偽の場合にのみ成立する」とあり、これを裏返せば「生きている人(や現存の団体)に対しては、真実を暴露して社会的評価が低下した場合、名誉毀損になることがある」となる。例えば、有名人でもなんでもない一般人に対し私怨を晴らす目的で「AとBは不倫している」などと言いふらした場合、それが真実であっても名誉毀損に問われる恐れがある。「真実であれば何を言ってもいい」ということはないのだ。
名誉毀損(民事)
民法723条(他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。)などで定められた不法行為(民事裁判で損害賠償の対象になりうる行為)。
「名誉毀損で裁判に訴える」という事案は大抵はこの民事上の名誉毀損を指す。刑事上の名誉毀損と違うのは、「事実の摘示」ではなく意見ないし論評であっても社会的評価が低下すれば名誉毀損に問われることがある点、過失による(悪気がない)場合にも名誉毀損が成立することがある点である。
損害賠償(賠償金の支払い)以外の「名誉を回復するのに適当な処分」としては、謝罪広告などがある。
被告が摘示した事実が「客観的に真実」であっても、その人の社会的評価が低下した場合、名誉毀損が認められることがあるのは、刑事上の名誉毀損と同様である。
ただし、週刊誌などが行う政治家や芸能人の不倫報道などに関しては、当人が名誉毀損で訴えたとしても「違法性阻却事由」が考慮され「真実であると信じるべき相当の根拠がある」と裁判所が判断した場合、棄却されることが多い。
刑事名誉毀損とは異なり、死者への民事名誉毀損は、まず認められない(あえて死者の名誉権を認めても実益がないので)。これが成り立つのは死者の社会的評価を低下させることが原告遺族への不利益と直結している場合のみである。
真実性の証明による免責
- 情報が事実であること、情報を発信することで公益があること、その情報が公共的に明らかにされるべきものであること、この3つの条件を満たした場合は該当しない。
- 公務員または公選の公務員の候補者に関する事実に関しては、公益を図る目的に出たものである、ということまでが擬制され、真実性の証明があれば罰せられない根拠:230条の2第3項
いずれの場合も、証明責任は被告人にある(証明責任の転換)