概要
一定の電圧の電流を流す事で相転移する効果を持った特殊金属でできた装甲。通称「PS装甲」。
機能
通電されていない状態(ディアクティブモード)ではモノクロだが、通電しアクティブ状態になるとカラフルに変化。電圧や相転移率に応じて色彩が変化する。このため塗装が不要というメンテナンス上のメリットがある。
アクティブになったPS装甲は表面の位相転移現象によって強度を変化させ、MSサイズの実体剣やレールガン、ミサイルといった物理攻撃による熱を含めた運動エネルギーを光子に相転移させ、無効化してしまう。
熱も分子を励起させる運動の一種であるため大気圏突入時の高温にも耐え、耐久値以下であればビームに対しても通常装甲を凌駕する防御性能を見せる(ビームも荷電粒子を高速射出する物理攻撃の一種であるため、運動エネルギーを持つ)。
装甲はフレームを介した通電プラグによって電力供給され、表面に通電現象が起こっているわけではないため、展開中のPS装甲に人体が触れても感電する事はない。
逆に言えば耐久値を超えたエネルギーは防護できず、MSに標準搭載されるビーム兵器には貫通されてしまう。
強力なレールガンなど、ビーム兵器級の加速率とエネルギーを持つ実体攻撃でも貫通されてしまう。
ジェネシスのように要塞クラスの面積を持つPS装甲なら、陽電子ビームすら防ぐことが可能であるが、反物質に対して干渉を妨げる機構は一切説明がないため矛盾している。
また、被撃による装甲内側への衝撃伝達までは一切相殺しないため、必ずしもパイロットが無事とは限らない。
特筆すべき弱点として、アクティブ状態中は常に装甲表面の位相を変化させているため、稼働時間に比例した電力を消耗、最終的に電池切れに陥る。(ごく一部を覗いてCEのMSはバッテリーで稼働しているため)
外からのエネルギーを受けるために相転移が発生するため、被弾時はさらに電力消費が発生する。
エネルギーが切れると装甲がディアクティブモードに戻ってしまう「フェイズシフトダウン」を起こし、機体の稼働すらままならなくなる。加えて装甲色がメタリックグレーに戻ってしまうため、敵にもエネルギー切れを知られてしまう。
また、防御可能なのはあくまで装甲で覆われている箇所であり、関節部、推進器、カメラなどの装甲で覆えない箇所には実体兵器でも問題なく攻撃が通るため、全く穴がないわけではない(ただし、穴をピンポイントで狙うには相応の技量が必要だが)。関節部についてはストライクフリーダムガンダムのようにフレームもフェイズシフト装甲製とすることで克服している例もあるが、こちらは防御以上にフレーム剛性の強化によるパイロットの操縦技術への適応を目的としている。
シールドに使うことも可能ではあるが、摩耗などの問題により対ビームコーティングと併用が難しいこと、何より機体そのものが実体攻撃を防ぐため、シールドを対ビーム兵器用に特化させた方がメリットがあるためシールドへの採用は少ない。
なお、PS装甲に対ビームコーティングを併用した例としてはC.E.73に開発されたアビスガンダムが存在する。こちらは水中での運用を前提とした特例と言えよう。
余談だが、アスランとカガリが遭難したTV版の回で、イージスガンダムのシールドもシフトダウンしたグレー色になる作画ミスがあった。
諸勢力での実用化
兼ねてより理論は存在した技術であったが、宇宙船の甲板を製造するアドヴァンス・スペース・ダイナミック社のもと大西洋連邦の技術仕官マリュー・ラミアスが実装に漕ぎ付ける。無重力下でしか製造できない特殊合金技術を拠り所とし、ヘリオポリスにて開発された初期GAT-Xに採用された。
これらのGAT-Xを鹵獲したザフトでも解析され、以後は同軍のガンダムタイプ等にも実用化されていく事となる。
GAT-X開発に携わったオーブ連合首長国では、開発ライセンスの問題から同技術は秘匿されていたが、後に領土近辺で大破したストライクを改修する事で解析に成功した。ストライクのデッドコピーであるストライクルージュでは「パワーエクステンダー」による電力容量が増大した事と、試験的に搭載されたAIが制御系に介入したことで、戦闘に不慣れなカガリのために防御力が高めの赤系統に再調整されている。この時の技術は後に各勢力に流出し、ヴァリアブルフェイズシフト装甲へ発展する。
発展系
トランスフェイズ装甲
フェイズシフト装甲の改良型。主に後期GAT-Xのガンダムに使用されている。
通常装甲の内側にPS装甲を備えた二重構造とし、通常装甲内のセンサーが衝撃を感知した時にPS装甲に通電することで、被弾時のみフェイズシフトするようになっている。
これにより、欠点だったエネルギー消費を大幅に軽減することに成功し、余剰電力を潤沢に兵装に回せるようになった。
詳細は該当記事を参照。
ヴァリアブルフェイズシフト装甲
フェイズシフト装甲の改良型。主にインパルスガンダムをはじめとするザフト製のガンダムやストライクEに使用されている。
ストライクルージュ開発の折に発生した通電率と装甲強度の変化率を参照し、装甲に流す電流の量を装備や状況に応じて調整、装甲へのエネルギー配分を最適化しエネルギー消費を更に抑える事が可能となった。
詳細は該当記事を参照。
余談
元々は「ガンダムSEED」一作目に登場するガンダムを最強の存在にするよう作られた設定とのこと。番組初期には携行型ビームライフルを装備する機動兵器はガンダムくらいしかいなかった(戦艦用の収束火線砲やD装備のバルルス改もあるが、サイズが大きい)ので、Nジャマー下のドッグファイトでガンダムを倒せるのはガンダムだけという構図になるとのこと。
ちなみにそのカラーチェンジ要素は多分に制作局が同じ「平成ウルトラマンシリーズ」の影響を受けたんだそうな。
ガンダムが登場するシミュレーションゲーム(Gジェネやスパロボなど)では機体の特殊能力として扱われ、実弾ダメージをエネルギーと引き換えに軽減する効果で再現されることが多い。
逆にアクションゲーム(ガンダムVSシリーズなど)では設定がゲームバランスの都合で再現できないため、敗北時や撃墜時に装甲色が変わるという演出のみにとどまっている。