作品概要
大量の火薬を用いたド派手な爆発やフィルムの早回しによる高速演出、そして機体の外観と名称が異なるなどという細かい事は全く気にしない、80年代テイストにあふれた痛快活劇である。同時代の戦闘メカ系海外TVドラマとして、「ナイトライダー」と双璧を成すコンテンツであった。
物語の主役となる「エアーウルフ」は
・機関砲弾に耐える(というかキズ一つ付かない)防弾装甲のボディ
・12.7mm機銃4門に30mm機関砲2門、3連装ミサイルランチャー(再装填可能で携行弾数は24発!)という驚異の重武装
・「超音速ヘリ」の名の通り、マッハ1プラスの最高速度
という無茶苦茶な性能を誇る戦闘ヘリであり、ひとたびメインテーマが流れエアーウルフが戦い始めると、大抵はほぼ一方的に敵を血祭りにあげていた。
屠った対象はヘリはもちろん、天敵のはずの戦闘機も軽々と撃墜し、対地攻撃もお手の物、敵に奪われた際は米軍の駆逐艦を撃沈したこともある。
そのため本作で一番恐れられていたのはエアーウルフが敵に撃墜、破壊されることではなく、エアーウルフが奪われて敵の手にわたることである。
ヘリコプターとしては前代未聞のマッハ1超というスピードは、劇中設定でもヘリのローターではなく両翼の根元に埋め込まれているターボジェットエンジンに点火する事で実現しており、ターボ使用と同時に駆動系が切り替わり、超音速飛行中はジェットエンジンと小翼で飛行、メインローターは空転させているという設定である。
なお、劇中ではあまり触れられないが、北米大陸から海を越えて気軽に中東に行けてしまう(しかも道中は戦闘行動を含む)ヘリコプターにあるまじき航続距離を備えており、重武装やマッハ1の速度よりもよほどこちらの方がぶっ飛んでいるかもしれない。
スタッフ
原作スタッフ
企画 - ドナルド・P・ベリサリオ
製作総指揮 - ドナルド・P・ベリサリオ(シーズン1・2)、バーナード・L・コワルスキー(シーズン3)
撮影 - ハワード・シュワルツ
音楽 - シルヴェスター・リーヴァイ
エアーウルフのデザイン - アンドリュー・プロバート
制作 - ベリサリウス・プロダクション、ユニバーサルTV
日本語スタッフ
日本語版製作 - 東北新社
翻訳 - 木原たけし、佐藤一公
演出 - 伊達康将
調整 - 小野敦志
プロデューサー - 清水篤
ストーリー
中央情報局(CIA)の秘密作戦遂行のために、「悪魔的天才」とも揶揄される科学者チャールズ・ヘンリー・モフェットによって10億ドルの費用と20年の歳月をかけ開発された“マッハ1・プラス・アタック・ヘリコプター”「エアーウルフ」。軍関係者や連邦議会議員を招いて行なわれた実弾射撃を含む展示飛行の最中、招待者の一人である議員に働きを正当に評価されていないと思い込んだ当のモフェット自身がエアーウルフで招待者たちを攻撃。モフェットはそのままエアーウルフを持ち去り、リビアへ逃亡した。
開発計画の責任者で、先の事件でエアーウルフの銃弾を浴び、左目失明・左足不随の大ケガをしたCIA特別作戦部長マイケル・コールドスミス・ブリッグス3世(コードネーム「アークエンジェル」大天使の意)は、敏腕パイロットで、今は山荘で暮らすストリングフェロー・ホークにエアーウルフの奪還を要請。ホークは友人のドミニク・サンティーニと共に、北アフリカの「カダフィ大佐 夏の館」に潜入、モフェットと対決し、エアーウルフの奪還に成功する。しかし、今度はホークが中央情報局への機体の返還を拒否。
人知れぬ土地(ネバダ砂漠の「神の谷」と呼ばれる地域)にエアーウルフを隠匿してしまう。
ホークは「エアーウルフを返してほしければ、ベトナム戦争で未帰還兵となった、兄のセント・ジョンの生死を確認し回答せよ」と政府に要求。ここでアークエンジェルは機転をきかせ、「政府のホークへの逮捕に関する情報をホークに教えること」や「CIAの情報網でジョンを探す」、代わりに「CIAの作戦にエアーウルフを使わせ秘密要員として参加する(経費はもちろん政府持ち)」取引をホークに持ちかけ承諾を取り付ける。
これをきっかけにホークはエアーウルフを使い、世界の各地でさまざまな事件を解決していく。
主な登場人物
ストリングフェロー・ホーク(演:ジャン=マイケル・ヴィンセント、吹替:磯部勉)
34歳。ベトナム帰りの敏腕ヘリコプター操縦士。ベトナムでヘリボーンの際に、負傷兵救出のため入れ替わりに解放戦線の捕虜になった兄のセント・ジョンをCIAの情報網で探すことを条件に、CIA特別作戦部の私的エージェントとしてエアーウルフを駆る。格闘のセンスにも優れ、特にキック技が得意なようである。
表向きの職業はドミニクの経営する「サンティーニ航空」のヘリ操縦士。普段は湖畔に面した山荘で愛犬のテットと暮らしている。山荘には祖父が集めたという絵画のコレクションが飾られている。屋外でチェロを弾くことが趣味。兄セント・ジョンの名は使徒ヨハネにあやかったものであることが『新エアーウルフ 復讐編』の劇中でセント・ジョン本人によって語られている。
12歳の時に両親をボート事故で、出征直前に恋人を自動車事故で亡くしている。さらに戦友たる兄とも生き別れとなったため、自分にとって大切な人達に不幸が及ぶのを嫌がるあまり、敢えて孤独を求めるかのような生活をしている。
ドミニク・サンティーニ(演:アーネスト・ボーグナイン、吹替:富田耕生)
ヘリコプターを使う中小運送業、サンティーニ航空の経営者。ホークの父親とは戦友であり、またホークの親代わりで心を許せる親友でもある。陽気で話し好きな性格であり、どちらかと言えば寡黙で内向的なホークを公私共に支え続ける。
エアーウルフの副操縦士ではあるが、エアーウルフの操縦をすることはほとんどなく、外部からの支援を殆ど受けられないエアーウルフの後席で航空機関士や兵装オペレーターとしてホークの補佐を務める。
その他
撮影用機体
エアーウルフ役となった原形機はベル222で、ヘリコプターでは多い固定式スキッド(そり)ではなく、いかにも高速を思わせる収納式の車輪を備えるオプションタイプを使用している。
元のベル222は流線形ではあるが軍用ではなく一般向けの貨客ヘリであり、後部は通常の客席となっている。そのためエアインテークを模したパーツで後部の窓を塞ぎ、民間のヘリっぽさをうまく消してある。
主脚を格納する小翼部分にはジェットエンジンのノズルや格納式の武装等を模した撮影用プロップパーツが取り付けられた。
撮影に使われたオリジナルの機体は撮影終了後に全米各地の航空ショー等で人気を博した後に、撮影用プロップ部分を取り外して元のベル222となり、ドイツの航空会社に売却された。その後救急ヘリとして従事していたが、1992年に救急任務中に悪天候で失われている。
オリジナルの機体は失われてしまったが、取り外された撮影用プロップは今もなお現存している模様で、後に別のベル222に取り付けられ、現在まで博物館やコレクターの間を転々としている。
商品化
放映当時は米AMT社より1/48スケールで、2010年代にアオシマより同じく1/48スケールでプラモデルキットが発売されている。
AMT社のキットは「自社製のベル222のキットにエアーウルフのプロップ部分を足したもの」であり、ある意味本物と同じ改造経緯を味わえるものでもあったが、古い米国製キットということもあり完成には多少腕が必要であった。
アオシマ版は2010年代のエアーウルフ専用の完全新金型であり、部品点数は多いものの割とストレス無く組めるキットである。
人気のキャラものヘリコプターということもあり、ラジコンではボディのみキットという形で数多くモデル化されている。安価なホビーラジコンでもエアーウルフとは言ってないが、明らかにモデルにした商品は多々存在する。