概要
ベル・クラネルとアイズ・ヴァレンシュタインのカップリング。
ベルはアイズに迷宮(ダンジョン)で助けられて一目惚れしており、以後彼女の英雄になりたいと願い、その想いはスキルにまで影響を及ぼした。ベルはアイズの背中を追って凄まじいスピードで成長していく。
ベルに対しては、自分のファミリアの不手際で危険に晒してしまったことから、謝るタイミングを探していたが、何かと逃げられている(後にその機会は得られた)。
彼の急激な成長速度にも目を付けており、自身の成長の壁を越えられる切っ掛けが得られるのではと言う理由でベルの臨時コーチを請け負った(結果としてベルは更に成長し、ステイタスの奥深さを学ぶことになる)。
因みに外伝では特訓で疲れ切った彼を癒してあげたいと言う一心で(というか自分がベルの髪をモフモフして癒されたい)、ベルを気絶させてから膝枕に興じている。
アイズは遠征中にミノタウロスを奇跡的に撃破したベルを目の当たりにし、その時のベルのステイタスがオールSであり、さらにステイタスの一つが限界突破であるSSだったことを知って驚愕する。以後、限界突破を成し得たベルを密かに目標としている。
その後も安全エリアでベルを連れまわしたり、アポロン主催の『神の宴』では彼のダンスの申し入れを受け入れて一緒に踊るなど、【ロキ・ファミリア】の中でも好意的に接している。
一方でモンスターに対する敵意は強く、ウィーネを守ろうとするベルに対して容赦なく剣を向けたことも(結局は見逃した)。
CD版の女子会ではヘスティアに「今まで出会えて良かった人は?」と訊かれて、アイズは無意識のうちに「ベル」と答えていたり、徐々にその関係は進展している。
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以下、ソード・オラトリア12巻のネタバレ
『人造迷宮クノッソス』へ侵攻した【ヘスティア・ファミリア】。
そんな中、アイズはレヴィスと決着の戦いを続けていた。
アイズのスキル【復讐姫(アヴェンジャー)】によって生まれた黒い風で応戦するも、しかしレヴィスの力は強力でアイズに苦戦を強いる。
――力を!
――もっと力を!
貪欲に力を求め続け、黒い力に身体が呑み込まれそうになるアイズに、響いたのは――、
ゴォン、ゴォォン――――。
大鐘楼の音色。
誰も彼もが唖然とし、そして『彼』を知っている冒険者は誰がこの鐘を鳴らしているのか、瞬時に気付いた。
――ベル!
冒険者はこの『勝利の鐘』に続き、比喩でも誇張でもなく皆が己を奮い立たせて立ち上がった。
それは、一人決戦に興じていたアイズとて例外ではない。
思い出す。彼と戦ったあの日を。
思い出す。ひたすらに前へ進み少年の『白』を。
思い出す。少年の瞳に映った自分の微笑みを。
やがて『黒』は、『白』へと変わっていく。
そしてアイズは、躊躇なくその風の名を呼んだ。
「【白き風よ(テンペスト)】!」
彼と共に放たれる、純白の一閃。
同時に、ベルの『英雄の一撃』が放たれ、『第七の精霊』が消滅する。
そして、アイズの『決着の一撃』がレヴィスへと吸い込まれていく。
「アリアァアアアアアアアアアアアアアアア!?」
嬌声を上げながら、白き一閃を受けたレヴィスは灰と化し、消えていった。
ここに、二つの戦いが終結した。
全てが終わった後。
アイズはベルの元へ向かっていた。皆が事後処理へと明け暮れて右往左往する中、壁に寄り掛かって熟睡しているベルを発見した。年相応の寝顔に微笑しつつ、隣へ腰掛ける。
「ベル……。助けて、くれたんだね」
聞こえる筈のない感謝を耳元で囁く。
自然と顔が柔らかな笑みに変わっていく。
「君のおかげで……、勝てたよ」
あの鐘の音があったからアイズはレヴィスに勝てた。もしそれがなかったら、アイズはここに居なかったかもしれない。
心が透明になった。胸の内が洗われた。黒い炎が姿を消した。
『白い自分』が少しだけ取り戻せた。
「君の声が……、聞こえたよ」
やがてベルの頭がずれ、アイズの肩へと落ちる。その重みと温もりが今は心地よい。
アイズもまた、最後の力が抜けて少年に寄り掛かった。
「ありがとう、ベル」
少年と少女は、折り重なって安らかな眠りへついた。
再び、少女は少年の剣を握る。
以下、本編17巻のネタバレ
美の神・フレイヤがベルを手に入れるべくオラリオ中の人・神に『魅了』を施し、「ベル・クラネルはフレイヤの眷族」と記憶を改竄した。
ベルは築き上げた仲間との絆と思い出の半年を奪われ、仲間達や親交のあった人々から他人行儀され、拒絶され、敵意を向けられてしまう。
フレイヤが造り上げた『箱庭』に囚われたベルは心身ともに傷つき、絶望と諦観、フレイヤの甘言により徐々に追い込まれ、『憧憬』も失われつつあった。
だが、ミア・グランドの言葉を受けたベルは、最後の希望である『憧憬(アイズ)』の元へ辿り着き、彼女に問い掛ける。
「アイズさん……僕を知っていますか?」
「今日まであったことを、覚えていますか!?」
ベルは幾度も仲間達、親交のあった人々、神達にも尋ね、そして拒絶された言葉。
アイズとともにいたヒリュテ姉妹から敵意を向けられ、二人はアイズを連れて去ろうとした。
最後の希望が断たれ、ベルの横を通り抜けようとした瞬間、アイズはベルを手を取った。
その行動にベルとヒリュテ姉妹が狼狽える中、アイズは口を開く。
「訓練、する?」
その言葉に唖然とするベルとヒリュテ姉妹。だが、アイズはベルをまっすぐ見つめ続ける。
「私は、君を、いっぱい気絶させて……」
「そうしたら、膝枕をして……」
「起きたら、また倒して……」
戸惑うヒリュテ姉妹を他所に、淡々と言葉を続けるアイズ。
「あの『市壁の上』で、君と戦わないといけない気がする」
「君に教えて、私も教わらないと、いけない気がする」
そして、最後にアイズは言う。
「誰かと約束して……強くなりたいって……そう、言われた気がする」
それは、好敵手に敗れ、『ベル・クラネル』が『アイズ・ヴァレンシュタイン』の前で誓った、決意と約束の言葉。
その言葉にベルは膝を崩し、涙を流した。
記憶が改竄され、記憶にないはずの思い出。だが、彼女は失わなかった。
少年(ベル)と築き上げた大切な思い出を。
アイズがもたらした奇跡が、失われつつあった軌跡を確信へと変えた。
「貴方に憧れて……良かった」
「貴方との出会いは、間違いなんかじゃない」
絶望から救ってくれた少年を、今度は彼女が救ったのである。
「行きます」
風前の灯が燃え上がる聖火へと変貌し、立ち上がった『【炉神の眷族(ヘスティア・ファミリア)】のベル・クラネル』は再び走り出した。