姫国山海録とは、序文に1762年(宝暦12年)5月と記述されていることから、その頃に「南谷先生(なんこくせんせい)」という詳細不明の人物が描いたとされる、「山川に見るところの異物」を記録した肉筆本。
概要
書名の「姫国」とは日本を表す漢語の一つ。
古代中国の地理書『山海経』を模して江戸時代に書かれたとされる書物で、著者である南谷先生が、ある人物が30年にわたり記録していた(延享年間から宝暦年間(1744~1764年)のもの)日本各地に出現した異物の中でも、虚誕と思われるものを省いてまとめたものであるとされる。
全部で25編の異物について、彩色された図画と漢文で解説がなされており、この手の書物の中でも虫とされる怪異(古代中国で虫とされる蛇などの爬虫類だけではない)の割合が多い。
松前の海鬼や秋田の鬼子(孫右衛門の産子)以外は、他の書物では見られない独自のもののようで、現在原本は「東北大学附属図書館(狩野文庫)」が所蔵しており、モチーフにしたグッズが販売されている。
余談
上記の「孫右衛門の産子」と「広島伝馬町の怪物」の2点は産怪と呼ばれる出産に関する異物の記録であることから、2002年に出版された『百鬼繚乱 江戸怪談・妖怪絵本集成』(国書刊行会)に同書が収録された際に、人権擁護の観点から削除されていたが、その後の企画展では公開されている。
一覧
一部の異物以外は特に名はついておらず、公開時に紹介者などにより暫定的に命名されたものである。
- 孫右衛門の産子
- 信濃青沼の怪虫
- 建長寺の虫
- 松前の海鬼
- 永宝寺の虫
- 安藤家の怪虫
- 加賀の魚(人魚/ぐず?)
- 丹波笹山の虫
- お茶の水の怪物(吹水)
- 天毒虫
- 鞍馬山の虫(石蟲)
- 津軽の生き物/津軽海辺の怪虫(粟喰虫/食粟穂)
- 下総の妖虫
- 土屋家の蛇
- 二頭虫
- 筑後深沢村の怪物(雉喰い)
- 豆腐を食う虫
- 筑前の怪虫
- 深川の妖虫
- 霊蝶虫
- 津田家の怪虫
- 大蛭(コウガイビル?)
- 広島伝馬町の怪物
- 赤い亀のような生き物 ※名称不明
- 蛇を喰う蝦蟇のような生き物 ※名称不明