CV:井上麻里奈
概要
第12話より一瞬だけ登場した、敵対勢力テオティのひとり。『継承者』と呼ばれるカンナギとは双子の実姉で、謂わば『王の娘』に当たる。
不気味な仮面に被われた水色の肌と青白いグラデーションのロングヘアーに加え、臍周りや左脚の紋様に露出が際どい巫女服が特徴。ソウギョクからは「様」呼びされており、最前線に立つ事は無く、幹部達の前にだけ姿を表す。
呪術的な超能力でアブトの声を出せなくさせ、強制的にダークシンカリオンでシンカリオンZと対決させる。また、独房の彼の目前では仮面を外して素顔を見せたが…
一方OPでシルエットではあるものの既に登場していた。
名前は「星の乙女」を意味するギリシャ神話に登場する女神の一人、アストレアからか。
中途半端な立ち位置による彼女の受難
…だが、ヴァルトムみたいに積極的に前線に出る様なタイプでは無いのが仇となったのか、(仮にネタバレを加味してその要素を差し引いても)書ける事があるとすればこれくらいである。そこそこ活躍している割に意外と印象が薄いのである。
それこそ毎週欠かさず視聴している様な熱心なファンですら「なんとなく見た気もするが名前が思い出せない」くらいに印象が薄く、たまにしか見ない視聴者に至っては「アストレアが誰かも分からず返答に困る」くらい認知度にバラツキがあると言っても過言では無い。
あまりの出番の無さに「もしテオティを『バンドの体をしたパフォーマンス集団』に例えたら『顔を白く塗ってドラムが置いてある場所で踊りながら、ただiPodを再生するだけのクソガキでもできる簡単なポジション』にいそう」などと(この手の敵組織に給与体系があるかどうかは別にしても)大して働いてない(様に見える)という比喩で「昼行灯」「給料泥棒」と罵倒したり、(中の人が同じである)別作品の敵幹部を引き合いに出した上で「敵ながらアイツの方がよっぽど働いている」などと評価する者もいる(ちなみにヴァルトムも「中の人が別作品の敵幹部」という共通点もあるが、彼の場合は「前世が青い戦隊ヒーローに変身する人」でもあったので、その分のオーラも関係しているのだろうか?)など、総じて扱いが悪い。
さらにテオティの民の大多数が争いを望んでいない事から「王族が(地球侵攻しか眼中にない)脳筋なんて最悪」「トコナミやセツラのおかけでテオティに対する認識を改めかけたのに水泡に帰された」などと悪評は絶えない。
つまり「(個人差も含めた)外的要因を差し引いても視聴者達に『爪跡』を残せない」上に「そもそも何をやっているのかが分からない」という成果も見えない様では、悪い印象ばかりが目立ってしまい、好感度もへったくれも無い。敵幹部でこの体たらくでは駄目なのである。
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【注意!】第30話以降のネタバレが含まれます。
第30話以降の展開
第30話にて大方の予想通り、明星アケノと同一人物である事が判明した(正体発覚前から同一人物だと訝る人もいたのだが、一方で「出番が少ないから兼任」だの「偽名ではなく実在する『明星アケノ』の姿を借りており、作中に出てないだけで『本物のアケノ』は別にいる」だの様々な考察がなされていた)。
加えて、井上氏が「悪女」とされるヒロイン達を演じる機会が多い事もあり、後述する作中での発言から「大した活躍をしてない割に出しゃばる奴」「他の『井上麻里奈キャラ』と比較しても共感出来そうな面がこれっぽっちも無い」「コイツだけは倒されて欲しい」などと、(アケノも含めて)彼女の素行を知る視聴者達からはあのギンガと同等かそれ以上に辛辣な評価を下されている。
その後の第31話ではアケノの姿で新多アユを唆して超進化研究所に侵入したはいいが、既に(前回目の前で正体をバラした)細川の根回しにより、カスミ達どころか、唆したはずのアユにまで自身の正体を知られていた事を彼女の口から知らされ罵倒された。
そもそも「舌の音も乾かない内に『既に身バレしている敵の本陣に潜り込む』という愚行」をしでかすのはリスクがあまりにも高過ぎであり、事の次第では「攻め行ったつもりが返り討ちに遭って深手を負う」のも十分想定し得る。仮に彼女に逃げ果せる自信はあったとしても、この時逃げ果せたのは単に悪運が強かったに過ぎない。
仮に「正体がバレるのが時間の問題」だとしても、下手に正体を明かさずさっさとセツラを連れ帰れば済んだ話であり、たまたま正体を明かした相手が細川であったために「アケノに恋愛感情を抱いていた細川が、半ば失恋しヤケになり根回しをして正体バレ」と表現しても差し支えなく彼女には弁明の余地が無い。
そもそも相手が細川であろうとなかろうと、少なくとも「人前で長々と自身の正体を明かす」のは愚策以外の何物でも無い。ろくに前線に出ない彼女には戦略眼というものは無いのだろうか…?
その後はというと、特筆するほどのめぼしい事が無くこのまま終わる…訳もなく、次に大きな動きを見せたのは第39話の事であった。
突如現れた謎の流動体によってカンナギが地下に飲み込まれてしまい、彼女は車を走らせて彼の元へと向かうも、ブラックストーンの力によりカンナギは暴走。もはや彼女だけで事態が収拾出来る状態ではなかった(おいこらそこ「そんなスキルなんて最初から無いだろ」とか言うんじゃない)。
そこで彼女はあれだけ敵対視していたアブトに対し「カンナギを…弟を助けて…」と泣きながら懇願、そこでようやくシンも「アストレアとカンナギも立場は違えど、自分と同じ境遇」である事を知ったのであった。
影が薄いアストレア
この様に終盤でようやく見せ場らしい見せ場があったとはいえ、「世を忍ぶ仮の姿」であるアケノとして暗躍していた時期も含め、視聴者達からはこれといった見せ場が思い出せないほど「影が薄い」と認識されている。
アケノの項目でも若干述べたが、「(視聴者側が分かる様な)成果が見えないと『アケノに変装してサボってる』様にしか見えない」などと組織内における彼女の貢献度に疑問符を抱く者は少なくない。
現時点で見る限り「何度もシン達と接触してる割には最終的には(表立って目に見える様な)めぼしい収穫は無い」とまで揶揄されているほどである。
まぁシン達としては、仮にアケノがテオティであろうがなかろうが「部外者」である事には変わりないため、作中での「不用意に『シンカリオンに関する情報』を第三者に漏洩しない様に行動していた」という点自体はあながち不自然でもない(むしろアケノがテオティでなかったとしても、彼女の「一連の行為の正当性」を証明する事にはならず、疑念を抱かれても仕方ないのは言うまでもない)。
そのため、第30話での発言を「さも『自分の手柄』の如く話していた」と解し「ダークシンカリオンが覚醒したのもアブトのおかげ」「やった事があるとすれば、とりあえずセツラを連れて帰っただけ」と罵倒し、あるいは、最終的に(アケノとは「他人の空似」だと信じていた)視聴者達を踏み躙り、失意のどん底へと突き落としたのであった。
第35話での描写から「アケノに化けたのは、自ら建造を指示したダークシンカリオンのデータ収集のためなのでは?」と考察するファンもいたが、彼女はあくまでも「建造を指示した」だけで自らが「シンカリオンのデータを収集する」にしても「フィードバックさせるデータもろくに集まらない」ため彼女の貢献度は限りなく低いし、その割にあれだけ強いのだとすれば「アストレアがわざわざ介入してまでデータ収集をする必要すら無い」という見方すら出来てしまう。
そうなると「単に『出番が少ない』だけならアユや他の地域在住の運転士達はどうなのか?」とツッコまれそうな気もするが、そもそもアユは主人公の家族とはいえ紛れも無い一般人(むしろ前作のおもいっきり「シンカリオンの関係者」である父と前作の主人公にして「成り行きとはいえシンカリオンの運転士になった」息子が例外と言えるくらいである)である。
他の比較的が出番少ない運転士達に関しても、(初登場時に賛否両論だった嵐山ギンガは例外とはいえ)少なくともアストレアよりはキャラが濃い面々である。というか、スポンサー的には本来「売るべきもの」はシンカリオンであり、コイツばかりが出しゃばるのもどうかとは思うが。
「脚本の被害者」疑惑
現時点では「彼女の暗躍がどれだけフィードバックされているのか」と判断するには描写が足りず、半ば憶測の域も出ていないのもまた事実である。好意的に解釈すれば「隠密性は極めて高かった」と評価する事も出来なくは無いのだが…
そのため、あまりの存在感の薄さに「(自身が演じた役柄だからあまり悪くは言えないだろうが)中の人本人にすら『影が薄い』と言われたら終わり」などと、何らのインタビューで「井上氏本人が『影が薄い』という御墨付きを与えるのではないか」と危惧する者もいるくらいである。
一応、「明星アケノとして暗躍している場面」も加味すれば、シン達とは度々遭遇している事にはなるため、これを踏まえると逆説的に「実は『第1話』から出てました」という事になるし、前述した「幹部達の前にだけ姿を表す」というくだりも「滅多に姿を見せない」というよりは普段は明星アケノとして潜伏しているため「必然的に幹部達の前に姿を現せる機会が少ない」とすれば、一応の辻褄が合う。
とはいえ、第39話での一件もあり、「アストレアって『姉属性』だったのか…」などと今更ながら知った視聴者もいれば、アブトへの懇願を「お前今更人に何か頼める立場だと思ってんのか?」と彼女の行為に不快感を示す視聴者もおり、少なからず彼女に対する認識が改まったという感じではある様だ。
しかし、実際のところ、第39話からの展開がものすごく唐突なのである。
本当に唐突なのだ。
伏線を張っているならまだしも、何の伏線も無くいきなり終盤で「地球侵攻より弟の救出」というスタンスに転じたのだから。
そもそも、第39話の時点で「アストレアの口から『地球侵攻を断念する』という発言は一切無かった」し、弟暴走のゴタゴタを経ていつの間にか「他の星を探す」というスタンスへと何の説明も無く変わっていた。
何なら「彼女の心境が一時的に『弟であるカンナギを想う気持ち』が『地球侵攻』という気持ちを上回っただけで改心そのものはしていない」と評ずる事すら出来てしまう。
これに関しては「第31話でのアユとの一件が少なからず影響を与えているのでは?」と考察する向き(アユが自身と同じ「姉属性」に加え、彼女からの罵倒が「自身が意図しないまま」心境の変化をもたらした)もある。
なお、ファンイベントで監督が「当初のプランでは『アブトがテオティに入る時期』はもう少し遅めだった」という趣旨の発言をしており、それが「何らかの理由」で破綻してしまい、これに付随してアストレア(というより「テオティ」全体の?)の背景描写が有耶無耶になったとする説が濃厚になった。
とはいえ、(結果として「1年放送で『3クール強』の稼働率」とはいえ)番組開始当初から「全41話構想」で固まっていたのも事実(放送直前の「てれびくん」にて、放映予定が記されたカレンダーが付録となっていた)で、その「詳しい事情」は語られなかったがその一方で「何としても『アブトがシン達の元へと帰還し再び共闘』という縦軸を優先したがために、それ以外をオミットせざるを得なかった」ともとれる発言もしており、消化不良感は否めなかったのも窺える。
一方で前作の終盤を踏まえて「シンカリオンの脚本家達ですら、あれ(放送時の内容に収める)が限度だった」と「不自然さは残るとはいえ、まあまあの落とし所で終わらせた」脚本家達を労ったり「(近年の「平成ライダー」シリーズみたいに)3クール前提で『本編39話+後日談』の方がまだスムーズに行けたかもしれない」「1年を通じて『デカ盛りハンター』の雨傘番組扱いしたテレ東は許せない」と完全に怒りの矛先をテレ東に向けるなど、良くも悪くも「騒がれた1年間」であった。
第31話以降からは徐々に改善されていた(印象に残るとは言っていない)とはいえ、今後のエピソードで「彼女の真意」が見える事はあるのかと期待されていただけに、尻切れトンボで終わってしまった点だけは、彼女も「脚本の被害者」の一人なのかもしれない。