概要
もともとは、漢文でレ点などを無視して並びの順に読む、という意味の言葉。しかし、現在では台詞を感情や抑揚をつけることなく読むことを指すことが多い。
文字で表す場合には、(半角)カタカナで表記される事が多い。
感情がこもっていない、ということから、本心というよりは建前、他者に言わされている感が強くなるため、日常の会話で棒読みが多い人はコミュニケーションを取るうえで苦手とされやすい。
但しアニメなどではキャラクターの性格(無口、クールなど)によっては、この棒読みがキャラクターの個性として敢えて用いられることもあり、有名どころでいえば綾波レイ、長門有希などが挙げられる。綾波については、担当声優の林原めぐみが「感情がないわけではなく、感情を知らない」ことを表現するため棒読みに近い平坦な話し方の演技をしたことを言及している。
また、本項目のメイン画像に設定されているエイラも棒読み風のぶっきらぼうな話し方であるが、演出としての意図があってあのような演技になったことを担当声優の大橋歩夕が明かしている。
この場合はキャラクターやその声優の魅力の1つとして数えられる。
一方で、俳優(特にセリフでの演技を主体とする声優)では普通はありえないことだが、俳優としての経験がない、あるいは浅い(もしくは、経験は長くても演技力に難がある)人が演技をした時、台詞が棒読みになってしまうことは少なくない。→大根役者
例えば緊張や自信のなさ、セリフを覚えることに必死になって演技としての解釈が浅いことなどが原因として挙げられる。また、アニメや映画吹き替えといったアフレコの現場ではマイクの使い方や立ち位置、抑揚の付け方など独特のルールがあるため、普段テレビや映画などで活動している人でもそれらに適応できず実力を発揮しきれないこともある。
この場合、大体は演技が下手といわれ、マイナスの印象を与えることになる。
しかし、(滑舌の悪さも相まっている要因もあるが)ナイトハルトのようにネタキャラとして愛される存在になったという例もある。
そして所謂「棒読みキャラの中の人」の名誉のために言うが、俳優・声優の声には普段の数倍の大きさ・聞き取りやすさが求められるため、「慣れない内は棒読みになる」のは自然なことである。
当たり前であるが、小さな声をマイクは拾ってくれないし、例え大きかったとしても滑舌がよくなかったり標準以上の速さで喋ったりすれば「お客(視聴者)が聞き取れない」と現場の責任者からダメ出しを喰らい、ゆっくりにしすぎても間延びして掛け合いが成立しなくなってしまう。
また、アフレコの場合は「画面の向こうのキャラクターの動きや表情、その時の状況に合わせて声をつくり、掛け合いしていく」作業が必要となり、顔出しでの演技であれば「セリフと共に動きながら表情を作り込み、相手役や周りの俳優の動きに合わせる」作業が必要となる。単に自分に割り当てられたセリフだけを、自分の好きなタイミングで話すだけでは演技が成り立たない。
そして以上のような問題点を回避しようとしてやたらと声を大きく、はっきりと発した結果、肝心の演技がおろそかになって棒読みになってしまう、というのは、役者であれば誰でも通る道であろう。
「その人の能力を問わず、不慣れな仕事であれば誰でも棒読みになりうる」ことを覚えておいていただきたい。ある作品で棒読みが出た時、その責任が役者本人だけでなく、不慣れな仕事をその人にあてがった作品側のスタッフにもあるという場合もありうるのだ。
これらは結果的に、「棒読みが作品の個性」と認知され、他に棒読みの俳優が多い作品をネタにするようなファンもいる。
ちなみに、アニメ『氷菓』第8話では自主製作映画が物語の主題のひとつになってることもあって、実力があるプロの声優の棒読み演技が見られるので、興味のある方はぜひ。
ネット上で有名な棒読み
- 「アナタガタガ,ピクシーノナカマダトハゾンジマセンデシタ」
- 「ヘイカ,アレハオソロシイマジュウデゲス」
- 「ス,スバラシー,コレコソサイコウケッサクダー」
- 「ヤッパリアリスガツクルブラウニーハウマイナー」
- 「ハイ,ヨーイスタート」
ネットスラング
ネット上では(棒読み)または(棒)と語尾につけることで嘲笑的な意味合いで文章を打つことがある。
同じ文章でもこれらの語尾が付くのと付かないのとでは意味合いが大きく変わってくる。
多くの場合はネタとして用いられわざとらしさを醸し出しているといえる。
例1
- 私って可愛いよね?→うん、可愛いね
- 私って可愛いよね?→うん、可愛いね(棒)
前者の場合は(本心はどうであれ)可愛いという問いかけに対しては肯定的な返答をしているが、後者の場合は最後に(棒)とつけることで、事実上否定していることになるわけである。
例2
- まさか○○の正体が△△だったなんて
- まさか○○の正体が△△だったなんて(棒)
前者の場合は謎の人物の正体を知らずにいた人がその正体を知ったときの驚愕を表しているが、後者の場合は最後に(棒)とつけることで、実は正体を知っていた(が知らないふりをしてわざと驚く演技をした)ことを表している。
こちらは物語的には「謎の人物」でも、物語の受け手(読者・視聴者等)的にはそれまでのその人物の行動や言動、あるいは声優や俳優(例えばサスペンスドラマなどで、メインキャスト以外に特に名の知れた俳優が出演している時は犯人か事件の重要な関係者であるというのは定番である)もしくは「物語のお約束」によって「正体はバレバレである」「暗黙の了解でみんな知っている」場合に使用されることが多い(「何を今更」「知ってた」等と同義)。
由来
この語尾にカッコを付けて棒読みであることを表現するのを普及させたのは、某元プロ野球選手が学生時代に出演していたことが発覚して話題となったゲイビデオシリーズ『真夏の夜の淫夢』、およびそれらに付随して派生した「淫夢」(『真夏の夜の淫夢』以外の作品を含む)例のアレ」と呼ばれるジャンルに由来すると見られる。
本作はAVかつ市場としてはマニアックなゲイ向けであるため、基本的には撮影や演技に慣れていない素人の俳優しか起用できず、緊張でしゃべり方が棒読みに聞こえるほど単調な人が多かった(※本作に限らず、アダルト作品は全般的に日常シーンにおける演技力が低い傾向があるとされる)。とくに「第二章 モデル反撃!犯されるスカウトマン」という作品は出演者が全員棒読みなことで有名。
そんな経緯もあり、棒読みで話題になった作品には淫夢厨がよってくることがあるので注意。棒読みには気をつけよう!(注意喚起)