呪胎戴天
じゅたいたいてん
だが自分が助けた人間が将来 人を殺したらどうする
じゃあなんで 俺は助けたんだよ!!
概要
『週刊少年ジャンプ』2018年19号から23号まで掲載、後に単行本1~2巻に収録されたエピソード。
漫画は1巻6話から2巻9話までの全4話、アニメでは4話・5話の2話。
特級呪霊の強さ、その遥か上を行く宿儺の残忍さ、そして虎杖と伏黒、二人の『人を助ける想い』の違いを表した話。
呪胎戴天の戴天の意味が「天を戴くこと、この世に生きていること」から、「特級相当の呪胎が誕生し、虎杖ら高専一年生にとって最も強大な相手になる」という意味で付けられたのかもしれない。
あらすじ
少年院に、突如呪胎が発生。取り残された人間を救助する為、虎杖ら高専1年が派遣された! だが特級呪霊へ変態した呪胎に襲撃を受け、ピンチに陥る一行。虎杖は宿儺と入れ替わり、呪霊を倒そうと試みるが……!?
登場人物
呪術高専東京校
- 虎杖 悠仁(いたどり ゆうじ)
本作の主人公、高専一年生。呪いの王・両面宿儺をその身に抱えた少年。
少年院に閉じ込められた在院者5名の救出に向かうが、そこで内3名の凄惨な遺体を発見。せめて遺体だけでも持って帰ろうとした時、同行していた伏黒に「置いてけ」と言われ対立。
その瞬間特級呪霊と成った呪胎と遭遇するも、何とか伏黒を逃がして宿儺と入れ替わるが……
- 伏黒 恵(ふしぐろ めぐみ)
影を媒介とした式神を使役する二級呪術師の少年。虎杖と同じ高専一年生。
虎杖、野薔薇と共に少年院の在院者5名の救出に向かうが、互いの『人を助ける想い』の違いにより虎杖と対立。瞬間、呪胎と遭遇するが虎杖が身を挺して囮になっている間に野薔薇を救出、共に少年院から脱出する。外から宿儺と変わる合図を送り、後は虎杖の帰りを待つだけだったが……
- 釘崎 野薔薇(くぎさき のばら)
芻霊呪法という術式を使う三級呪術師の少女。虎杖や伏黒と同じく高専一年生。
虎杖、伏黒と共に少年院へ向かうも、対立した二人を止めようとした途端、別の呪霊に拐われる。何とか対抗するが、あまりの数の多さに弾切れを起こし敗北。呪いに食われそうになったところを伏黒に救出され、無事少年院から脱出した。
- 伊地知 潔高(いじち きよたか)
高専所属の補助監督。虎杖達を危険な任務に送り出す事に、内心罪悪感を抱いている。数少ない常識的な善良の大人。
呪い
- 両面宿儺(りょうめんすくな)
虎杖の内にいる『呪いの王』。この時点ではまだ指二本分の力だが、それでも特級の呪霊を相手に圧倒的な力の差を見せつける。作中初の領域展開を発動し、呪霊を見事祓うが……?
西東京市の英集少年院に発生した呪胎。後に特級呪霊へと変態し、虎杖達の前に現れる。術式を扱ってなかったとは言え虎杖を一方的に攻撃し、死への恐怖を感じさせた。
悪夢は終わらない
※注意この先は単行本未収録の重大なネタバレ情報を含む場合があります。未読の方はこのままブラウザバックしてください。
第211・212話「膿む」にて
死滅回游編で安全なルールを追加して事態を収める為に各地で奔走していた虎杖ら呪術高専生は、紆余曲折あれ事が順調に進みひと段落しかけていた。
だが、保護した一般人が既に過去の術師に受肉されていた事、慎重に検討していた「結界内の術師を結界を自由に出入りできるようにする」というルール追加で不意を突かれた事で、精神的に動揺してしまい絶望する伏黒恵。
突然のアクシデントに虎杖の中にいた宿儺はこの機を逃さず、ついに契闊を唱える。
肉体の主導権を奪った宿儺は、突然虎杖の指を引き千切る。どうやら虎杖との間に結んだ「誰も殺さない・誰も傷つけない」という“縛り”に虎杖自身が含まれておらず、その穴を突いた宿儺は千切った指に呪いを込めて伏黒に──────
「覚えているか?」
「面白いものが見れると」
「言ったろう」
「小僧」
宿儺は、これまで虎杖の裡から伏黒の事を見ていた。
時には彼の成長を喜び、時には彼の命を助け、ずっと伏黒恵を見ていた。
渋谷事変では「オマエにはやってもらわねばならん事がある」と口にしており、自身の計画の為に伏黒を利用しようとしていた事は虎杖も気がついていた。
そう。
全ては、伏黒恵に受肉する為に。
呪胎戴天とは、少年院に現れた特級呪霊ではなく、伏黒の肉体をもって現れる呪いの王・両面宿儺の事を意味していたのだ。
第213話「呪胎戴天 -伍-」
少年院で伏黒と対峙した時、宿儺は二つの事を感じていた。
一つは、伏黒の術式「十種影法術」の潜在能力。
もう一つは、即死するほどの猛毒である特級呪物・両面宿儺の指への耐性。
つまり伏黒恵の肉体は、宿儺の「器」足り得る素質があったのである。
だから宿儺は、虎杖の裡で力を取り戻しながら機を窺っていたのだ。
虎杖悠仁のように「檻」として機能する隙を与えず、確実に肉体の主導権を得られる時を。
伏黒の魂が折れる、その瞬間を。
かくして、檻から抜け出した呪いの王は器を手にし、ここに再誕した。
今までの憂さ晴らしか、単に近くにいたからか。
目の前で呆然と立っていた虎杖を、ビルを突き破るほどの威力で殴り飛ばし、明らかに伏黒が使っていた時より巨大な(ビル一つよりも大きい)「鵺」を呼び出して辺りの術師を蹴散らす宿儺。
完全に意識から外れた隙を突いた来栖華と天使が術式を発動するも、元の伏黒を演じる事で来栖の猛攻の手を止めさせ、無闇に接近した彼女の片腕を食い千切る。
第214話「呪胎戴天 -陸-」
あれほどの打撃を受けても無事な上、今までより比にならないほどの身体能力を発揮する虎杖に、流石の宿儺も驚きの顔を浮かべたが、それがすぐに羂索の仕掛けだと察し、「そうか 小僧はあの時の」と虎杖の正体について心当たりを思い出したような反応を見せた。
どこまでも喰らいついてくる勢いの虎杖に、宿儺は術式を使用。微塵切りにしようと、彼の全身をズタズタに切り刻んでいく。
しかし、どれほど切り裂いても突き進む虎杖に驚愕する宿儺。
(俺の呪力出力が落ちているのか)
「伏黒恵め」
そして、ついに。
かつての生得領域の時のように、現実世界でも虎杖の拳が宿儺を捉えた。
第215話「呪胎戴天 -漆-」
どうやらまだ完全に受肉しておらず、宿儺が伏黒の仲間を傷つける時、伏黒の肉体は強く宿儺を拒絶して術式の呪力出力を落とすようになっていた。ムラはあるものの酷いと一割以下まで下がる。
そこへ真希も参戦。虎杖の脅威的な身体能力に加えて、天与呪縛のフィジカルギフテッドを相手に、宿儺でさえ何発も打撃を叩き込まれる。
だが、ここで裏梅が乱入。周囲一帯ごと「霜凪」で虎杖と真希を凍結させて戦いを中断させた。
肉体を仕上げる為に裏梅が用意した〝浴〟の場所へ、彼と共に「鵺」で飛び立つ宿儺。それを、凍結を無理矢理こじ開けた虎杖が追うも、既にもう届く距離にいない。
そんな彼の姿が無様で滑稽だと、愉快に嗤う宿儺と裏梅の声が街中に響いていった。