※本作における重大なネタバレが含まれるので、単行本24巻を未読の方は閲覧注意。
「誰だ……? ですって?」
「あなたのお姉さんよ!! 伏黒恵!!」
概要
伏黒恵の姉である伏黒津美紀に受肉した1000年前の呪術師。会津出身。
当初は器である津美紀を装っており、100点を譲渡されたタイミングで「結界の出入りを自由にする」という予定外のルールを追加し、その正体を現した。
宿儺や烏鷺亨子と同じ平安時代の術師であり、宿儺には一方的な片思いを向けている。
なお、過去の術師が受肉した場合、当人の配慮等が理由の『共生体』(天使と共生した来栖華が該当する)か、主導権の奪い合いこそ発生するがお互いを完全に排除することができない『檻』(宿儺を受肉した虎杖悠仁が該当する)でもなければ器の自我は殺し沈められるため、津美紀が受肉したタイプの泳者である時点で津美紀は死んだも同然である。この事実に気付いた伏黒は姉の身に起きた事態に愕然としていた。
そして彼女の存在に大きな動揺と虚を突かれた伏黒と呪術高専生達はそのままさらなる絶望に叩きつけられる。
人物
『イケメンも 干せばカピカピ いとおかし』
[万]
宿儺 「季語は?」
記事冒頭のセリフを言った際に醜悪な笑みを浮かべていたり、結婚願望があるもののいざ本人の前で口にするとキョドったり、宿儺との会話にて乙女な言動をした直後に『言質取ったり‼︎ はい縛り!!』と顔芸で叫んだり、若い男の生首を並べて宿儺と仲良く猿の脳ポタージュを食べるという猟奇的な結婚式を妄想するなど、感情の起伏が激しく現代人とはかけ離れた感性を持つ。
一方で、呪力の総量・出力共に平安の猛者と遜色なく、扱い難い己の術式と向き合い苦悩しながらも鍛錬と研鑽を重ね、やがて烏鷺が率いていた「日月星進隊」と並ぶ藤氏直属征伐部隊「五虚将」を返り討ちにし、藤原家へと取り立てられるに至る。
力を出し惜しみしている宿儺相手に『御廚子なしで私に勝てるとでも?』と啖呵を切り、肉弾戦では優勢を取る程の戦闘力を誇る。
妄想内とは言え上述のツッコミをさせたり、「一方的に喋るんだから一々聞いてくるな」と宿儺からは嫌な顔をされ呆れながら言われても気にしないぶっ飛んだキャラである。
初見で虎杖の中に宿儺が潜んでいるのを見抜けなかった天使と比べて一発でそれを見抜いて行動したり、彼に向ける愛は非常に重い。
当の宿儺は万のことをどうでもいいと思っており、邪険にしてはいるが、戦闘の実力は認めてるようで(万の器となった伏黒の姉・津美紀を破壊して伏黒の魂を沈めるためとはいえ)漏瑚の時のように正面から向き合って戦っている。
生前、側近の小言や進言を聞かずに全裸で屋敷を徘徊していたところ、たまたま屋敷を訪れていた宿儺に一目惚れする。彼に愛を教えようと全裸のまま抱きついた事で彼の側近である裏梅の攻撃で追い払われ、宿儺の斬撃で一蹴されたという過去が明らかになっている。この時、裏梅から下郎呼ばわりされたが、一向に気にしていない。
裏梅の料理人としての役割を知っていたり、羂索と契約している事から、この時の宿儺の攻撃による即死は免れ、その後もある程度は宿儺や裏梅、羂索との交流はあった模様。
因みに羂索も「万の一方的な片思い」だと二人の関係性を知っている。
戦いの際に宿儺が愛を知っていることを察した万はそれを認めず、彼に愛を教えるのは自分であると主張し全力で戦い、そして敗れる。
今際の際、最後の力を振り絞って生前宿儺が使用していた呪具「神武解(かむとけ)」を生成し、自分だと思って大切に使ってほしいと、自身の術式で作った呪具を宿難に託して息絶え、宿難も呆れつつも素直にそれを受け取る。後にその呪具を鹿紫雲との戦いで使用したり、続く高専組との戦いでは神武解を持っていた事で日車の領域による術式没収を免れたりで役には立っていた。これらの事から、脈も無く邪険に扱われているものの、託された呪具の性能に関してはそれなりに信頼はされている模様。
彼女の死後、宿儺と五条悟が再び邂逅して熾烈な激闘をする中で、宿儺は万の言っていた「愛と孤独」についての言葉を回想しており、愛については彼なりにどこか思う所があったようだ。
能力
術式
構築術式(こうちくじゅつしき)
禪院真依と同じく己の呪力を用いて無から物体を作る事ができる術式。
特殊な呪具を除き、鍛錬次第で万本人が認識できる物質はほぼ全て再現可能。しかし、真依が1日に銃弾1発しか作れないように、構築術式は他の術式に比べて燃費が悪い。真依より呪力の総量・出力に優れる万も例外ではなく、それにより平安時代の猛者と遜色ない無い呪力を持ち合わせていながら幾度も窮地に立たされていた。
そんな時に海を越えて旅をする蝶(漫画内イラストやその生態からアサギマダラ)の噂を聞き考え抜いた末、昆虫のエネルギー効率に着目し活路を見出す。昆虫はその小さな身体から計り知れない咬合力や跳躍力、速度を発揮する点に着目し、昆虫の数多の生体機能を流用・特化させた肉の鎧こそ構築術式の極みと万は確信した。これに加え、一度構築してしまえば呪力を通し続ける限り、自在に操ることができる液体金属で中距離戦闘をカバー。結果、平安時代最高峰の術師の一人と成り、藤氏直属の征伐隊「五虚将」を返り討ちにするに至る。
液体金属は、半自律制御かつ呪力により物性を安定させたまま体積を変化させることが可能。万に追従し、自在に形状を変化させて攻撃することが出来る。
肉の鎧は万の攻撃力、機動力、防御力全てを強化し、御廚子なしとはいえ宿儺と肉弾戦で渡り合うことをも可能にする。また、宿儺の呪力で強化された貫牛の突進と満象の質量攻撃に対し、鎧は破壊されたものの万本人への致命傷は防いだ。
ただし、上述したように呪力効率が悪いため、運用方法が画一的であること、すなわちどんな形状のものを構築しても構成する物質は使い慣れた液体金属か肉の鎧を流用することになる点を欠点として指摘されている。
ちなみに昆虫を使うきっかけになったアサギマダラの旅について、1960年代前半にその説が登場し1980年代に本格的に調査がされるなど生物の研究の歴史的にまだ日の浅い方である。
旅の蝶の噂の入手や昆虫の身体能力の解明など、平安時代というまだ昆虫の生態研究が乏しい時代である事を考慮すると、平安時代の昆虫博士と言っても相応しい知識と研究量、及び構築術式に対する彼女の探求熱心さが窺える。
領域展開
三重疾苦(しっくしっくしっく)
掌印は檀陀印。
液体金属で構成された完全なる真球に必中効果を付与する。完全な真球は平面に対する接地面積が限りなくゼロに近いため無限の圧力を生み、真球に触れると跡形もなく消し飛ぶ。この必殺の真球が必中になるため、五条の無量空処や真人の自閉円頓裹と同様に、まさに必殺必中の領域となっている。
領域内の物体のモチーフは昆虫の脳と神経。
「疾苦」は病気で思い悩むという意味であり、「Sick Sick Sick(しっくしっくしっく)」とかけていると思われるが、宿儺に対する一方的な片思いから恐らく実際の病魔ではなく恋の病を意味している可能性が高い。
余談
- 生前の姿は黒髪ワンレンロングで磨呂眉の美人であり、何故か裸。同時代に生きた烏鷺も常に裸だったが、平安の女性呪術師は服を着たがらないのであろうか?
- 上述のように突然登場し、宿儺への一方的な愛を中心に多大なインパクトを残していった彼女であるが、それと同時に津美紀の身体を乗っ取った事で津美紀自身の掘り下げが殆ど無いまま共に退場していった事を残念がる読者も一定数いる。
関連イラスト
- 受肉した姿
- 生前の姿