御廚子
みづし
主な術式効果は飛ぶ斬撃を放つと言うシンプルなもの。
その威力は人間を簡単に細切れにし、ビルを真っ二つにするほど。特級呪霊すら喰らえば一溜まりもなく、漏瑚は頭と腕を斬り飛ばされ、宿儺の魂に触れてしまった真人は彼の逆鱗に触れ、逆に魂を傷付けられるという手痛い反撃を喰らった。
更に斬撃は不可視かつ高速な上、連射も可能であり、現状、万全の宿儺の術式による斬撃を単純な身体能力で避けられた者は一人もいない。
加えて一定の条件を満たした後に「竈」「開」と唱えることで斬撃から炎の術式に変化し、宿儺は矢を放つように炎を操っている。
こちらも炎を扱う術式を持つ漏瑚を上回る高火力を誇る。
一方、斬撃&炎とシンプルな術式効果の為、他の強力な術師達がもつ概念操作まで踏み込む術式と比較すると格は落ちる。
対戦した五条悟も自身の術式である無下限呪術の方が純粋な性能は圧倒的に上と評している。
事実一定以上の呪力出力を持つ相手は「解」で切断しきれないほか、領域対策である「簡易領域」や「落花の情」で威力を軽減できたり、反転術式で自身を治癒し続けることで実質無効化されたりしている。
御廚子に限ったことではないが、同じ術式でも術者次第で差異があり、覚えたてでは出力も低い。
そのため宿儺は本人の莫大な呪力出力や「縛り」の利用、術式の解釈の拡張などの創意工夫によってハンデを補っている。
人外魔境新宿決戦にて新たな拡張術式を編み出しており、無下限呪術への適応を進めた魔虚羅の斬撃を手本に術式対象を空間そのものに拡張した世界を断つ斬撃を会得した。
「解」(カイ)
「龍鱗 反発 番いの流星」
飛ぶ斬撃を放つシンプルな攻撃技。
宿儺にとっては通常攻撃に過ぎないが、その絶大な呪力出力によりビルを真っ二つにすることすら可能。
加えて斬撃は超高速かつ視認出来ないため回避は困難であり、一瞬で人体をサイコロ状にするなど連射性能も高い。
使用する際は手を構える動作をとるが、その気になればノーモーションで放つことすらできてしまう。
斬撃はある程度形状を変えられる他、威力の調整も可能。
イメージ図は普通の包丁。
「捌」(ハチ)
対象の呪力量・強度に応じて自動で最適な一太刀で相手を卸す斬撃。
相手の強さに応じて効き目が変化するとされる。
「解」を耐える相手も切断することが可能な即死技だが、領域展開時を除き対象に触れないと発動出来ない。
イメージ図はたこ引き包丁。
- 「蜘蛛の糸」
「捌」の拡張術式。
触れたものに「捌」を蜘蛛の巣のように放ち、広範囲を斬り裂く。
使用時には道路を粉々にした。
「世界を断つ斬撃」
人外魔境新宿決戦の最中にて新たに修得した「解」の拡張術式。
「解」の術式対象を空間そのものにまで拡張し、空間ごと対象を切断する究極の斬撃。
空間ごと切断するため防御は不可能であり、五条悟の持つ無下限呪術の不可侵すら関係なく切断することが可能。
無下限呪術への適応を推し進めた魔虚羅が使用した空間を切り裂く斬撃を手本にしており、宿儺自身も修得は至難だったと述べている。
しかし宿儺の技術をもってしても使用には「呪詞の詠唱」もしくは「閻魔天印の掌印」が必要。
加えて五条戦にて片腕を失いながらも五条を倒すために「最初の一度のみノーモーションで放つ」縛りで使用した結果、新たに「手掌による術式の指向性の設定」の縛りが加わった。
そのため現在は「閻魔天印の掌印」「呪詞の詠唱」「手掌による術式の指向性の設定」の全ての条件を同時に満たさなければ使用することはできなくなっている。
ただし乙骨の領域内で発動した際は、乙骨と虎杖の二名によって「閻魔天の掌印と呪詞の詠唱」が使えない状態でも発動してる描写があったが、詳細は明かされてない。裂かれた下右腕でも掌印を結ぶことが可能であると示唆する発言があり、尚且つ直前で虎杖悠仁とリカの拘束も解けているため、掌印と呪詞詠唱の条件を満たすことは可能であると考えられる。もしくは「世界を断つ斬撃」ではなく詠唱によって強化されただけの解であったのかもしれない。
「竈」(カミノ)
「竈」(カミノ) 「開」(フーガ)と唱えることで使用出来るようになる炎の術式。
宿儺は矢を放つように炎を操っており、炎を扱う術式を持つ漏瑚を打ち負かす高火力を誇る。
しかし発動には事前に「解」「捌」の双方を使う必要があり、火力に対して速度がなく範囲も狭いとこれ単体では使いにくい。
そのため宿儺は『領域展開中を除く多対一での「竈」の実行禁止』の縛りを科すことで、自身の領域展開である「伏魔御廚子」によって粉塵化した全ての物質に「竈」と同じ爆発性の呪力を帯びさせる対価を獲得。
伏魔御廚子の生物以外の出入りを制限する設定変更と合わせて、領域内に物体を切り刻んだ粉塵が満ちた段階で「竈」を使用することで、サーモバリック爆薬と化した粉塵が領域の隅々に散らばり「竈」の熱により爆轟遷移。刹那の高温・衝撃波・減圧・超加圧で領域内の生物を焼き尽くす必殺の追撃に昇華している。
この「領域展開」→「竈」の流れを宿儺は最終奥義と称しており、魔虚羅を一撃で屠ることすら可能。
なお「竈(カミノ)」の部分は原作258話で判明するまでは「■」と表現されており長らく不明だった。
宿儺の領域展開である『伏魔御廚子』だが、厨子とは仏具を収める物入全般を指し、広義には仏壇もこの厨子に入る。その「物入」と言う特徴と、宿儺自身が呪いの王であるという設定から、宿儺の術式とは『様々な術式を蒐集し、扱うことのできるもの』ではないか?と考察されていた。
また、130話で「領域展開後は肉体に刻まれた術式は一時的に焼き切れ使用困難になる」という情報が記述された事も宿儺の斬撃と炎は別の術式なのでは?という考察の裏付けとなった。
一方で、118話の煽りに『万死の厨房』と言う言葉が使われたことから、宿儺の術式が調理なのではないか?と言う考察が俄かに脚光を浴び始めた。実際、御厨子とは「台所」を意味する言葉でもあり、そもそも元ネタになった両面宿儺にも料理に関するエピソードがあり、「日本一宿儺鍋」と言う巨大な鍋も宿儺の伝承がある地には存在している。また、両面宿儺の伝承が残る岐阜県では「宿儺かぼちゃ」と「宿儺のめぐみ」という名のかぼちゃが生産されている。
尚、作中屈指の最強キャラが使う能力が、『料理』であることについてはギャップで違和感を持つ者もいるかもしれないが、仏教においては地獄で亡者に与えられる苦しみの一つに、鬼(獄卒)によって生きたまま料理にされると言うものがある。また、食事とは弱肉強食の言葉がある様に、強い者が生きる為に弱い者を搾取するという比喩表現としても使われる。
この他にも、料理は科学に関係が深かったり、物を食べさせることで願いを叶えるというお呪いが現在でも残っていたり、『人に物を食べさせる』と言うイメージに反して非常に広範囲の解釈が可能な分野である。その為、考察が正しいかどうかはさておき、『調理というモチーフは呪術をテーマにしたこの漫画には意外にも相応しい』と、ファンの間では盛り上がっている。
『切断を多用し火も扱える』と言う特徴に加えて、宿儺の使う言葉の端々には、三枚おろし、味見、飢え等、食にまつわる言い廻しが多く、伏魔御廚子が発動した際にも、巨大な口と大量の獣の骨といった食事を想起させる描写がある。また、解や捌の発動時にイメージとして出刃包丁と中華包丁が描かれた事や、ファンブックで宿儺の最大の喜びは「食べる事」と説明された事もあって、俄然この説に真実味が出てきた。
呪詞の考察
※あくまで考察に過ぎず、公式の確定情報ではないため注意。
「解」
「龍鱗 反発 番いの流星」
- 龍鱗
字の通り龍の鱗と読むが、数が多い事を例えて使う場合もある。他にも「天子・英雄の威光」や「危険な状態」とも表すため、意味としては呪いの王たる宿儺の御業、または数を増やす・危険度(切れ味?)を上げるだろうか。
宿儺の在り方は、作中で「天上天下唯我独尊」と言われ、何より「呪いの王」「堕天」という異名がある。
元ネタとなった両面宿儺も、地方によっては英雄として讃えられていたりする。
他にも、この呪詞を唱えてから放った「解」は、地面に底が見えないほどの巨大な切断痕を作っており、加えて鹿紫雲にとどめを刺す際は、複数の斬撃を格子状に重ねていた。
- 反発
単に跳ね返る・反抗する事を意味した言葉だが、宿儺が天使から「堕天」と呼ばれている事を考えると、もしかしたら天に反発した宿儺自身の事を指しているのかもしれない。堕天は文字通り天から堕ちたという言葉であり、それは即ち宿儺もかつては天に仕える者だったという可能性が存在する。
- 番いの流星
番いは、雄と雌の組み合わせ、人間で言うところの夫婦関係。二つのものが一つに合わさる、という意味でも使われる。
流星は、主に夜間で見られる天文現象。空に生じた点の光が一定の距離を移動する……つまり流れ星のこと。
公式ファンブックに記載されている原作者のコメントによると、宿儺に妻や子供はいないため、番いという言葉は相応しくないように思えるが……実は宿儺に関する考察の中に結合双生児説というものが存在する。
本来の宿儺は、四つの目に四本の腕、二つの口を持つ異形の姿をしており、これはまるで二人の人間が一つに組み合わさったようにも見える。さらに作中でも宿儺が自身を「忌み子ではあっただろうな」と告げている。
そして宿儺は胎児の頃に双子の片割れを喰っていたことが明らかになったため、双子を喰った影響で呪術的作用が働き今の姿になったと考えればこの説の信憑性が増す。
そして、流星は「天にある星々の一つが地に落ちる」とも表現でき、これは宿儺が堕天となった様子を表している、という風にも考えれる。
以上のことから、双生児の宿儺が天から堕ちていく様を表した呪詞なのかもしれない。
他に、番いの流星とは「双子座」を表しているという考察も存在する。
十二星座には火・水・土・風の四属性があるとされ、双子座は風の属性。宿儺の斬撃はこれに対応しているのではないか?という考えである(風→カマイタチ→見えない斬撃?)。
以上のように「解」の呪詞は、宿儺を表したものが多いと考えられる。
「竈」
「竈」「開」
- 竈
竈とは、古代日本の家庭で火を炊くための設備を指す言葉で、火を操る技を指す。
また、竈神という竈や囲炉裏、台所といった火を扱う場所を守護する為に祀る荒神が存在している。他にも呪術と関係がある陰陽道には土公神がかまど神として呼ばれている。
カミノ呼びなのは、イタリア語で暖炉や煙突を意味するcamino(カミーノ)から来ていると考察されており、この語源はラテン語で竃を意味するcaminusである。
今まで明かされなかった「■」の部分だと思われるが詳細は不明。
御廚子とは違う術式との考察があり、これは腹の中にいた双子の片割れの術式で宿儺が喰ったことにより身につけたと言われているが、全くの別物ではなく御廚子を前提とした術式であるため結局のところ分からずじまいである。無理に考えるなら、双子の術式は連動した物であり宿儺とその兄弟の連携を前提とした作りだったのを宿儺が一人で運用している……といったところだろうか。
十二星座の属性説
上述にもある星座の属性だが、実はこれが宿儺の術式の元ネタとして扱われているのでは?という考察がある。
風は上述の斬撃、そして火は例の「開(フーガ)」。
火の属性にあたる星座は、牡羊座・獅子座・射手座の三つ。その中の射手座が「開」の炎に対応しており、実際に作中で宿儺は火を弓を射るように番えている。
もしそうであるのならば宿儺はさらに二つ、水と土を示す星座(能力)を持っている可能性に繋がる。
宿儺の術式のモチーフとしてよく料理が挙げられるが、料理は切って焼くだけではなく、煮たり(水)、盛り付けたり("土"器)する必要がある、というのも根拠の一つ。この場合、裏梅の氷は料理の保存担当とされる。