概要
術者の周囲に呪力で「無限」を具現化させる事であらゆる干渉を防き時空間を支配する術式。
自身が危険と認識するものが自身に近づく程低速化し接触出来なくなる為、基本的にあらゆる攻撃を無効化する(自分に当たらなくする)ことが可能。
他にも仮想重量で押し潰したり、空中浮遊・高速移動したりと、攻撃、防御、速度どれをとっても優秀な強力極まる術式。
ただし、十全な使用には原子レベルの緻密な呪力操作が必要なため、五条家の人間のみが発現する特異体質『六眼』がなければまともに扱えない。
その上六眼を保有していたとしても長時間使用は脳への負荷がかかってしまうが、五条はこの対策として反転術式を同時に発動させ続けて絶えず脳を修復することでカバーしている。
見かけ以上にピーキーな術式であり、無下限呪術が万能のように見えるのは術式そのものではなく五条本人のセンスと努力の結晶であると言える。
術式効果
ニュートラルな物として対象物と術者の概念上の相対距離を無限にすることであらゆる攻撃を無効化する効果がある。作中では不可侵と呼ばれる
反則じみた鉄壁の防御やまさに絶対不可侵。
- 術式順転「蒼」
詠唱は「位相 黄昏 智慧の瞳」
上記の効果を増幅させ-1のような虚数の空間を創る事で引力を発生させる。移動や拘束にも使用可能な技。簡単に言えば、収束する力。
打撃に小さな吸い込む力を重ねたり、相手を引き寄せたり、自分に使い加速したり、座標を圧縮し瞬間移動するなど応用が効く。また殺傷力はかなり高い。作中では時間の圧縮の効果なども使われている。
- 術式反転「赫」
詠唱は「位相 波羅蜜 光の柱」
「蒼」とは逆に虚数の空間を増幅させる事により指向性を持つ衝撃波を発生させる。簡単に言えば、弾く力。
術式反転という反転術式を使う性質上出力は順転の2倍となり威力はかなり高い。
- 虚式「茈」
詠唱は「九網 偏光 烏と声明 表裏の間」
「蒼」と「赫」を衝突させる事により発生した仮想の質量を押し出す。赫とは比べ物にならない破壊力を持つ。
五条家の中でもごく一部の人間しか知らない無下限呪術の奥義であり秘技。
余談
無下限呪術について
「蒼」の理屈は、「無限等比級数1/2+1/4+1/8+…の項を最後まで数え切った人はいないのだから、どこかで負の自然数みたいなものが出てきてもおかしくはなく、負の自然数を現実に持ってくればその虚空に周りの正のものが集まる」というものだが、それに対し情報幾何修士号を取得している少年ジャンプ編集者(本作の担当者)から「1/2^tは級数であって数えるものではない」「つーかやっぱり負の自然数なんて言葉はない」と理系的ツッコミが入り、少なくとも作者が当初に考えていた原理では数学的に間違っている事が判明してしまった。
詳しく説明すると、上に挙げられている無限等比級数∑[t=1 ∞] 1/2^tは、tに全ての自然数が代入可能であり、したがってtの値が大きくなるほど1/2^tの値は小さくなる。tを極限まで大きくすると1/2^tの値は「1を2の∞乗で割った数」(※1)という果てしなく0に近い数値をとるのだが、結局それは正の数を正の数で割ったものであるため、0にも負にもなり得ない。加えて、「級数」とは「これらの数を合計した和」のことであって、「数を順に数え並べたもの/数えたもの」である数列とは似て非なる概念である。つまり先の∑[t=1 ∞] 1/2^tという無限級数は、『1/2から「1を2の∞乗で割った数」まで(※2)を順に足すもの』であるから、そもそも原理的に1/2を下回ることはない。というか、この例で計算すると正の自然数である1に収束する。
したがって、収束する無限級数を強化しても負の自然数という物は生まれない。(定義的に、自然数とは1以上の正の整数なので、負の自然数は学問上は可能性レベルで存在しない)
ここまでの知識は高校数学の数学IIIの範囲なので、興味がある方は教科書などを読んでみるといいかもしれない。
ただし、一般に級数は収束先が決まっているわけではないので、負の数に収束する級数をデザインできる術師と解釈したり、「負の自然数」も「バグ」や「ノイズ」の可能性を考慮し、「工学的に」考えれば間違ってなくもないらしい。
※1 ∞は数ではないが、ここでは慣用的に∞乗という表現を使う。
※2 無限級数なので、厳密には「まで」という限界はない。ただしどこまで行っても正の数を足していくので、結論は変わらない。
呪詞の考察
※あくまで考察に過ぎず、公式の確定情報ではないため注意。
術式順転「蒼」
「位相 黄昏 智慧の瞳」
- 位相
言葉の意味自体は「繰り返される現象の中、ある特定の状態のこと」とある。
数学や物理学では位相空間とも呼ばれ、特に数学では極限や連続の概念を定義する基礎となる数学的構造(ルール)。
この極限は数学だと、ある一定の値に近づいていくことを「収束」、値が正・負の無限大になることを「発散」と考えられており、作中や単行本のおまけで語られた無下限呪術の説明と似ている。
- 黄昏
ようは夕暮れの事だが、人生の衰え、最盛期の過ぎ去りなどの比喩としても扱われる。
しかし「終わりにはまだ早い」という意味も含まれ、この呪詞がお披露目されたタイミングを考えると、最新話の五条の状況を表した言葉だったりするのかもしれない。
昔は「たそかれ(誰そ彼)」と言い、夕暮れになると辺りが暗くなり、人の顔が識別できなくなるため「あなたは誰ですか?」と尋ねる時に使われたらしい。
下述の「知慧の瞳」に続くのなら、術師の肉体に刻まれた術式を看破する六眼を指しているという考え方も出来る。
- 智慧の瞳
智慧とは、仏教用語で「物事を把握し、真理を見極める力」を意味する。すなわち六眼の事である。
無下限呪術は六眼を持っていないと真価を発揮しない点からも、「蒼」の呪詞は全体的に六眼を表したものなのかもしれない。
術式反転「赫」
「位相 波羅蜜 光の柱」
- 位相
「蒼」と同じ。おそらく五条が扱う無限の事を指しており、後に続く呪詞が「蒼」か「赫」かの状態を意味している。
- 波羅蜜
仏教用語の一つで、仏になるために菩薩が行う修行。迷いの世界である此岸(俗世)から悟りの境地である彼岸に至ること。
語源の解釈では「最高」「完全」ともあり、上述の「位相」も含めて考えると「自分の状態を最高のものにする」という意味なのかもしれない。
実際、過去編で死にかけた五条は今際の際で反転術式を会得した事を切っ掛けに、現代最強の術師へと覚醒した。
ちなみにこの波羅蜜という修行の中には、上述の「知慧」も含まれている。
- 光の柱
これについてはさらに不確定だが、どうやらスピリチュアル的な意味があるらしく、成功や幸運の兆しらしい。他には、神様がいる天界と地上を繋ぐ、まだ成仏できてない魂を天に還すなど、霊的なものとして扱われている。
上述の「位相」と「波羅蜜」の意味を考えると、もしかしたら「五条悟=天の者」と表現した言葉という可能性がある(現に五条は最強となった自身を天上天下唯我独尊と言い、アニメでは空から黄金の陽の光が射していた)
以上の事から、「赫」の呪詞は全体的に五条悟を表したものだと考えられる。
虚式「茈」
「九網 偏光 烏と声明 表裏の間」
- 九網
何か意味を持つ言葉は見つからなかったので、おそらくオリジナルの造語だと思われる。
「九」は、日本では「苦」を連想させる事から縁起の悪い数字とされ、凶運の象徴でもある。宿泊施設や病院の室番号では9が避けられている事が多いらしい。一方で最大の数字ともされる事から、中国では幸運の数字として扱われている。
確かに「茈」は敵にとって死の象徴であり、同時に五条にとっては己が最強だと証明する必殺の技だと言えるだろう。
「網」は、鳥や魚を捕らえるための道具、または複雑に張り巡らした状態。「茈」は、「蒼」と「赫」の二つの無限を掛け合わせたものである。
もう一つ「九網」の考察が存在し、それは仏教用語・儒教の三網と五条悟の六眼。この二つを合わせて作られた造語という説。
三網は、仏教用語では寺院を管理・運営し、僧や尼を統括する上座(最高責任者)・寺主(事務・経営の担当)・都維那(戒律・学問の監督)の三つの僧職。儒教の方だと、君臣・父子・夫婦の関係、あるいはその責務を説いたもの。
どちらも「茈」のイメージとは離れた言葉だが、実は後者の儒教では「三網五常」という、上述の三網と合わせた、仁・義・礼・智・信の五つの道義を含めた言葉が存在する。
この「五常」の部分から五条、さらには彼の特徴である六眼を連想して「三網+六眼=九網」となったのかもしれない。
- 偏光
一定の方向へ振動する規則的な光のこと。
偏光は人の眼では捉える事のできない現象という事から、掴むどころか視認さえ不可能な「茈」を表現した言葉かもしれない。
あるいは、普通の人間には見えないものまで見る事ができる特別な眼を持った五条を暗喩した可能性もある。
- 烏と声明
黒い見た目と知能の高さから不吉な印象を持たれている烏だが、古来より神の使いとして神聖視される事も多い。
そして声明は、これも仏教用語で「仏を讃えたり、場を清めたりなどの内容を唱える声楽全般」のこと。早い話、お経である。
以上の事から「天の使いが主のために場を清める=『茈』によって敵を全て消し飛ばす」という、なんとも物騒な事を宣言していると解釈できたりする。
「烏」は無量大数の上である烏波跋多を意味しているのではないか、という推察もある。これも二つの無限によって生まれる「茈」を連想できるため、あり得なくはない考察だろう。
- 表裏の間
シンプルに、「蒼」と「赫」から生み出される「茈」の事を述べているのだと思われる。
順転「蒼」→表。反転「赫」→裏。虚式「茈」→間。
というように、この呪詞は「茈」を表したと考えられる言葉が多い。
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