概要
呪術界御三家・禪院家相伝の生得術式。使用者は伏黒恵、後に伏黒に受肉した宿儺。
自身の影を媒介に十種類の式神を召喚する。顕現の際は動物を模した手影絵を作ることで、その動物に応じた姿の式神が召喚される。
単体でも並の式神を上回る力をもつが、最大の強みは式神を使い分けて攻撃・陽動・索敵の全てを一人でこなせる汎用性の高さ。
式神は個々が別々の能力を持っており、状況に合わせて様々な手札が切れる。
さらに式神の同時召喚・複合召喚を行うことで手数をさらに増やすこともできる。
また、影を媒介とする特性を利用して自身の影を四次元空間のような得物の収納・格納ができるアイテムボックスとして扱ったり、敵の姿勢を崩す即席の落とし穴や、他者の影の中に自由自在に侵入するなどの応用も可能。
ただし、同時召喚は式神によっては途轍もない呪力を消費し、また影に収納した物体の質量は自身の身で引き受けなければならないなど、使い方によっては術者が自滅しかねない。
また、式神が完全に破壊されると同じ式神は二度と顕現させることはできず、破壊されずとも術師が重症を負うと術式が解け顕現が解除される欠点も持つ。
さすがに呪霊操術に比べれば手数は少ないものの、召喚できる式神の強さと汎用性と応用性の高さから、宿儺からも異常なほどに興味を惹かれている。
御三家相伝の術式であるため、術式自体の取説が確立しているのも強みであると言える。
伏黒はまだこの術式を活かしきれておらず、宿儺に「宝の持ち腐れ」と評されている。
名前の元となったのは、日本神話の「十種神宝」と見られる。各式神にはそれぞれ神宝の紋様が刻まれている。
調伏
この術式で最初に使えるのは二匹の「玉犬」だけで、他の式神は術師自身が戦って調伏しなければ従える事が出来ない。
- 調伏のルール
①調伏は術者本人のみで行わなければならない。術者以外も参加者として指定できるが、その場合は式神を倒したとしても調伏の儀は無効となる。
②「調伏するため」であるなら全ての式神を召喚可能。
③調伏中に式神に殺されると術師は死亡する。
伏黒をはじめ過去の術者達はこれを利用し、敵を儀式に巻き込み、この術式最強の式神を召喚して自分もろとも殺すという「奥の手」として利用している。
この場合、儀式の参加者が全員死亡すると「儀式終了」となるが、儀式中に十種影法術の術者が致命傷を負った場合は儀式終了まで仮死状態となる。これは、儀式中に術者が死亡すると術式が消滅してしまうためであると考えられ、術者以外の参加者が全員死亡するか、他の参加者が式神を撃破することで正式に儀式が終了した時点で、術者の死亡が確定する。
また、参加者として指定されていない第三者が式神を倒した場合、「参加者が式神を倒す」か「式神が参加者を全滅させる」という終了条件をどちらも満たしていないため、儀式そのものが執り行われなかったこととなる。仮に儀式中仮死状態の参加者がいても、反転術式などで治療してから第三者によって式神が破壊されれば、儀式のキャンセルにより死亡は確定しない。
式神
- 玉犬(ぎょくけん)
術者が最初に使役可能な二頭一対の犬の式神。二匹で一枠の式神である。
バランスに優れ、低級呪霊なら難なく払える爪と牙による攻撃力と、嗅覚による探知・呪力の感知能力を併せ持つ。影絵が共通であるため、2匹同時に召喚することも可能。虎杖達には本当の犬のように可愛がられており玉犬も懐いていた。
玉犬・白には道反玉(ちかへしのたま)が、玉犬・黒には死反玉(まかるかへしのたま)の文様がそれぞれの額に刻まれている。
手影絵は黒と白共に片手の薬指と中指の間を広げてもう片方の手を重ね、両親指を耳に見立てる。
- 鵺(ぬえ)
顔面に髑髏を模した仮面をつけたような怪鳥の式神。紋様は不明。
飛行能力を持ち、人一人程度であれば乗せて飛行可能(ただし長距離の飛行は不可能)。呪力が電気の性質を持っており、電撃をまとった体当たり攻撃を可能とする。基本的に狭い場所では扱いづらいが、対象との間に顕現させることで防壁として利用することも可能。
手影絵は両手を交差させて翼を表現し、親指をくちばしに見立てる。
- 大蛇(オロチ)
巨大な白い蛇の式神。頭部に生玉(いくたま)の紋様をもつ。
片手で召喚可能なため不意打ちや奇襲に適している。
手影絵は人差し指と中指でわっかを作り目を表現、親指を下顎として見立てる。
- 蝦蟇(がま)
大きなカエルの式神。腹部に沖津鏡(おきつかがみ)の紋様をもつ。
攻撃力は低いが、長い舌による攻撃や拘束、味方の救助や移動の補助に役立つ。
手影絵は両手を合わせ親指と人差し指で口を表現、小指を少し曲げて目を見立てる。
- 満象(ばんしょう)
仔象ほどのサイズの巨大な象の式神。額に辺津鏡(へつかがみ)の紋様をもつ。
鼻から噴出する大量の水や、自身の巨体を活かした質量攻撃が可能。しかし呪力消費が激しく機動力の高い相手との相性も悪い。
手影絵は片手の中指と人差し指を少し曲げて鼻、小指と人差し指を立てて牙、片手を重ねて頭、親指を口として見立てる。
- 脱兎(だっと)
白い兎の群体の式神。大量の兎の中に1体だけ腹部に品々物之比礼(くさぐさのもののひれ)の紋様を持つ個体がおり、この個体が破壊されると全ての兎が破壊される。
攻撃力がほぼない代わりに、一度に大量に召喚できることから、数で陽動や目晦まし、攪乱を行う。
手影絵は両手を反対に向かせて人差し指で頭、下のほうの手で足、上のほうの手で中指と人差し指を立てて耳を見立てる。
- 円鹿(まどか)
人の数倍近い体躯と四つ目が特徴の鹿の式神。左首筋に足玉(たるたま)の文様が刻まれている。
円鹿の範囲には反転術式が張り巡らされており術師の治癒の他、他者の呪力を中和して術式効果等を無効化することも可能。
手影絵は片方の手で頭部を作り、もう片方の手で角を見立てる。
- 貫牛(かんぎゅう)
巨大な黒い牛の式神。額に蜂比礼(はちのひれ)の紋様が刻まれている。
巨大な体躯を活かした突進攻撃を行う。直線でしか動けない代わりに相手と距離をとるほど威力が増すという特性をもつ。
手影絵は片手を頭部に、もう片方の手で親指と人差し指で角を見立てる。
- 虎葬(こそう)
名前以外の情報は一切不明。作中これ単体で使役された事は一度も無く、既に他の式神に継承した状態での召喚が初登場となった。名前から虎の式神であると思われる。
- 八握剣異戒神将魔虚羅(やつかのつるぎ いかいしんしょう まこら)
歴代十種影法術師において、誰一人として調伏できなかった最強の式神。十種影法術使いの「奥の手」。両手を前に出し、布瑠部由良由良(ふるべゆらゆら)と唱えることで呼び出すことができる。
式神自体の詳細は該当記事を参照。
拡張術式
- 玉犬・渾(こん)
破壊された玉犬・白が残した術式と呪力を玉犬・黒へ継承させる事で誕生した式神。額にその二種の式神の紋様が刻まれている。
外見は目と牙を剥いた凶暴な顔つきの犬で、背中の毛が荒々しく逆立っている。背中側の毛が黒く、腹側の毛が白い。二足歩行と四足歩行を使い分けており、後足で立ち上がって前足の爪で攻撃する様は犬というより人狼に近い。
特級呪霊の中でも非常に高い防御力を誇る花御にダメージを通すほどの攻撃力と、伏黒を抱えた状態でも高速で動き回れるほどの機動力を兼ね備える。良くも悪くも一芸に秀でた式神が多い中で、走・攻・守共に高いレベルでバランスが良く使い勝手がいいため、メインウェポンとして重宝している。
- 不知井底(せいていしらず)『蝦蟇』+『鵺』
見た目は通常の蝦蟇より小柄で翼が生えている。主に敵の撹乱や援護などに使われるが、単体の鵺と蝦蟇より戦闘力は低い。一方で、同時に複数体を呼び出す事が可能で、破壊されても再顕現できるという強みがある。そのため、伏黒は通常の蝦蟇よりもこちらを使用することが多い。ただし、蝦蟇か鵺のどちらかが破壊されると出せなくなる。
- 嵌合獣・顎吐(かんごうじゅう・あぎと)『渾』『鵺』
『虎葬・円鹿・大蛇を継承した鵺』と五条に言われており、計4体の力を併せ持つ。開いた手を組んだ掌印で召喚する。
魔虚羅と同程度の人型ながら、対照的に女性的な容姿である。
巨大な鋭い爪による近接格闘をメインに、鵺の電撃、円鹿の反転術式など各式神の固有技も使用可能。また、摩虎羅同様に攻略する際は一撃での破壊を求められる。
余談
- 相伝術式について
禪院家の相伝術式にはもう一つ投射呪法があるが、あちらは比較的新しい術式であり(おそらく古くても幕末以降だと思われる)、本来の相伝術式はおそらく十種影法術である。五条家の無下限呪術は完璧に扱えるのが五条悟だけというだけで他にも術者は存在しており、加茂家の赤血操術は加茂憲紀と加茂家の血を引く脹相の二名が登場しているが、十種影法術は伏黒恵しか登場していないためその貴重性が窺える。
- 玉犬について
玉犬は二頭一対であり十種のうちの一枠という扱いなのだが、白が破壊されても黒は残っており(後に継承)、額の紋様も白黒違うため、実質二体扱いに近い。そのため玉犬は本来『渾』の方であり、術者が未熟であるため二つに分かれていたのではないかという声もある。