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魔法界(ウィザーディング・ワールド)

まほうかい

魔法使いと魔女が住む世界。魔法のない世界の中に潜むように存在する。原語そのままにウィザーディング・ワールドと呼ばれることもある。

概要

現実と変わらない普通の世界の裏にこっそり存在する、魔法族たちが生きる世界。

その存在は魔法族同士の法律で秘匿されている。

  • 社会構成

ヒトの魔法族をはじめとした魔法生物と、魔法使いのペットであるフクロウやカエルなどの魔力を多少なりとも持った一般の動物で構成されている。

魔法生物はヒトやハウスエルフ、ゴブリンといった「(ヒトたる)存在」(being)、フェニックスやトロールといった「動物」(beast)、ゴーストやポルターガイストといった「霊魂」(spirit)の三種類に大きく分類できる。

「存在」の中ではヒトがマジョリティであり、唯一の携行権利を持つ。ゴブリンやケンタウルスといったマイノリティとはある程度の緊張関係にある。

  • 魔法

魔法使いと魔女は皆個人のを持ち、呪文を唱えることで数々のマグルに不可能あるいは大変な労力が必要な現象を引き起こす。物を浮かせるものから、相手の命を奪うものまで様々。

また、魔法薬薬草魔法道具などの力を借りることもある。中でもは移動手段として普及している。

  • 生活

魔法のおかげで、魔法族はマグルのように家事で苦労することはあまりない。中にはハウスエルフに一任している場合もある。

ただし魔法にも多少の制約はあり、例えば完全な無から食料を生み出すことはできない。(増やすことはできる)。

魔法族は魔法の性質を持たない異常は簡単に修正することができるが、魔法の性質を持つ異常はそれぞれ適切な対処が必要となる。つまりわれわれマグルの世界でも知られているような傷害、疾病(サソリ毒のようなものも含む)は魔法族にとって取るに足らないものである。

なおマグルの傷害・疾病(Illness and Disability)が魔法族を害せないのとは反対に、魔法の障害・疾病はマグルを害しうる。ただ機密保持法下における厳密な隔離のおかげで、マグルは魔法の傷害・疾病から守られている。

  • 歴史

古来、魔法が使える者は世界に存在し、非魔法族(地域によって呼称が異なり、少なくとも現代のイギリス地域におけるものはマグル)と堂々と交流していたこともあった。

しかし14世紀ごろ魔法使い・魔女狩りが行われるようになり、魔法族は魔法をマグルから隠匿した。

17世紀末に制定された魔法界の国際条規、国際機密保持法により、魔法族がマグルの面前で魔法を使用するのは禁止されている。そのためマグルとの交流も大々的には行われず、魔法族は何も知らない隣人たちに隠し事をしながら生きている。

あまり一般的ではないものの、マグルに対して侮蔑的な感情を持つ魔法族も中にはいる。

また、17世紀末に社会の分離が行われているためマグルはもはや魔法族の存在を知らず、どれだけ奇妙なことが起きても頑迷にそれを否定する。

  • 血統

魔力は遺伝により継承される。

しかし、マグルから魔法族が生まれる場合や、魔法族の家系から魔力を持たない者がうまれることも時々ある。

マグルの先祖を1人も持たない魔法族は純血と呼ばれ、一部では純血を尊ぶ主義がある。

  • 政治

各国には魔法省やそれに相当する政府が存在し、マグルの元首と連携しながら魔法界を統治している。また、国際魔法使い連盟が存在し、各国の魔法省は機密保持法の遂行や文化交流のため随時協力している。

英国魔法省は三権分立していなかったりそもそもどこまで民主制などかも怪しかったり、かなり腐敗している。

そして魔法由来の差別は根深く、魔法族生まれのマグル(スクイブ)への差別、一般的ではないもののマグルやマグル生まれへの差別も存在する。

また非人間であるゴブリン巨人といった「ヒトたる存在達」は人間同等の知性を持つにもかかわらずに不遇な扱いを受けている。当然彼らに近しい半人に対する偏見も強く、例えばハグリッドといった半人の人物は血統由来の偏見を持たれがちで実際に作中でもそれに起因する差別を受けるシーンがある。

ただ魔法的要素に関すること(血統、実力、種族など)を除くと、平等性の点において魔法族はマグルよりも先進的な風潮があるようだ。

少なくとも14世紀にはイギリスの魔法使い評議会の議長に女性が就任しており、後継組織(魔法省)のトップ(魔法大臣)の地位も――最初の100年弱ほどは男性に引き継がれ続けてはいたものの――1798年のアルテミシア・ラフキン以来は男性魔法大臣と同程度に女性魔法大臣も輩出されるようになった。マグルと比べるとわりと古来から政治、教育、学術、マスコミなど幅広い分野での女性の活躍が確認できる。おそらく魔法の力の存在が男女の立場を概ね等しいものにしているのだろう。

また濃い褐色の肌や強く縮れた黒髪を持つ人物が1600年代のイギリス魔法界に病院を設立したり、1920年代のアメリカ魔法界で政治的トップに成れたりする程度には民族的な平等も存在しているようだ。

マグルにはLGBTとも呼ばれる性的マイノリティの存在もまた、魔法族にとってそれほど気にするべきものではないらしい。「馬鹿げたマグルだけがそういうことを気にしてる」 「ホグワーツはあらゆる宗教(ウィッカは除く)の信仰者と性的マイノリティに開かれている

魔法族にとっては、魔法的要素に関することのみが差別を育み得るのだ。

メタ的にはそもそも「魔女」の概念が女権的なたたずまいを持っているし、JKRのWizarding Worldにおいてあらゆる差別と偏見が魔法に関するものとして表象されているというのもあるだろう。

  • 経済

魔法社会独自の通貨が流通している。

英国魔法界の通貨はガリオン

ゴブリンが運営するグリンゴッツ魔法銀行が中央銀行の役目を果たしており、マグルの通貨との両替も請け負っている。

1ガリオンは17シックル、また493クヌートに相当する。かなり複雑で非実用的にも思えるが、計算の魔法があるため単位の独特さは問題にはなっていない。(ちなみに同じ理由でヤード・ポンド法からメートル法に移行していない)

アメリカ魔法界の単位はドラゴット(Doragot)、のちに映画『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』ではスプリンク(Sprink)という単位も登場した。

  • 環境・施設

マグルが入り口を認識できないように魔法をかけた建物や空間で魔法族は生活している。

なお、英国魔法界においては魔法族だけで構成される村はホグズミードのみで、多くの英国魔法族はマグルの街にこっそり紛れる形でマグルと共に生活している。

以下、英国の代表的な魔法社会とその空間を挙げる。

ダイアゴン横丁夜の闇横丁ホグズミード
9と4分の3番線
官庁英国魔法省
学校ホグワーツ魔法魔術学校
病院聖マンゴ魔法疾患傷害病院
刑務所アズカバン
  • 教育

英国魔法界では、大半の11歳から17歳(成人とみなされる)までの子供がホグワーツ魔法魔術学校で全寮制の教育を受ける。なお、希望すれば自宅学習や海外の魔法学校に行くことも可能。

ホグワーツには1~5年の「O.W.L課程」と6,7年の「N.E.W.T課程」があり、それぞれ就職で一定のスコアが求められる。

世界的にはホームスクーリング(自宅学習。通信過程、家庭教師、家庭学習など学校ではなく家で学習を行う)を選択する魔法使いが大多数であり、そのため国際魔法使い連盟に認証されている魔法学校は11校とかなり少ない。

マグル生まれがホームスクーリングをどのように実践するのかは不明である。

  • 文化・技術

魔法界の人々がマグルの技術を重宝がることは少ない。

たいていの場合、マグルの技術より魔法の方が圧倒的に優位にあるからである。

皮肉なことに魔法族の衛生がマグルより劣るように見えるにもかかわらず、魔法族はマグルより長命で健康である。「ありふれた性質」は魔法によって簡単に修正され、魔法族はマグルのような障害・疾病に悩まされることはない。

しかし汽車、ラジオなど、魔法族が有用性を認めた数少ない例外は魔法をかけられて流通していることがある。

また魔法を使わずして便利な道具を作り上げるマグルの技術に感心している魔法族も一部いる。

魔法族の間ではゴブストーンやクィディッチといった、マグルとは違った魔法の娯楽が親しまれている。

マグル同様に魔法使いもチェスを楽しむが、魔法使いのそれはマグルのものと少々違ったところがある。チェスのピースは生きているように動き、下手な指し主の言うことは聞いてくれない。

ホグワーツの壁に掛けられた夥しい数の絵画が示す通り、絵も魔法族の文化の一部である。魔法を掛けられた絵は生者さながらに動き回り、被写体が近くの絵に出掛けることもある。(そりゃ一日中そこにいるわけないもの、当たり前だろ?)

生前の校長たち自らが振る舞いや記憶を教え込むホグワーツ歴代校長の肖像画は、本人の言動をそっくり模しており、後継者を手助けすることができた。ただしあくまで校長の肖像画は一種の言行録、校長の業務を支援する機構にすぎない。

肖像画というのは文字通り、また隠喩的に二次元であり、画家が見た生きた被写体の表象に過ぎないのだ。