概要
遊戯王OCGである時期以降のカードやデッキに見られるようになった傾向が、それ以前の常識からは計り知れないほど別次元に達した頃から使用され始めた言葉である。
「現代」とは、先攻プレイヤーが1ターン目から強力な制圧布陣を敷けるようになり、「新時代」と言えるほどの不可逆的な断絶が意識されるようになったため、誰ともなく言われ始めて自然と定着した表現である。
現代遊戯王は以下のような特徴を持つ。
- サーチや召喚手段の多様化によって、1ターンに何回もカードを発動してどのような状況からでも盤面を固めることができる
- カードを使えば使うほど手札や墓地が溜まっていき、アドバンテージの概念が崩壊している
- 展開によって、フリーチェーンでの破壊効果や、相手の効果や発動を無効にする能力を持ったモンスター、魔法、罠を一気に複数フィールドに並べられる
- 墓地送りや除外されたカードが追加効果を持ったりデッキや手札に戻せたりしてリソースを循環できる
ざっくりと言えば、
「普通のデッキ」でも1ターンに何回も行動することでとても長い時間がかかるようになる。
最初のターンでやることは攻撃力の高いモンスターを出すだけだった昔とは違い、EXデッキから妨害能力を持ったモンスターを続々と呼び出したり、或いはサーチによって妨害魔法罠を呼び込んだりして、「なんらかの妨害札を用意してターンを渡す」というのがほぼ全てのテーマの標準搭載されている。もちろんこの中には相手に何もさせないようなものも含んでいる。
もちろんこのようなゲーム性となっている以上、「後攻は相手の展開を傍観するだけ」とはならない。先攻展開以上に凄まじい性能をしている後攻専用の返し札や、妨害効果持ちの手札誘発などで対抗するバランスとなっており、それらがない場合でもデッキの自力のみで先攻制圧を乗り越える事も可能である。
先攻だけを見て現代遊戯王と呼ぶ人もいるが、正確にはこれらの駆け引きを含めたものが現代遊戯王である。
詳細
呼称について
「現代遊戯王」が指す現代とは、この言葉が使われるようになった時点(概ね第9期頃)での「現代」を指す。
「現代」が指す範囲は時の流れによって移り続けるため、やがてこの呼称も名前がそぐわなくなる可能性がある。
現代遊戯王に至る経緯
あらゆる長寿運営ゲームと同様に、遊戯王OCGはインフレを繰り返し続けるカードゲームだった。
パワーカードは相対的な概念であるため存在すること自体は必然であり、過去も様々な強カードが存在していたため、強いカードの存在自体は現代遊戯王とは関係がない。
遊戯王の歴史を一望すればずっと昔から特殊勝利、除去、ロックカード、ワンキルが蔓延っていて、制圧は時代に関わらず存在していた。
現代遊戯王がそれ以前と比べて特異なのは、「先攻制圧」の強さである。
展開手段の強化によって手札の状況に寄らず1,2枚の初動札からモンスターや罠魔法による2-3妨害が立てられるのである。
ターンをこちらに返された時には、従来のデッキではもう何もできなくなっているため、伏せて次のターンにならないと発動できない罠カードによる妨害は遅いと見做されるようになり、変わって灰流うららに代表される手札誘発カードがメインデッキに組み込まれるようになる。
更には抹殺の指名者や墓穴の指名者といった手札誘発に対するメタも登場するなど混迷している。
「初手で手札誘発を引いていないのはプレミ」というブラックジョークが語られることもあるほどに先鋭化したゲーム性へと変わり果てている。
歴史
制圧盤面自体は第4-5期(2004年-2008年)のお触れホルスやロックバーン、パーミッションに見られており、「相手の行動を封じて勝つ」というコンセプトそのものはこの時期には確立していた。
現代遊戯王に繋がる、「エースモンスターを立てる」過程の高速化が発生したのがシンクロ召喚とエクシーズ召喚の登場である。
ドローに左右されるメインデッキではなく、即座に目的のカードがピンポイントで呼び出せるシンクロ/エクシーズモンスター、そしてそれをサポートするための下級モンスターを複数展開する手段の登場によって、1ターンに一度の召喚権に寄らない展開が可能になる。
この時期からモンスターが1ターンで何体も呼び出されるようになり召喚権の概念が崩れ始めた。
ソリティアが酷くなったと言われるようになるのもこの時期からである。
そして、第9期になるとカテゴリとデザイナーズデッキが強化され始め、テーマ内部でのサーチカードが増加し始める。
これによって、どのような手札でも理想の状況を目指して盤面を組み立てられるようになった。
さらに、第9期には相手ターン中に相手の行動を阻害する能力を持ったカードが有意に増加し始める。
第9期に至って「展開能力」「妨害能力」が同居したことで、今日的な意味における制圧=現代遊戯王の構図が完成を見る。
この時期はシャドールやEMEmといった展開や妨害に優れたデッキが跋扈した他、一枚からの大量展開という現代遊戯王特有のプロセスのハシリとなった十二獣も登場した。
第10期になるとリンク召喚が登場し、マスタールールの改正によって当初は環境の低速化が意図されたものの、エクシーズやシンクロに比べて素材縛りの緩さによって汎用性が非常に高いリンク召喚と、EXデッキからの召喚時に展開補助を行える水晶機巧-ハリファイバーに代表されるリンクモンスターによって展開ルートが非常に強力になって先行絶対優位の決定的な固定化と、ガチデッキなら手札誘発がフル投入されるなどの変化を見た。
第11期では、終盤に異常に突き抜けた柔軟な展開性能と先行制圧性能を持つスプライト、長大なソリティアで簡単に展開・制圧が可能なティアラメンツ、クシャトリラやビーステッドといったカードパワーが高すぎるカード群が環境を席巻した。
「対話」と「制圧」
当然、このような相手に何もさせないような状況で勝負が決まると、負けた側は理不尽で納得がいかない感じになる。
まして、長々と相手が展開するのをずっと見させられて自分の番がやっと回ってきたときにはもうセメントアップされてしまっているため試合自体がバカバカしく感じてしまうこともある。
シングル戦しかルールがなく、サイドデッキによる対策ができないマスターデュエルではさらにこの手の不満は見られやすく、ランクマッチが精神的に疲弊するという感想も多い。
これらに対して「対話がない」という不満を言うものも多いが、現代遊戯王のセオリーを理解せず、古い思考で作られた「対話を最初から諦めているデッキ」で挑めば当たり前という指摘もある。
公式でもそう言った層の為のデュエルロワイヤルセットという、第4期以前のカードを中心とし、毎ターンのドローフェイズの一枚のドローを大切にしつつ魔法や罠を使ってライフポイントを少しづつ削り合うデュエルをする「古き良き遊戯王」を再現したセット商品が発売されている。
テキストの変化
現代遊戯王期に入ると、耐性持ちモンスターや1ターンに一度の制限を加えてループコンボが成立しないようにしているカードが多く、「このカードは~~」「このカードの~~」「このカードが~~」という表記が大量に見られ、テキスト枠内で何度も使われているため初心者が現代遊戯王のカードテキストを読むとゲシュタルト崩壊を起こしてしまいそうになる。
なお、テキストこそ長くなっているものの、効果毎に番号を振られる、対象を取る/取らないの区別、チェーンを組む/組まない効果をはじめとして整備されており、テキストそのものは昔よりも圧倒的に読みやすく分かりやすくなっている。