友情・努力・勝利
『週刊少年ジャンプ』(WJ)は、全ての掲載作品にこの要素3つのうち「最低1つ」入れることを編集方針としているとよく言われる。
この原則は、同誌の前身ともいえる『少年ブック』から受け継いだものであり、元は小学校4年生・5年生を対象にしたアンケート(「一番心あたたまる言葉」「一番大切に思う言葉」「一番嬉しい言葉」)によって決められたものである。
たまに誤解されるが、「ジャンプの少年漫画はこの3要素を全て盛り込まなければならない」という訳ではなく、WJ連載作品でも全要素をまんべんなく兼ね備えた作品の方が少ない。
例えば『BLEACH』では「(主人公の)勝利」が、『ドラゴンボール』では「友情」が、話を追うごとに欠如していったと言われ、『ジョジョの奇妙な冒険シリーズ』も、大半は3要素のどれか一つが足りていないと評される事がある。
「『こち亀』のどこに友情・努力・勝利があるんですか?」という具合のツッコミがされることもあり、実際3要素の一つも入っていないジャンプ作品も結構多い。
ジャンプ漫画賞の公式アカウントでは、この3原則について「公式で掲げた原則ではない」「あってもなくてもどちらでもいい」とコメントしている。
特に軽視されやすいのは「努力」の要素で、近年のエンタメではいわゆる「俺TUEEE」のように、”努力”よりも“チート”が好まれる傾向にあるとよく言われ、ジャンプ作品でも主人公の成長の理由づけとして「現実では考えられない身体能力」、「何者かに特別な力を授けられる」、「親や先祖が英雄だったり、生まれつきのエリート」といった設定がしばしば持ち出される(主人公が上記の属性を持ち合わせた上で苦難に遭遇し、これを乗り越えるといったストーリーもよくあるが)。
とはいっても初めから無敵の主人公が何の苦戦もなく敵をぶちのめしていくだけでは何も面白くない為「血筋の覚醒」「長く辛い修行が必要なはずなのに、有り余る才能とセンスで一発で成功させてしまう」の様なパワーアップイベントが挟まれたことで修行を省略される事もあり結果として「友情や努力の結果勝ったのではなく、初めから強くなると定められた血統を持っている天才様に雑魚が刃向かったから蹴散らされた」という身も蓋もないものに見えてしまい、「才能、血筋、勝利」の三つ全てを兼ね備えてこそジャンプ漫画と皮肉を言われる事が多い。(他を抜き去ってあまりあるとんでもない才能と血筋を持っているのに全然勝たせてもらえない主人公もいるにはいるのだが)
この傾向は最近に始まった話でもない。ジャンプ黄金期を現出した編集者のひとり鳥嶋和彦(元WJ編集長)は「友情」「勝利」を「子供にとって正しい」としつつも、「努力」については「子供は努力なんか好きじゃない、むしろ大嫌い」「全く無意味ですね。あんなのはバカが言うこと」と、自ら雑誌のコンセプトをボロクソに否定している。
結果、大抵の作品は主人公が強くなる「努力」のプロセス自体こそ描かれているが、過程は飛ばす形で端折られ、必要最低限の描写に留められている(鳥嶋の言によると、修行シーンばかり見せられる読者が飽きて離れてしまわないように、とのこと)。
一方、近年のWJのヒットコンテンツである『鬼滅の刃』は、歴代のジャンプ作品の中でも珍しく、3要素の中で「努力」の見せ方に最も重きを置いた作品であり、「三大要素への原点回帰」と評する声もある。
この風潮により味方が天才ばかりになった事で「主人公組が苦戦していると颯爽と現れ敵をぶちのめすスタンドプレーの天才キャラ」が消え「その天才キャラが苦戦する敵に努力を重ねた主人公が勝ち友情の大切さを知った、何度も助けてくれた頼れる天才が万を辞して仲間入り」という王道展開も消滅してしまったが、逆に「味方側の天才達が寄ってたかっても勝ち目が見出せなかった大敵を、今まで碌な活躍出来なかったキャラの磨いた技能がピンポイントでブッ刺さり大金星」というベストバウト的展開が現れる様になった。
各原則
「友情」
味方のために尽くす、チームワークを重視する、味方の仇討をする、相手を思いやる(愛情)、などといった、行動を重んじるもの。
「努力」
一つの目標に向かって努力する。
「勝利」
敵に勝つこと、スポーツ・格闘などで勝利することを重んじるもの。
「友情・努力・勝利」に直接言及したジャンプ作品
とっても!ラッキーマン:各テーマを擬人化したキャラクターが登場。ただし、その描き方は「何事も無駄な苦労を背負い込む間違った努力家」「どんな手段を取ろうがとにかく勝利だけにこだわった卑怯者」「友情と言いつつ単に友達を便利屋扱いしている偽善者」と、いずれも皮肉られた方向性である(連載が進むにつれて真っ当なキャラに成長していったが)
ドラゴンボール:ドラゴンボール(劇場版)/「燃えつきろ!!熱戦・烈戦・超激戦」のみ
めだかボックス:登場する集団が『ぬるい友情・無駄な努力・むなしい勝利』をモットーに掲げている。