CV:日野由利加
概要
和服を着こんだ女性で本名不明。呪術師かどうかも不明。
彼女自身は「東京都立呪術高等専門学校」(0巻)の4話の真希の回想の中で、台詞だけとはいえ既に登場していた人物である。かつての真希に対して「あんたなんか産むんじゃなかった」「みんな真希みたいになっちゃダメよ」と直接言い放っており、かなり初期の頃から構想されていた人物である事が窺える(下手をすれば真依よりも先に構想されていた可能性も高い)。
本人は138話で、禪院直哉の付添人として彼の三歩後ろを歩く形で登場しており、直哉から娘二人である真依と真希を馬鹿にされながらも冷静に対応しつつ、女中のように振る舞っていた。
仮にも当主の弟の妻という立場ながら、家の中での立場はあまり高くないようである(禪院家を含む御三家は古典的な男尊女卑の価値観が当然のように蔓延している家なので、女性の立場自体が高くない)。ただし、躯倶留隊からは怖すぎると評されて恐れられていた模様。
0巻の台詞を見ても分かる通り、娘二人に対しては夫の扇同様に出来損ないとしており、実の娘である真希に向かって「一度でも産んで良かったと思わせてよ」と発言したりするなど、親子関係は完全に冷え切っている(当の真希も彼女のこの言動には慣れているのか無視している)。
しかしその一方で、上述の台詞と同時に真希が扇に誅殺される事を知った上で「戻りなさい!」と怒気を露わにしながら真希に引き返すように忠告するなど、無自覚ながらも愛情はまだ残っているのではという描写もある。そもそも冷たい言葉をかけながらも、家では娘との関わり自体は持ち続けていたらしく、真希の回想では悪い思い出としてだが初期から登場している(対して扇は娘の回想に登場すらしなかった)。
真希の方も彼女の背景を察していた為か、あるいは引き止められた件が引っかかっていたのか完全に肉親の情は捨てきれなかったらしく、扇を躊躇なく殺害したのとは対照的に彼女の事は殺し切れていなかった。
加えて夫の扇との関係も冷え切っているらしく、初登場回では同じ部屋に扇もいたのだが、互いに言葉はおろか目を合わせようとすらもしなかった。そもそもこのような家で扇自身はあんな人物なので、元々まともな夫婦関係があったのかすらも不明。実際に、下記する彼女が今際に見た情景の中でも扇の存在は一切なく、彼女は扇を家族とは認識していなかった事が分かる。
紆余曲折を経て、完全なる天与呪縛・フィジカルギフテッドに覚醒して、禪院家の主力を皆殺しにした真希を見て酷く怯えるが、真希から「あの時なんで『戻れ』って言ったの?」と静かに問われて思わず「…?……??何の話?」と唖然としてしまい、母の反応に失望した真希から喉元を斬られ致命傷を与えられる。しかし、扇を含む他の禪院家の面子よりは与えられた傷も小さく、即死はしていなかった。
その後は何故か包丁を持ち、同じく真希によって瀕死の重傷を負わされた直哉の元に現れ、男の三歩後ろを歩くような仕草で直哉の背中に包丁を刺し込む。そして、花畑で幼少期の真希と真依が戯れる姿を優しい笑顔を浮かべて見守る「幸せな家族の光景」を思い浮かべながら、「ああ…産んで良かった」と言葉を漏らして静かに息絶えた。
描写が断片的とはいえ、女性という身でしかも相伝の術式を継いだ子供を産めなかった事から、閉鎖的かつ封建的な環境で彼女が虐げられてきた事は想像に難くなく、それ故に心が壊れて娘に辛く当たっていた事が窺える。最期の行動と言葉は禪院家壊滅という全ての柵が消えた環境下でようやく解放できた、彼女自身も気付いていなかった本心だったのかもしれない。
その後、彼女が直哉にトドメを刺した事は、呪霊と化した直哉本人から真希に明かされる事となり真希を動揺させる。そして真希は同じく母親とのすれ違いで悩む加茂憲紀に「もっと話をすべきだったかもしれない」「結局母親が私達にとって何者だったのか分からないまま終わらせてしまった」と後悔の念を語った上で、彼に自分の母親とちゃんと話をするように促した。
※ここから劇場版のネタバレ
劇場版「呪術廻戦0」では、0巻での登場シーンがビジュアルなども含めてより具体的に描かれており、ビー玉で遊ぶ幼少期の真希に対して、前述の暴言を投げかけて真希に深いトラウマを与えている。台詞だけとはいえ元々0巻に登場していたので、原作では完全に渋谷事変から初登場した日下部篤也とは違って、劇場版先行登場と言えるキャラかは微妙である。