概要
ベルカ式国防術(べるかしきこくぼうじゅつ)は、自らの領内で防衛の為に核兵器を投下する術。PS2ゲームである「エースコンバット5」と「エースコンバットZERO」に登場するベルカ公国が本土侵攻を許した際、自らの領内に7発の戦略核兵器を投下する暴挙を行ったことが元ネタである。よほど印象が深かった為か「ベルカ式国防術」の名称がネット界隈で定着した。
ベルカ戦争・バルトライヒの決戦
仮想敵国オーシア連邦と軍拡競争を繰り広げていたベルカ連邦だが、領土の拡大による軍事費の増大に耐えきれず、東部の2共和国が独立してオーシアに対しても領土を割譲する結果となった。しかし諸問題の発覚によるオーシアに対する感情の悪化と東部の独立についての不満から、極右政党が第1党となってオーシアや東部諸国へ宣戦を布告した。しかし徐々に戦況は悪化し、ついに連合軍の本土侵攻が現実化する。
本土の侵攻を許してバルトライヒ山脈を盾に防衛を続けるベルカ軍は、連合軍の攻勢の構えに対して核攻撃を画策し、東部諸国に対する核攻撃だと思われていた爆撃機群は連合軍に撃墜された。別の部隊がバルトライヒ山脈周辺で7発を起爆し、周辺の街諸共1万2000を超える人命が失われた。
結果的にベルカ公国は戦争に敗北。連邦は解体されて領土の過半を失い、技術や人材の流出・戦争末期にはクーデターが発生するなど悲惨な事態に陥るものの、反対に世界は軍縮路線・国際協調へ歩んでいく。なお下地があったとはいえ流出した人員によって、再び戦火が煽られるという皮肉な事態が引き起こされている。
V1/レディオアクティブ・デトネイター
この際に使用された核兵器は「V1」と呼称される小型の戦術核爆弾であった。このV1の他に「レディオアクティブ・デトネイター」なる戦術核兵器が開発されていたという噂話がベルカ国内で広まっていた。
レディオアクティブ・デトネイターは手榴弾に似た外観で、100ヤード単位で爆発半径の調整が可能。上部のスライド式トリガーを動かすことで起爆するとされている。この兵器と「V1」が同じものであるとする説や、「V1」とは別物であるがそもそもベルカ戦争末期に自国領内で起爆されたのがこの兵器であるという説もある。
補足
勘違いしてはいけないが、ベルカ国内での核兵器の使用は過激派集団である「灰色の男たち」による独断であり、決してベルカ国民の総意では無い。ベルカ軍内部での反発も大きく、核を投下する命令を拒否して戦闘機を使用して逃走を図ったり、核使用を阻止すべく戦闘機で出撃し、爆撃機を追った者すら居た。要するに多くのベルカ人は当時自国内での核使用を望んでいた訳では無かったのであり、この件における責任は「灰色の男たち」にあり、「ベルカ人全体」を責めるのは適当では無いと言える。
この一件に加えて、その後の「灰色の男たち」の暗躍や、亡命したベルカ人が兵器開発に携わっていた事実からベルカ人全体が差別されるようになってしまっている。しかし支持基盤となるベルカの極右政党を失った「灰色の男たち」はもはやただのテロリスト集団であり、ベルカ人過激派で構成されているとはいえ、ベルカ公国による支援なども受けていないはずであり、大半のベルカ人は無関係である。
また亡命したベルカ人の技術が兵器開発に使われていた点についても、ベルカ人を差別してよい理由には到底なり得ない。『5』の環太平洋戦争終結後は「灰色の男たち」を裏で支援していたノースオーシア・グランダーI.Gの社長が逮捕されて「灰色の男たち」は後ろ盾を失い、もはやベルカは謂れなき誹りを受ける必要は無くなったはずだった。
その後のベルカ人
ベルカの亡命技術者はアイガイオンといった兵器の開発にも関わり結果として戦果を招く一端を担っていた事もあったが、隕石迎撃砲であるストーンヘンジの開発にも参加しており、世界を救う計画の一翼を担っており、ベルカの技術は争いにばかり利用されてきた訳では無い。
最終的にはストーンヘンジも戦略兵器として転用されてしまったが、これは別にベルカ公国やベルカ人のせいではない。事実『04』ではストーンヘンジの軍事利用に反発した技術者たちは旅客機を使ってISAF側に亡命を行っている。
『7』においてはエルジア国内でベルカ人技術者が無人機の研究を行っていたことが戦争の激化の一端となり、アーセナルバード迎撃の為に復旧させるにあたってストーンヘンジに携わった技術者達がオーシア軍に協力しているが、その後の成り行きを見るからに人類を救うことにも貢献し、ベルカ人が自らの手で後始末を付けることにも成功している。
ちなみに灯台戦争終結後はノースオーシア・グランダーI.G.が閉鎖となり、ベルカの名誉回復も待たれる事態となっている。
リアルで考えられていたベルカ式国防術
冷戦時代にソ連がヨーロッパの侵攻に対し、ヨーロッパ諸国へ投下される計画があった。使用されるのはアメリカ軍の核兵器だが、ニュークリア・シェアリングによって西ドイツ空軍が運用しており、西ドイツ自身が承知の上での運用とは言え、文字通り一旦荒廃した自らの国に自らの手で核を投下する事を半ば強要する悪魔の所業である。
ただしソ連のプロパガンダによりそのような手段を用いないと侵攻が阻止できないと思われていた事・仮にアメリカが核を使用した場合はアメリカによる核攻撃で次の世界大戦の勃発となりかねない事・戦後に西ドイツ国民の恨みがアメリカへと向く事が想定される為に罪を共有するという面もあり、否定できない部分もある。
スイスは防衛の為に領土内で核兵器を使用する事も検討されており、1988年12月に配備計画を廃棄するまで自主的な開発と他の国で製造されたものの導入が検討されていた。現在でもアメリカによるニュークリア・シェアリングは継続しており、ベルギー・ドイツ・イタリア・オランダ・トルコはその対象国である。ただしイスラエルは不明で、あえてどちらとも取れる立場を取っている。
他の創作におけるベルカ式国防術
永井豪による漫画版「デビルマン」の終盤で、デーモン族の大侵攻に遭った当時のソ連が自らの領内に核兵器を使用する場面がある。
余談
『リリカルなのは』シリーズには「ベルカ(Belka)」というドイツモチーフの異世界、及び「ベルカ式」と呼称される魔法体系が登場する。
『エースコンバット5』は2004年10月、『エースコンバット・ゼロ』は2006年3月の発売である。『リリカルなのは』シリーズにおいて「ベルカ式」の語が登場したのは2005年10月の『A's』、本格的に登場したのは2007年4月の『StrikerS』。つまり「ベルカ」という名前自体はエースコンバットが初出であるが、「ベルカ式」という言い回しは『リリカルなのは』が元ネタと推測される。事実同作のスラングに「ベルカ式作画」というものも存在する。
一部ファンからは、(いくら山岳地帯とはいえ)核兵器を7発も起爆した割に、1万2000人という犠牲者はあまりに少ないという指摘もある(現実における広島への原爆投下では少なくとも10万人以上が犠牲になっている)。