概要
『THEビッグオー』ACT.09に登場。
かつてロジャーとビッグオーに懲らしめられ、軍警察に逮捕されたパラダイムシティの犯罪者、ジェイソン・ベックが手下に命じて建造させていたメガデウスの一機。
正確には、パラダイムシティの現存技術で作られた大型サイズ人型機械『ヘビーメタルユニット』に不完全なメガデウスのインターフェース技術を組み込んだレプリカ機である。
外見はベックの好む、ほぼ金一色で統一されたカラーリングが目立つ外装で、ベックの頭文字『B』が刻まれたバックルの付いた寸胴なボディに王冠を思わせる刺々しい頭部に割合スマートな両足、ほぼ常に上げっ放しな指先が銃口となった鋭い両腕を持つ。……正直言って、三下の悪役臭い絶妙にカッコ悪いセンスの外見で、ほぼ黒一色ながらスタイリッシュなビッグオーとは分かり易く正反対である。
主な武装は、指先を揃えた手を高速回転させて発射する『フィンガービーム』。
また機体重量は割と軽い様で、両足を動かしての走行スピードは中々速い。これと上半身が180度回転する機構を利用する事で、敵機から走って逃げつつ上半身に内蔵したミサイルを発射、不意打ちを仕掛ける攻撃も行える。
そして本機はレプリカ機ながら、ビッグオーら『ザ・ビッグ』と同じく有人操縦式のメガデウスであるのが最大の特徴。とはいっても使用技術を知るベックのメモリーが不完全な影響で、上半身と下半身・武装の操作役3人を乗せての連携で動かす面倒な仕様となっている。
ベックは自身が逮捕・投獄された際に救出して貰う為の保険として、本機の建造を手下2人に命じていたのだが、人目を避けての建造だったからか必要な資金やパーツが足りなかったらしく、ワイズ・グループに営利誘拐を吹っ掛け資材を調達。何とか完成に漕ぎ着けて刑務所を襲撃し、ベックを脱獄させる。
その後は建造場所でもある、西13番ドーム周辺の倉庫街へ隠されていたが、乗り込んで来たロジャーとドロシーを策略で仕留め損なったベック一味が最後の切り札として起動(※地下から出てくるも途中で引っ掛かってもたついた)。しばらくは手負いの2人を悠然と追い回すが手近な平屋に逃げ込むフリをしてロジャーがビッグオーを呼び出し搭乗、対峙。それを見て踵を返して逃げると見せかけ、追って来たビッグオーへ不意打ちのミサイルを直撃させ爆炎に包む。
しかしそんな物で怯むビッグオーでは無く、直後爆炎の中より放たれたモビーディック・アンカーが胴体に打ち込まれ、そのまま引き寄せられそうに。すぐにフィンガービームでアンカーの鎖を切ってビッグオーを転倒させるも、追撃の第二射は相手の頭部クリスタルに弾かれ、近くの西13番ドームへ跳弾。ドーム表面を破壊した。
そして立ち直ったビッグオーは、走りつつの防御姿勢でビームを凌ぎ切ってからスライディングの要領で地面に落ちていた鎖を掴んで引っ張る。それへ繋がっていたベックビクトリーデラックスは強引に引き寄せられて頭部を鷲掴み、すかさずサドン・インパクトを叩き込まれベック一味が収まっているコクピットがある頭部以外を粉砕、撃破された。
そして、頭部は軍警察の本部オフィス前に突き出され、中でのびていたベックは手下諸共逮捕、あえなく牢獄へ逆戻りとなった。
結局、本機がオリジナルのメガデウスたるビッグオーへ善戦出来た様に見えたのは、冤罪を着せられたロジャーがそれを晴らすべくベックを生け捕りにする必要があったから。仮に操縦するベック一味を考慮しないのであれば、ビッグオーとロジャーはミサイルの爆炎に包まれた時点で多彩な遠距離武装で反撃して逆に蜂の巣とする選択も取れたのである。
皮肉にも、ベックはロジャーを社会的に破滅させる罠を張った結果、その罠を脱したロジャーに命を救われる事となったのだった。
関連人物
本機の設計者兼メインパイロット。操作指令・武装管制担当。
保険として建造を命じ、完成したビクトリーデラックスの力で刑務所より脱獄するも、警備網を正面から破る派手過ぎるやり方に「ったく、もう少しスマートに出来んのかねぇ…」と愚痴を漏らす(※実際目立ち過ぎて脱獄の情報が早く広まり、潜伏がし辛くなった)。
その後は手下と共に身代金の要求に参加するも、そこで電話相手がロジャーである事に気付くや作戦を変更。ロジャーを金の運び役にして指定場所に誘い込み、そこを同じく誘導した軍警察に包囲させる事でロジャーを犯罪者に仕立て上げ、かつてネゴシエーションで出し抜かれた恨みを果たそうとする。
しかしロジャーは罠を自力で突破し、逆に自分達の潜伏場所へ突入される事に。だが咄嗟の機転を働かせ、ドロシーを操ってロジャーを抹殺する策略を仕掛けるも…。
因みに投獄中に髭が伸びたので、脱獄後は見た目に威圧感を出す為か顎と頬下部分を残したスタイルに髭を整えている。物語終盤で再びこのヘアスタイルへなった事から、後年の書き下ろしイラストや外部出演でベックが描かれる時はこの頃のビジュアルが採用される事が多い。
- ダヴ
ベックの手下その1。上半身操作担当。
オカマの為か声がなよなよしく威圧感に欠けたので、営利誘拐では裏方である人質の監視役を務めた。
- Tボーン
ベックの手下その2。下半身操作担当。
営利誘拐では連絡役を務め、まんまと身代金200万ドルとヘビーメタルユニットのパーツをせしめる事に成功。ビクトリーデラックスを完成させてベックを脱獄させた後、営利誘拐の連絡役を譲っている。
後に潜伏場所の壁をロジャーが愛車でブチ破った際、唖然としている所で壁の破片(レンガ)が顔面に直撃した。
- ダンディ・ワイズ
ベックの手下共が営利誘拐のターゲットにした企業、『ワイズ・グループ』の総帥でありドーム内に豪邸を構える富豪。とある事情から息子に過保護であり、営利誘拐された息子を早く助け出そうとするあまり犯人の要求を鵜吞みにする、犯人を根負けさせるハッタリを仕掛けたロジャーの行動に癇癪を起こして追い出す、心配の余り声が裏返ってしまう等の空回りを見せた。
その後、事情を闇ルートで掴んでいたベックに脅迫される形でロジャーを冤罪に嵌める片棒を担がされるも、罠を自力で突破し情報を求めてやって来たロジャーと再会。彼が推理によって事情を悟ったのに答えて真実を語り、ベック一味の潜伏場所を教えた後は軍警察に事件のあらましを伝えた様子。
- フランシス・ワイズ
ダンディが過保護気味の愛情を注ぐ息子で、パラダイムシティが過去の記憶を失ったちょうど40年前の日に生まれた。営利誘拐に遭い人質へなっていたが、ベックがロジャーへ冤罪を着せる目的の為に銃撃され重傷を負うも、直後で軍警察に救出・応急処置をされて命は助かった。
彼の容態をロジャーとドロシーも確認したが、そこでドロシーがフランシスの目の色が父親と違って青い事に気付き、それを切っ掛けとして2人はワイズ父子の秘密に気付く事となる。
- メアリー・ワイズ
ダンディの亡き妻でありフランシスの母親。息子にも受け継がれた青い瞳の持ち主だが、実は彼女は子供を宿した身で40年前にダンディの目の前に立っていた人物でもあり、夫とは記憶を失った者同士で惹かれ合い結ばれた物の、フランシスを産んで間もなく亡くなり夫へ残酷な真実を突き付けたままこの世から去ってしまった。
ダンディが息子に過保護だったのはこれに由来していて、同時にこの真実が世間に知れたら息子が謂われ無き中傷に晒されるのではと恐れていた事を独白している。
ダンディに営利誘拐のネゴシエーションを頼まれる格好で事件へ関わる事に。ハッタリで交渉金額を値切り、犯人にもう金を引き出せないと根負けさせ人質の解放を促すやり方でネゴシエーションを進めた。
初手で冷静さを欠いたダンディの癇を損ねて「貴様はクビだ!!」と悪態を付かれて追い出されるも、この手の依頼人には慣れているとばかりに自宅でドロシーをモデルにモディリアーニ風の絵を描いてダンディからの連絡を待つ余裕も見せている。
しかし、営利誘拐にベックが絡んだ事で事態は急変。ベックより掛けられた自分の冤罪を晴らすべく一味の潜伏場所に突入する事へなるも、そこで倉庫内のクレーンで愛車を潰された上、操られたドロシーにベアハッグで締め上げられ命の危機に晒される事に。
それでも、運良く危機を脱してベック一味の捕縛に成功したが、自分だけでなくドロシーまで巻き込んだベックの卑劣な所業に流石のロジャーも怒りを抑え切れず、残ったビクトリーデラックスのコクピットを中のベック一味諸共ビッグオーで握り潰し掛けた。しかしそうなっても殺意をギリギリで堪え、ベック一味を軍警察に突き出す選択を取ったのは流石であろう。
- ダン・ダストン
脱走したベックが報復に現れるのではと考えてロジャー邸を訪れるも、以前目を付けていた酒が別の来客時に飲んでしまわれていたのを聞いて愕然とする。
その後はベックに誘導されてロジャーを逮捕しようとするも、愛車の特殊機能を駆使されて包囲網を抜け出され見失う。しかししばらくして、ビッグオーがビクトリーデラックスのコクピットごとベック一味を軍警察オフィス前に置いて立ち去ったのを困惑の顔で見送る事となった。
ロジャーに同行する形で事件に巻き込まれる事へなったが、その後半で倉庫街の機材である電磁石クレーンに吸い寄せられて身動きが取れなくなった所にベックからメモリーサーキットへコントロール装置を付けられ、ベックに操られるままロジャーをベアハッグで締め殺す真似をさせられた(※「ロジャー。大好きなロジャー」と言いながら力を込めていく様が何とも悪趣味)。
…が、コントロール装置に組み込んでいたヒューズがもたず制御系統がショート、ロジャーが限界になる寸前で昏倒・気絶した為最悪の展開は避けられた(後にロジャーは、ドロシーの方から装置をショートさせたと解釈している)。
なお、この一件でワイズ夫妻のあり方を知ったドロシーは、恋に纏わる回答の難しい質問をロジャーへ投げ掛けているが、その質問の内の一つは物語終盤で回答が下される事になった。
漫画版
有賀ヒトシによるコミカライズ版では、#10「BIG O VS BIG O」および#20「IN SIDE OF DARKNESS」に登場。特に#20では「天使騒ぎ」で大金を得たベックが技術工員を雇って機体を改造させるという展開があり、MSVの如く多数のバリエーション機が登場している。なお、ベックはスーパーベックにのみ搭乗。他の6機は漫画オリジナルの部下、トム、ヤム、クンの三人組だけで操縦していた。
スーパーベック
#10に登場。ベックがエンジェルに提供させたヘビーメタルユニット。基本的にはアニメ版のベックビクトリーDXと同じデザインだがビッグオーに似せた外装を被っており、偽ビッグオーとしてシティを荒らしまわった。外装は被ったままでもフィンガービームが発射可能なほか、肩にミサイル発射口を備える。ベックはドーム住人を人質に取って身代金を要求し、ロジャーが生身で交渉に現れたら攻撃、ビッグオーに乗ってきたら搭乗者の正体をバラそうと企んでいたが、ノーマンがロジャーの変装をして現れるという策に騙され、本物のビッグオーと戦う羽目になってしまう。
ビッグオーとの戦闘ではフィンガービームを防がれ、ミサイルは発射寸前に発射口を押さえつけられて自爆。外装が崩壊して正体を露呈した挙句、サドン・インパクトで破壊された(ベック一味は頭部の脱出ユニットで脱出)。#20ではボディを修復されてシティを襲撃するが、再びサドン・インパクトで破壊された。
ベックビクトリーDX
#20に登場。天使騒ぎで莫大な資金を得たベックが大量の技術工員を雇い、スーパーベックの頭部脱出ユニットを流用して新造した改修強化型。デザインはスーパーベックおよびアニメ版ベックビクトリーDXと同じだが、上半身の急速旋回能力や、ミサイル(ファイヤーバード)と粒子ビーム(フィンガービーム)の同時発射能力を得て強化されている。アークラインで破壊された。
ベックウルトラDX
スーパーベックの頭部脱出ユニットを流用して新造した改良強化新型。ビクトリーDXに比べて全体の平均能力が増しているとされるが、僅か一コマで破壊された。外見上の特徴は腹部や上腕部に施された追加装甲。
ベックグレートDX
スーパーベックの頭部脱出ユニットを流用して新造した夜間戦闘型。夜闇に紛れる為に特殊装甲で全身を覆っているが、その為に耐久性が低下しており、ビッグオーのパンチ一撃で破壊された。外見上の特徴は腹部が透明なパーツで覆われている点と、そこから見える歯車。
ベックスペシャルDX
スーパーベックの頭部脱出ユニットを流用して新造した市外強襲型。胸部には小出力のビーム砲、腕には格闘用クローと鉄球を備えるほか、全身の装甲は強化され、機体全体が角ばった形状になっている。一度はシティの襲撃に成功したらしいが、稼いだ金はベックがすぐ使い果たしてしまった。その後ビッグオーと交戦して破壊された模様。
ベックマキシマムDX
スーパーベックの頭部脱出ユニットを流用して新造した奇襲格闘型。全身をジャバラ状のパーツで構成し、間接数を増やす事で機動力と格闘戦能力が大幅に向上したが、歩行するだけで搭乗員が乗り物酔いを起こすほどに操作性が悪化している。武装は両腕の小型クローのみ。登場したコマでは既に爆発してしまっている。
ウルトラベックビクトリーDXグレートスペシャルマキシマムタンク
スーパーベックの頭部脱出ユニットを流用して新造した大型ビーム兵器装備型ヘビーメタルユニット。キャタピラを備えた四脚や背部のパラボラアンテナなど、タンクと言うよりは某東宝特撮映画の超兵器に酷似した形状を持つ。胸部には二連装の大砲を備え、両碗は伸縮式のマジックハンドとなっている。背部のパラポラアンテナから光学兵器ビクトリービームを発射しようとするも予算の枯渇により発射に必要な出力が確保できず、為す術もなくビッグオーに殴り倒されてしまった。このとき遂に頭部脱出ユニットが破壊されたので、スーパーベックバリエーション最後の機体となった。そのまま三人組も捕縛されそうになったのだが、地底から突如ビッグオーより遥かに巨大な腕が現れ……
余談
スーパーロボット大戦シリーズでは、もう一つのベックの乗機であるベック・ザ・グレートRX-3を差し置き活躍の機会が多い。
敵ユニットとして量産されるのは勿論の事、第3次スーパーロボット大戦Z天獄篇では隠し要素の一つとして終盤に味方機として参戦。ユニット性能はお察しだが、装備している強化パーツが一級品なので入手条件を満たす価値はある。
関連項目
ベック・ザ・グレートRX-3:本機のバージョンアップ版となるレプリカメガデウス。こっちは非常に整った製造環境で造られたが……。