ファリン・トーデン
ふぁりんとーでん
人物
本名:ファリン・トーデン
種族:トールマン(人間)
所属:ライオスパーティ
年齢:23歳
CV:早見沙織
所属はライオスがリーダーを務めるパーティー。リーダーであるライオスの妹でもある。
髪色は亜麻色で瞳は琥珀色だが視力が悪いため目を細めていることが多い。兄に似て体格が良く、身長はメンバーではライオスとマルシルの中間。
頬が常に赤らんでいるが、これは肌が薄く色白で内側がうっすら見えているためであり、恥ずかしがっているわけではない。
人格
兄であるライオス同様、浮世離れした胡乱なところもあれど基本的に人当たりのよいマイルドな性格である。虫や一部の魔物など一般には眉をひそめるような対象にも隔てなく、フラットに接している。情が薄いというわけでもなく「他人を犠牲にしてでも、自分の大切な人には生きていて欲しい」と断言したりと風変わりな面はあっても情操は人並みであることが窺える。
- 駆け出し時代の当時、「かなり儲かる」とされていた金剥ぎの一行に護衛として参加しながらも、無報酬で労働搾取されていたというエピソード、ケン助を”かわいい”と評する感性など良くも悪くも、価値観形成にはライオスの影響が大きい。
- 故郷の周辺に生息していた「山の民」(発言の内容から魔物や亜人ではなく統治機構に組み込まれていないトールマンの共同体のことらしい)は話が通じない野蛮な手合いとして兄共々「見逃しても問題を起こすだけだし(殺すしかない)」と言い切るなど、無分別に優しく接する訳では無い。生きるために割り切るところはしっかり割り切っている。
能力
魔術
職業は魔術師で、防御魔法や治癒術、除霊術などプリースト系の魔法に優れる。死霊に対してさえ直接攻撃を良しとせず、慈愛を以て接するという信念を持っている。チルチャック曰く「霊の扱いがうまかった」。
その魔術の才能は天性のもので、魔術学校始まって以来の才女と呼ばれたマルシルをして「本当にすごかった」と言わしめる技量の持ち主。
幼い頃、魔術を何も知らない状態で、ありあわせの木の棒を使いライオスに取り憑いた悪霊を追い払うことができているほどだが、それが結果的に後述の村での迫害に繋がってしまった。
天才肌にはありがちな感覚派で、魔法の組み立て方を理論立てて説明するのは苦手。ライオスは彼女から回復魔法を習おうとしたことがあったが、その教え方は
「そしたらなんか良い感じのトコで ダッとやってドーン!!」
というものだったので、よくわからなかったとぼやかれている。
来歴
村時代
幼い頃から兄のライオスと野を駆け遊んでいた。そのおかげか魔物やダンジョンへの抵抗感が薄く、魔物を一方的に排除する事を良しとしていない。自然の法則や精霊の性質、扱い方を、理屈ではなく肌で感じ取っている。
村にいた頃から霊術の才能に優れていたが、それ故にファリンは周囲から疎外され、そうした村人の排他的で狭量な態度と妹を庇いもしない両親に反発を覚えたライオスは、最終的にファリンは村を出ていくように親から言われたことでついに我慢の限界を迎え、軍学校に行くという名目で自身の方が先に村を出ていってしまう。
もっとも、ファリン自身は精神が丈夫なこともあってあまり気にしていなかったようだが、この経験はライオスの人間観に影を落とすことになった。
学生時代
兄が村を出てから1年後、親の取り決めもあって自分も村を出て魔術学校に入学。故郷の田舎とは異なる生活になかなか馴染めず、友人もなく、いつも泥だらけの劣等生と見做されていた。
実は、泥だらけなのは学校近くの天然のダンジョンでサボっていたためであった。やがて”ダンジョンの生態系”を実地で学び取ったファリンは、授業で誰もが認める才女マルシルを上回る成果を発揮。これがマルシルとの親睦を深めるきっかけとなった。
その後、ライオスの再就職先である隊商に同行する形で学校を抜け出し、卒業と安定した就職先までかなぐり捨ててライオスと一緒に旅に出てしまう。そして本作の舞台となるダンジョンのある「島」へ訪れた。そこで金剥ぎ(ダンジョンの建物に塗布された金箔を剥ぐ職業)の一団に参加(3年前)し、冒険者としての経験を積んだのち、ライオスとともに新しいパーティを立ち上げた。
その確かな実力と浮き世離れした二人の人柄から、冒険者達の間でも一目置かれる「トーデン兄妹」として名が知れるようになった。
作中での活躍(ネタバレ注意)
物語冒頭、パーティとレッドドラゴンとの戦いにおいて、全滅の危機に陥った皆を生還させるために自ら囮となる。地上への帰還魔法には成功するものの、自らはレッドドラゴンに喰われてしまった。
しかし、レッドドラゴンは長い休眠期の間は食べた物の消化が進まないという生態、かつこのダンジョンは一種の呪いの支配下にあり、魂が体から離れにくくなっているため、遺体があれば蘇生可能という希望があった。完全に消化される前に彼女の遺体をドラゴンから取り出し、蘇生術を施すためにライオス一行はダンジョンへと戻っていく。
ライオスたちが苦労の末にレッドドラゴンを倒した時には、すでに消化が進み骨だけとなっていたものの、ドラゴンの血肉を素材に使うことで辛うじて蘇生に成功、感動の再会を果たした。
その直後、センシが誤って爆発事故を引き起こしかけたのを見て、詠唱もなしに強力な防御魔法を発動するなど、異常な魔力の高まりに自身でも驚く。
ドラゴンの肉を使った料理には大喜びで舌鼓を打ち、その他の魔物食の話にも目を輝かせて聞き入っていた。ケン助の正体を明かされた時も、その第一声は「かわいい」であり、「有肺類……!?」と興味津々の反応を見せた。エクソシストとしての霊感も健在で、廃屋にいた少女の霊にあいさつし、宿泊の許可をもらっている。
関係性
- ライオス
実の兄。前述の通り村から出て行った後しばらく会えなかったこともあり、どこで何をしていたか気がかりだった模様。
実際魔術学校では最初こそ劣等生扱いだったものの、次第に才能が周囲に認められ徐々に充実した生活を送れたファリンと違い、軍には馴染めず脱走してから、しばらくは商隊の雑用などをでその日暮らしをしていたライオスの方が生活としては大変だったこともあり、下手すれば二度と生きて会えない可能性があったことを考えるとその心配も宜なるかなというところ。
島のダンジョン攻略に着いていくといったのも再会したライオスが窶れ切っていたためであり、ここで別れたら今度こそ生きて会えないかもしれないと言う危機感があったからかもしれない。
実際ファリンは冒険者にならずとも生きていく道はいくつもあったものの、ライオスはファリンがいなかったら冒険者としても苦戦していた可能性が高い。
それもあってか兄妹の絆は固く、物語最初にドラゴンに敗北し地上で目覚め、ファリンがいないことを伝えられると「今すぐ助けに行く」と即決、協力を申し出たメンバーの装備を売って資金とし、一人でダンジョンに潜ることを提案した。
竜の逆鱗を突くためなら自らの脚を犠牲にできるし、蘇生のために禁忌である黒魔術が必要となった時も迷わず決断。蘇生した妹を狂乱の魔術師に連れ去られると満身創痍のまま動き出そうとするなど、妹への思いは強い。
幼少期のファリンは兄を「兄ちゃん」と呼びくっついて一緒に行動していた(成長してからは「兄さん」)。どんな相手とも紳士的に接する彼が、唯一砕けた口調で喋り、指図する相手はファリンだけ。ファリンを村に置き去りにした形となったことを悔いており、マルシルと出会うまで一人で食事をとっていただろうファリンの姿を思い胸を痛めるなど、心優しい兄である。
「ファリンがいたら今頃こんなおいしい物は食べられなかったろうな」と発言してしまったのは、口下手な彼らしいご愛敬。
実力は高い、兄妹・仲間想いな性格、意図してではないが肝心なことを遅れて話す、魔物食に忌避感が無く動く鎧を食べたいと言い出す、魔物に対し興味を示し(『迷宮グルメガイド』も幼少期に兄に読ませてほしいとせがんでいた)、復活した際に残ってしまった赤竜成分を「すごくいい」と言い出すなど、総じて言えば下記にもあるが似たもの兄妹である。
- マルシル
魔術学校での精霊の繁殖実験において、ほぼ状態を維持して「上出来」と褒められたのに対し、ファリンは大繁殖させてしまい、マルシルにショックを与える。
実はファリンの成功の原因は「精霊がいっぱいいる場所」(=天然のダンジョン)を見つけて参考にしたことにあり、それはバッタを見つけるとはしゃいでとっ捕まえ、キイチゴを見つけると大喜びで即食べるという、旺盛な好奇心の産物であった。やはり兄妹なだけあって、魔物マニアに通じる性癖があるようである。
しかし物事の一面のみにとらわれず、生態系の循環を俯瞰的に見ることができるファリンの視線は、ダンジョンの魔力を利用することだけしか考えず、魔物とみれば他への被害を考えずに焼き払おうとしたマルシルに、ダンジョニウムの何たるかを悟らせた。
ライオス同様ファリンのことは強く意識していて、白骨死体の状態から蘇生するために“専門”の古代魔術(黒魔術)を使う。死んだドラゴンの肉を使うことを提案したのも彼女。
- シュロー
ある日の野営中、並みの女性なら気味悪がるであろう芋虫を、まるで宝石か何かのようにうっとりと愛でているファリンの横顔を見て「一発で恋に落ちた」。後にシュローは彼女の兄であるライオスに対し「あれほど魅力的な女性は他にいない」と評している。
ファリンへの想いを募らせた挙句、食事の約束もそこそこ(空気を読まない兄の邪魔もあって)にプロポーズしたが、話が急すぎたため考え中ということで保留され、返事を待っていた。
彼もまた、ダンジョンから生還するとファリンを助けるために「身内」のニンジャと共にダンジョンに潜っていた。
またファリンは夢魔(ナイトメア)に襲われたシュローの心の傷を守り、助けたことがある。
事態が解決した後日談では、数日後に故郷のワ島へ帰る前に「決して不自由をさせないから一緒に来てほしい」とプロポーズの答えを聞くも、丁重に断られた。
本人もどこかこうなることは分かっていたようで、その答えを聞いて潔く身を引いている。
なお、事の一部始終を盗み見していたライオスたちは、マルシルとチルチャックは「自分がファリンなら断る」ナマリは「ノーコメント」として、全員シュローが振られる方に賭けていた。
ただ一人ライオスは「自分がファリンならOKする」となっており、ライオスは東方群島への興味も大きかったため、最後はファリン関係なく自分がシュローについていきたいと言い出していた。
ライオスの世間とのズレっぷりとシュローへの一方的な好感度の高さが顕になった一幕であった。
- 両親
村でファリンへの迫害を止めなかったことから、ライオスは両親とは不仲ではあるが、ファリン自身は魔法学校時代から冒険者になった今に至るまで常に手紙を書いて近況の連絡を取っているほど良好。
物語が終わった後日談でも、すでに自分達に起きた出来事は手紙で報せており、その上で自分を応援してくれているようだと語っている。
事実村での迫害は放置したが、村長という立場上自分の娘だからと迫害を抑制することは小さな村では逆に危険であり、父親本人はファリンの身を案じて魔法の識者に話を聞き、きちんとした施設に預けた方がいいという助言を得たことで魔術学校への入学を決めていた。
「(村人たちからの迫害もあるし、下手にそれを止めれば内部分裂の危険もあるし、魔法を扱う術を学べる魔術学校へ行くために)村を出て行け」
という具合で肝心の理由を語らず結論だけ告げてしまったため、当時のファリンは泣き出し、ライオスは憤慨する結果になったが、今のファリンは事情も含めて理解しており、父親も余裕がなかったのではと語っている。
母親の方は体が弱く、娘が特異な体質だったことは自分のせいだと思い込んで数日寝込んでしまい、娘の髪を切ったり(長い髪には魔力が宿るため)、薬草風呂に入れたり、自己流のお祓いをやってみたりと、母親なりにできることをやっていたようである。ファリン自身は母親と色々できて楽しかったと語っているが、客観的には怪しげな儀式に没頭しているようにしか見えず、ライオスはまたもショックを受けた。
前述の通り迫害はあったものの、大っぴらではないにせよ両親はファリンを守るよう動いていたため、嫌な思いはしていなかったと言う。尤もこれはファリンが非常に前向きだからであり、真意を知らされていないライオスが勘違いするのも仕方がなく、彼はファリンが迫害されない居場所を作るために金を稼ぐ目的から黙って村を出ていってしまった。
ファリンからするとむしろライオスが自分に黙って村を出ていたことの方がショックであり、親子揃って悪意はないが肝心な部分を話さない・話すのが遅れるお陰で大変なことが起きると言う癖のようなものは子供たちにも受け継がれている。
ライオスはファリンとは似たもの兄妹なら、こちらとはキチンと(悪いところが)似たもの親子なのは間違いない。
事の次第をライオスと二人の視点から聞いたマルシルは、親子揃ってファリンを思いやりながらも言葉足らずなおかげで色々拗れている現状に、ライオスたちの両親よりも年上の自分がなんとかしなければと張り切っている様子。
- レッドドラゴン
ファリンを喰った魔物にして物語のキーパーソン(ドラゴン?)。物語序盤はこのレッドドラゴンを倒してファリンの遺骸を回収し蘇生させることがライオス一行の最大目的であった。
- 動く鎧
実は『ワールドガイド』にて兄妹が新人だったころに襲われた際(本編6話)、ライオスが死亡した後ファリンも斬られ、失血死により初の死亡を体験していたと判明。本編中たびたび食べたがっていたのはこの経験からかもしれない。
余談
- 演者の早見女史は人魚の声も担当している。
- 兄と同様に故郷ではかつて婚約者がいたが、村を出て魔術学校に通うことになったために破談になっている。
- キメラ化して以降(最終話で蘇生後も含む)は目を細めることが無くなっているが、『ワールドガイド』によればキメラ化の影響で視力が良くなったそうである。
- コミックス第5巻で振りかざしている肉叩きハンマーは本編で使用している武装ではない。調理器具を持たせるパターンに則ったものである。