概要
前線航空管制とは、戦闘地域で行われる航空管制のことである。
英称Forward Air Controlを略して「FAC」とも呼ばれる。FACを行う管制官は前線航空管制官とも呼称される。
主に戦闘地域で管制官が地上部隊に随伴し、味方機に近接航空支援を要請する際などに無線機を用いて行われる。近接航空支援とは、地上部隊を支援するために航空機が行う火力支援攻撃のことで、伝達ミスによる誤爆を防ぐためには地上部隊からの正確な誘導が必要になる。また、正確な攻撃が行うか見分けるためのBDA(爆撃効果判定)を行う場合もある。
地上戦では非常に重要な役割を担う存在だったため、ベトナム戦争ではアメリカ軍のFACがスナイパーの標的になることも多かった(FACは管制用の無線機を背負っているので目立ちやすいというのも原因だった)。
FACを航空機に搭乗させ、上空から管制を行うA-FAC(Airborne-FAC:機上前線航空管制官)やFast FACと称されるFACもあるが、管制のために敵の上空を低空飛行するため撃墜されることも多く、危険性の高さでは地上要員のFACとさして変わらない。
この他にも、飛行場がない場所へと味方機を離着陸させるため、文字通りの管制官としての役割を担うこともある。
例えば東日本大震災では、救援に駆け付けた在日米軍が仙台空港に救援機のMC-130コンバットタロン輸送機を向かわせた際、FACが着陸管制を行っている。仙台空港は被災によって空港機能が停止し、滑走路も津波で瓦礫だらけになったことから、FACがパラシュートで空港に降り立ち、瓦礫のない部分の滑走路にMC-130を誘導して着陸させたのだった。
アメリカ軍では近年、航空機だけでなく砲兵隊などの他の支援攻撃を誘導する任務も兼任させるFACとしてJTAC(Joint terminal attack controller、ジェイタック:統合末端攻撃統制官)を育成している。JTACになるには特別な認定資格を所得する必要がある。
また、特殊作戦を行う特殊部隊に随伴させるためのFACとして、アメリカ空軍ではCCT(戦闘管制部隊)と称されるFACの特殊部隊を編成している。
日本では
日本の自衛隊でも、1985年から航空自衛隊にFAC専門部署「航空支援隊」が設置されている。もっとも設置当初の主力攻撃機は三菱F-1支援戦闘機で、精密誘導兵器もそれを扱う能力もなかったため、近接航空支援は無誘導兵器を用いたものとなり、高い練度が要求された。
近年では陸上自衛隊に「火力誘導員」と称されるFACが配置されており、富士総合火力演習でも姿を見せるようになった。2021年10月には富士学校特科部の教官が、日本人として初めて上記アメリカ軍でのJTAC認定を受けている。
関連タグ
エアレイダー:FACとは要するにコレのことである。