概要
トンネルとは土中を通る人工の、または自然に形成された土木構造物であり、断面の高さあるいは幅に比べて軸方向に細長い地下空間をいう。
交通用のほか、水道や電線や通信などライフラインの敷設(共同溝など)、鉱物の採掘、排水、物資の貯留など様々な目的のため建設される。
たいていは外からの光が射しこまず薄暗い場所であることから、人生で先行きの知れない状態にもたとえられる。
また、比喩的用法で、股の間を物が通り抜けていく状態を「トンネル」と呼ぶことがある。
交通用トンネル
歩行者、あるいは鉄道車両や自動車などの乗り物が通過するトンネル。地下や海底、山岳などを越えるため、都市部では地下鉄や地下道などとして市街地をトンネルで潜るために設置される。
道路トンネルは排気ガスの問題があるので、5kmを越える長大トンネルは鉄道トンネルが多くを占める。また、長大トンネルは危険物積載車が原則通れない。
日本で一番長いトンネルは、津軽海峡をくぐる青函トンネル(53.8km)である。一番長い道路トンネルは東京都の山手トンネルで、総延長18.2kmである。
トンネル入り口の信号機
自動車用のトンネルには入り口に信号機が備え付けられていることがある。
信号機が備え付けられるようなトンネルには主に2種類のパターンが存在し、一つは1車線分の広さしかない狭いトンネル、もう一つは5㎞以上の長さになる長大なトンネルとなっている。
前者の場合は交差点の信号機と役割が近く、横断する自動車や歩行者の代わりに対向車を通すために時間で赤と青が交互に点灯する。
後者の場合はトンネルが非常に長いため外部からトンネル内の状況を把握できず、障害が発生した際に進入後に対応することが難しいために、進入前の自動車にトンネル内の状況を知らせるよう設置されているもので、交差点や前者の信号とは役割が異なる。
信号が青い場合は異常が無く問題なく進入できる状態、黄色の点滅は軽度の事故による車線減少や渋滞のために減速しての進行を促すものとなっており、トンネル内で大事故や火災が発生した場合のみ赤く点灯しサイレンが鳴り響く。当然ながら通行止である。
トンネルの工法
地面を直接掘削できる場所では開削工法、大深度や地面を掘れない場所はNATMを用いるのが基本だが、用途によりシールド工法、沈埋工法などが使い分けられる。
開削工法
オープンカット工法ともいい、トンネルの両側に沿って矢板などを打ち込み、地面を直接掘って後から埋め戻す。浅い場所では施工が簡単で安全性も高いため、水道や共同溝の工事などでは頻繁に用いられるが、地上の交通に支障しやすいのが難点。近年の地下鉄工事では駅などに限って用いられ、トンネルには後述のシールド工法を使うのが主流となっている。
山岳工法
発破や人力(かなり昔はツルハシだが、現代では削岩機を使う)でトンネルを掘って仮設の支保工で支え、後からコンクリートでトンネル構造物を構築する。
「山岳」工法とはいうが、平地でも用いられることはある。昭和期までは広く用いられた工法だが、人手がかかるのと地盤の悪い場所では落盤に遭いやすく、現在では改良工法のNATMに移行している(NATMも広い意味では山岳工法に含まれる)。
NATM
新オーストリアトンネル工法(New Austrian Tunnelling Method)の略で、従来の山岳工法を大きく改良し、トンネルが潰されやすい場所でも使えるようにしたもの。掘削後即座にロックボルトを岩盤深くに打ち込み、地山自体の圧力を逆に使って落盤を防ぐ。トンネル専用の掘削機とロックボルト打ち込み機を使って施工することが多い。日本では昭和50年代に導入され、条件が悪い場所でも施工でき、安全性と確実性が高いことから、平成以降のトンネル工法の主流となった。
ただし、ロックボルトは都市部のように構造物が入り組んでいる場所や土被りが浅い場所では使えないため、後述のシールド工法を使うか、アンブレラ工法という派生工法が用いられる。
シールド工法
近年の地下鉄など都市部で多く採用される工法。シールドマシンと呼ばれる巨大な機械を用いて、掘削と同時にトンネル壁を構築する。建物の真下など絶対に地崩れを起こしてはいけない場所や、川底など極端に水が多い場所に向く。断面がシールドマシンの形に制約されるのが欠点。シールドマシンはそのトンネル専用に特注されたもので、工事が終わった後は地下に置き去りにされ使い捨てとなる。
沈埋工法
トンネル構造体を水中に沈め、水を抜くことでトンネルを作る。構造体を軽く作れ地盤改良工事が不要で、工事費用も比較的安いが、当然ながら浅い水底トンネルでしか使えない工法である。