運命を切り拓け
概要
『週刊少年ジャンプ』にて2023年42号から連載されている外薗健の漫画作品。
漢字表記は『神楽鉢』。既刊3巻。
2024年度次にくるマンガ大賞コミックス部門1位。
あらすじ
斉廷戦争と呼ばれる戦いから15年が経った日本。
六平チヒロは、国で最も有名な刀匠である父国重と共に、刀作りの修行に日々励んでいた。作業中は真面目だが日常では気が抜けている国重の世話と、たまに父の友人の柴登吾から昔話を聞かされる日常を過ごしていたある日、国重から改めて刀とそれを握る者・作る者の意味を話される。
いつか自分が作った刀が誰かの命を奪うかもしれない。相手が善人でも、悪人でも、等しく冷酷に。その重さを背負えるか、と問われたチヒロは自身の覚悟を伝える。息子が自分なりに答えた事に満足したのか、国重は安心したようだった。
期待している、と言われたチヒロの目には、刀匠としても父親としても大きな、六平国重の背中が映っていた。
しかし、そんな平穏な日々は突如終わりを迎える。いつものように刀作りに精を出していた六平親子を、三人の人物が襲撃する。国重が作った6本の妖刀を奪うために。
この世界には妖術と呼ばれる力が存在し、その力を鋼の刃に宿したものが妖刀である。
六平国重は特別な加工法を唯一扱える刀匠…すなわち妖刀を作り出せる匠だったのだ。妖刀の力は普通の刀はもちろん、妖術すら上回るほどの性能を誇る。
だが国重は、妖刀は自分やチヒロが目指す到達点ではないと考えており、上述の覚悟の話もあって戦争終結後は全て回収して工房の地下に隠していた。
真剣に刀と向き合っていたからこその決断だったが、その想いも知らずに自分達の都合で妖刀を、家を、何より尊敬する父を奪われたチヒロは、涙と血を流しながら誓う。
奴らに父の信念を分からせる、と。
──38ヶ月後。
全ての妖刀を回収するため、チヒロは柴達と共に三人の妖術師と、奴らが所属している組織「毘灼」を追う。父が命を懸けて守り抜いた、7本目の妖刀を携えて。
作風
剣戟バトルアクション。巧みな演出と構成で物語に惹き込み、考えられた構図やコマ割りでバトルを見事に描ききっており、漫画愛好家だけではなく、アクション映画マニアの方にもぜひ一度手にとっていただきたい珠玉の作品となっている。
作者の洋画趣味が影響しているのか、四肢欠損のようなエグい描写が非常に多い。モブキャラはもちろん、メインキャラクターであっても腕を切り落とされるのは当たり前であり、幼い女児でさえも脚を切り落とされたり拷問されてしまうほど(流石に描写は省いているが)。
登場人物
主要人物
- 六平千鉱(ろくひら チヒロ)
本作の主人公。父・国重の遺作である7本目の妖刀、「淵天」の所有者。奪われた6本の妖刀と「毘灼」の情報を追い求めている。
- 六平国重(ろくひら くにしげ)
チヒロの父。妖刀を生み出し斉廷戦争を勝利に導いた英雄。3年前、「毘灼」の襲撃に遭って命を落とした。
- 柴登吾(しば とうご)
瞬間移動の妖術師。国重の古い友人で、チヒロの復讐に力を貸している。かつて「神奈備」に所属していた。
- 漣伯理(さざなみ はくり)
楽座市を取り仕切る妖術師の一族「漣家」の少年。非人道的な祭典である楽座市を終わらせたいと思っている。
- 鏡凪シャル(きょうなぎ シャル)
孤児の少女。驚異的な再生・治癒能力を持つ「鏡凪一族」の生き残り。チヒロに懐いている。
- ヒナオ
喫茶ハルハルで妖術師と依頼人の繋ぎ役をしている女性。「毘灼」の情報を求めるチヒロと柴の協力者。
「神奈備」
- 薊(あざみ)
妖術師。国重、柴の昔からの友人。並の妖術師なら体術のみで圧倒できる実力者。
- 香刈緋雪(かがり ひゆき)
“餓者の炎骨”の懐柔主。唯一「個」で妖刀に対抗し得る存在であり、通常の妖術とは一線を画す異能の持ち主。「神奈備」の最高戦力。
- 美原多福(みはら たふく)
緋雪と行動を共にする妖術師。相撲取りの格好をしている。現世と隔絶された結界を作り出すことができる。
- 萩原幾兎(はぎわら いくと)
対刳雲特選部隊隊長。双城と戦い一命を取り留めるが、両足を失い意識不明の状態。磁力を操る「磁戒(じかい)」という妖術の使い手。
- 真智カザネ(まち カザネ)
「神奈備」の新人。対刳雲特選部隊所属。“怪魑(かいち)”と呼ばれる奥の手の持ち主。双城戦で右肩より下を欠損した。
- 張間梓弓(はりま しゆみ)
対刳雲特選部隊所属。「岩垂(がんすい)」という妖術で、岩を操ることができる女性。双城に敗れて殉職した。
- 具柄一(くがら はじめ)
対刳雲特選部隊所属。仮面を被った妖術師。身体を鉄化できる。双城に敗れて殉職した。
- 卯月清彦(うづき きよひこ)
対刳雲特選部隊所属。「如縛(じょばく)」という妖術でこけしを顕現し、対象の動きを縛ることができる。双城に敗れて殉職した。
- 笠原誠(かさはら まこと)
対刳雲特選部隊所属。腕を変形・巨大化できる妖術師。双城に敗れて殉職した。
妖刀六工の所有者
- 双城厳一(そうじょう げんいち)
日本中を股に掛ける武器商人。「毘灼」が奪った妖刀の一つ、「刳雲」の所有者。自分だけが六平国重の理解者だと思い込んでいる。
- 剣聖(通称)
斉廷戦争で国重の最高傑作といわれる妖刀、「勾罪」(通称:真打)を握った人物。「勾罪」と命滅契約を結んでいるため、現在は「神奈備」の保護下にある。
- 漆羽洋児(うるは ようじ)
妖刀、「酌揺」の契約者。慚箱“国獄温泉”にて保護されていたが、「毘灼」の襲撃に合い壊滅した国獄から脱出・逃走した。
「毘灼」
「毘灼」の統領。「勾罪」を自身で振るうために暗躍している。
「漣家」
- 漣京羅(さざなみ きょうら)
漣家当主・楽座市首席競売人。
“濤”
- 漣宗也(さざなみ そうや)
“濤”の一人。伯理の5歳上の兄。伯理を溺愛しており、暴力を愛情表現だと思っている。衝撃を生み司る漣家の妖術、「威葬(いそう)」の使い手。
- 漣天理(さざなみ てんり)
史上最年少で“濤”になった伯理の一つ下の弟。
妖術師
- 円法作(まどか のりさく)
双城に雇われている妖術師。爆発するダルマを物質化する「不楽(ふらく)」という妖術を使う。チヒロに敗れ、柴に諭されたことで、妖術師を辞める決意をするが双城に始末された。
用語
- 妖刀(ようとう)
刀匠である六平国重だけが作刀できる刀の総称。込めた玄力を増幅させ、人体では生成・保持できないほど超高密度に練り上げ、特定の形をなした力の塊として放つことができる。
一般的には、斉廷戦争を勝利に導いた妖刀六工(ようとうろっこう)と呼ばれる6本のことを指し、戦後に完成した「淵天」は知られていない。結界に守られた国重の工房の地下に保管されていたが、3年前、「毘灼」によって妖刀六工が奪われた。
名前 | 所有者(命滅契約) | 慚箱 | 備考 |
淵天(えんてん) | 六平千鉱 |
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勾罪(まがつみ) | 剣聖(通称) |
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刳雲(くれぐも) | 巳坂→双城厳一→六平千鉱→消滅 |
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酌揺(くめゆり) | 漆羽洋児 | 国獄温泉 |
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??? | ??? | 仙沓寺 |
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??? | ??? | 九煙大社 |
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??? | ??? | 鮨 すば琉 |
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- 零天石(だてんせき)
妖刀の原料になる特殊な鉱石。戦時中に発見され現在も250kgほどしか確認されていない。込めた玄力を増幅させることができるが、込めた人物にまで高密度の玄力が流れ込み、体を裂いて命を奪う。歴史上でただ一人、六平国重だけが零天石の力を安定化させることに成功した。
- 命滅契約(めいめつけいやく)
妖刀の作成時、国重によって施された制限機構。妖刀の所有者となれば、命が絶えるまで所有者のみがその妖刀の力を扱えるというもの。3年前、「刳雲」の前所有者が殺害されて以降、斉廷戦争で妖刀を握った残りの5人は「神奈備」の保護下にある。
- 慚箱(さんそう)
剣聖を除く妖刀の所有者たちを匿っている施設の総称。「神奈備」の専有地に存在し、主要な戦力のほとんどが慚箱の警備に当てられている。上層部の認可によってのみ立ち入りが許されるいわば要塞。
- 斉廷戦争(せいていせんそう)
18年前、日本を危機に陥れた“敵”との間に起こった戦争。日本中の妖術師が終結しても劣勢が続いてたが、六平国重が生み出した妖刀六工のうち5本が戦況を好転させ、残りの1本である「勾罪」が日本を勝利に導いた。
- 妖術師(ようじゅつし)
玄力を操り様々な術を使う人間の総称。“妖術師は表社会に関与しない”という暗黙の了解があったが、斉廷戦争で活躍したことにより存在が明らかになり、現在は数多の妖術師が白日の下で活動するようになっている。ほとんどが都会で活動しており、東京には千人以上の妖術師がいる。
- 玄力(げんりょく)
全ての人間の中に眠る超自然の生命エネルギー。修練度が上がると身体が強化され、妖術を構築することができる。
- 神奈備(かむなび)
妖術師を雇用している国の組織。国の脅威となるものの排除を目的として戦後に発足した。
- 対刳雲特選部隊(たいくれぐもとくせんぶたい)
双城討伐のために結成された「神奈備」の精鋭部隊であり、全員が薊の直属の部下。「刳雲」の理解を深めた双城に敗れ、隊長と新人を除く4名が殉職した。
- 毘灼(ひしゃく)
4年ほど前から少しずつ動きを見せている詳細不明の妖術師組織。所属する妖術師は手の甲に炎の紋章を刻んでいる。3年前、国重を殺害して妖刀六工を奪った。
- 楽座市(らくざいち)
年に一度開催される、裏社会の要人たちが集まる闇の競売。
- 漣家(さざなみけ)
楽座市を200年に渡り取り仕切っている妖術師の一族。当主は妖術によって形成された、“蔵”(くら)という亜空間の管轄を許されている。
- “濤”(とう)
漣家の妖術師約50人の上澄み4人。当主の警護を主な任務とする親衛隊。
余談
連載開始前から海外でリーク画像が出回ってしまい、ファンアートや既存の漫画と比較する画像などがそれまでの新連載と比較すると多く投稿されていた。
「日本刀を使ったり、妖術が登場するジャンプの人気作品の特性を掴んでいる」という当時のトレンドを抑えていたこともあり、不幸中の幸いという形にはなるが、本作の「人気を押し上げる形」となった(ネットミームと化していたこと自体に嫌気がさしていた人たちもいたので、過度にネタにはしないように)。
関連イラスト
主人公が刀を抜くイラストがパロディ化されている。
関連動画
WJ新連載公式PV
ジャンプ公式ボイスコミック1話
関連項目
ふつうの軽音部:少年ジャンプ+にて連載中の漫画。次にくるマンガ大賞1位記念&主人公の名前が同じ記念でコラボイラストが公開された。