「言ったはずだ、“狩人はこちら側だ”と」
概要
『カグラバチ』の「楽座市編」におけるラスボス。
裏社会において絶大な影響力を持つオークション『楽座市』を取り仕切る「漣家」現当主にして首席競売人。
そして、主人公・六平千鉱にとって絶対に無視できない存在の1人であり、漣伯理にとっては実の父でもある。
人物
冷静沈着でパット見は紳士の様に見える男性。オールバックで顔から飛び出す程長口髭が特徴。
初代当主から脈々と受け継がれた「蔵」の管理者で、楽座市の遂行を第一に考え行動。
家族への愛情はあるが、漣家の妖術師としての使命感が前提にある為、まともに玄力も扱えない伯理の事は落ちこぼれとみなし、彼が兄の漣宗也から虐待を受けても、黙認するどころか「出来損ないに構うな」と発言。
彼にとって人の命等、楽座市に出品する「商品」よりも軽い。勿論自分自身の命も含めてである。
何よりも漣家に受け継がれた使命を全うする事に固執しており、目的の為なら顔色一つ変えずに家族を捨て石にする外道である。
一応、家族を犠牲にした際に表情が険しくなる場面はあるが、出来損ないの烙印を押した伯理の事は容赦なく殺そうとしていた。
一方で、「リスクのない商売はつまらない」という矜持を持ち、あえて淵天を手放して出品させた千鉱との腹の探り合いを楽しむ等、非常にしたたかな一面を持つ。
千鉱が「商品」となった人間を見捨てられない事を見抜き、あえて「蔵」の情報を開示して行動を封じる、「蔵」に唯一繋がる搬出口を事前に潰しておく等、非常に頭が切れる。
伯理が覚醒した際も、その才能を見抜けなかった事を自分の失態と認めつつ、状況から既に「排除すべき敵」であると切り替える等、基本的な戦闘能力は高く無い分、双城厳一とは別ベクトルの強敵と言える。
能力
「蔵(くら)」
漣家を二百年に渡り繁栄させてきた要であり、異質と呼べる程天才であった初代当主の代名詞と言える妖術。
一言でいえば、亜空間を生成して物を出し入れ出来る妖術。
漣家はこの”蔵”の中に楽座市の為の「商品」を納めており、骨董品から妖術関連、更には異能を宿した人間等、楽座市を闇の深さを体現した内容物を代々数えきれないほど閉じ込めている。
”蔵”は大まかに分けて、以下の4つの能力で成り立っている。
- ①登録
対象を”蔵”に転送する為のマーキングのような能力。
登録した物や人物及び、登録した人物と同じ玄力を宿した物を纏めて転送対象に加えることが出来る。
漣家の人間は赤ん坊の時点で全員この登録を受けている。
- ②転送
”蔵”の中核を成す能力。”蔵”の亜空間から登録を済ませた人間や物品を出し入れする。
”蔵”を介してワープのような扱い方も出来る上に、登録さえ済んでいれば何処からでも転移させられ、逆に現実世界に送り出す位置もある程度自由に決めることが出来る。正に破格の妖術である。
京羅の場合は商品の出し入れの他、有事の際は漣家の精鋭妖術師“濤”を呼び出したり、彼らに武器を転送するなどのサポートを行う等の運用を行っていた。
更に、継承者本人もこの空間に入れる為、現実から完全に隔離された亜空間を緊急時の安全圏にも使うことが出来る。
- ③蔵の操作
”蔵”の内部は術者の意思で自由に操作でき、床を変形させる事もできれば、中の「商品」を移動させたり締め殺す事も可能。
亜空間内部は上下も果ても無く、また伯理が覚醒した際の描写から、鍛錬次第で内部の構成を自由に拡張できる可能性もある。
「蔵」の継承者が死亡すると空間自体は消滅しないがアクセス権のみが消失する為、緊急時に商品を搬出する非常用の扉が用意されている。
- ④下見会(プレビュー)
”蔵”の内部にある物を好きなように立体映像として投影することが出来る。
この立体映像は触れる事こそできないものの術者の思う通りに動かすことが出来、また術者本人の意識であれば喋らせる事が可能。現実世界・亜空間どちらにも投影させることが出来る。
パッと見では虚像だと見破ることが出来ないなど、何気に陽動性能の高い能力。
通常、妖術は継承できないのだが、漣家は儀式により強い繋がりのある人間、すなわち家族にこの「蔵」を継承させられる。
漣家の人間が妖術を行使する際の特徴、左目に黒い炎の様に玄力が揺らめくが、「蔵」を継承した彼の場合、当主の証である仮面が左目に出現する。
妖術は基本1人につき1つのみなので、「蔵」を継承すると本来の妖術が使用不可能となる。
人間関係
不出来な息子。
完全に興味を失っており、「商品」である『氷の肌の女』を死なせた為、勘当していた。
存在する筈が無かった七本目の妖刀「淵天」の持ち主である千鉱が釣れた為、その事だけを唯一評価できるとまで発言している。
千鉱の相棒として敵対した果てに、自身の「蔵」を打ち破る天敵である事に気付く。
妖刀回収の為に敵対する復讐者。
妖刀の中でも別格に危険な「真打」を出品した為、必然的に千鉱とも敵対。
妖刀抜きにしても、自分の息子を平然と無駄死にさせた京羅の行いは信じられないものであり、伯理の為にも、「商品」として囚われた人々の為にも、絶対に退けない相手。
千鉱の協力者である妖術師。
空間転移で不利な状況に追い込まれ、爪を剥ぐ拷問をすると脅されるが、「爪を1枚剥ぐ度に人質を1人殺す」と逆に千鉱と柴を脅迫。
その後も自分達の行動を予見して対応してくる京羅に、柴は苦戦を強いられる事に。
毘灼の統領で、「真打」を漣家に出品したスポンサー。
楽座市遂行の為、零天石まで提供していた。
実は真打「勾罪」のリスク回避に利用していた事が判明。
活躍
21話終盤から登場。
真打が競売にかけられる事に、「少し緊張する」と呟いていた。
その後毘灼と電話でやり取りしながら帰宅すると、自室に侵入していた千鉱達と遭遇するが、驚く程冷静に対応し、「蔵」の仕様に嘘(自身が死ねば「蔵」が消滅する)を混ぜながらアドバンテージを取る。
更に“濤”を呼び出して千鉱達との戦闘になるが、状況から伯理が情報を流出させた事を突き止め、「蔵」に登録されていた伯理を戦場に転移させて人質に。
そして千鉱に淵天を出品させるが、千鉱は自身の玄力を事前に込める事で、「蔵」内部を感知しながら突破の策を講じていく。
京羅も何か策がある事は看破しており、そして楽座市当日、妖刀を巡る決戦の火蓋が切られる。
当初は先手を取って次々に千鉱達を追い込むが、同じ「蔵」の妖術を使う伯理なら、自身の「蔵」を突破できる事に気付く。
現実空間では下見会による立体映像と入れ替わり、本体は「蔵」内部に移動。
「最善は伯理を信じることだった」
淵天を取り戻した千鉱に、敗因として上記の言葉を投げ掛けられると、空間操作と大量の武器・爆薬による物量攻撃で攻めるが、爆弾は千鉱の策で伯理によって現実空間に転送され、更に下見会によるフェイントまで使われ、次々に自身の想定を上回る伯理と、その伯理の想いに応える覚悟を決めた千鉱により、遂に致命傷を受けてしまう。
しかし、楽座市の遂行という漣家の使命の為、真打「勾罪」を解禁してしまう。
縛られてなお異質過ぎる勾罪の力により、致命傷でも動ける様になるが、同時に妖刀か、本来の所有者である「剣聖」か、次第に自我を侵食されていく。
しかし、強靭な精神力で支配をはねのけ、千鉱とその加勢に来た香刈緋雪を圧倒。
妖刀は─────漣家(わたし)の商品(モノ)だ
妖刀を巡る三者三様の戦いは、更に加速していく。
- 漣家に縛られた男の最期
千鉱達と激闘を繰り広げる京羅だったが、真打による侵食が更に進行し、「下見会」を維持出来なくなり全員を現実空間に弾き出してしまう。
最早まともに立つ事も叶わず、侵食による「蔵」の崩壊が始まるものの、漣家の使命を守る為に命がけで「蔵」を維持しており、囚われた人々を救いたい千鉱達を図らずも助ける事に。
周囲の人間のクズ共を巻き込みながら、京羅が限界を迎えようとしたその時、亡き妻の「楽座市がなければ」という言葉を思い出す。
脳裏に浮かんだのは……………伯理を含む、家族全員で食卓を囲んだ穏やかな日常。
だが、京羅は自らの意志でその幻想を打ち砕き、真打を捻じ伏せて立ち上がる。
戦闘こそできないものの、体から勾罪による植物が生え、吐血する程の負荷を受け続けながらも「蔵」を維持。
そして、千鉱が「蔵」から全員を救出すると、千鉱が語った「敗因」を認め、子供達は命をかけて使命を全うしたが、伯理から目を逸らし続けた自分だけは、漣家の使命を全うできなかった事を悔んだ。
しかし、千鉱の目に映ったのは、真打の侵食を退け、最期まで一族の誇りと妄執を貫いた漢の死に様であった。