概要
戦車に一般的なキャタピラの代わりにタイヤ(大口径のコンバットタイヤ)を装備した対戦車車両のこと。ただしこれに該当するのは南アフリカのルーイカットのみである。
ルーイカットが成立した要因は、採用当時周囲の国の経済力がないために戦後型の主力戦車を購入できず、75mmライフル砲で充分対戦車戦闘が可能なことであった。
もうひとつの要因として、当時南アフリカはアパルトヘイト政策を強く海外から批判されており、西側陣営でありながら戦争になっても西側の有力国が支援してくれない可能性が高く、このため国境紛争が起こった際に自国で速やかに展開させられる兵力が必要であったことが上げられる。
この特異性から対外セールスには失敗し、採用は南アフリカ本国と、中古車体を購入したヨルダンにとどまっている。
しかし、ルーイカット自身はGT7 105mm滑腔砲への換装をメインとしたアップデートを受けており、まさしく第3世代戦車そのものであった。
メリット
地雷やブービートラップといった仕掛け兵器に強い。装軌式(キャタピラ)車両は地雷でキャタピラを切断されれば行動不能となるが、ルーイカットの場合、8輪あるうちの1輪が破壊されても行動に支障はなく、2輪破壊されても最高速は出せなくなるが行動可能である。また、最低地上高が装軌式に比して高いことから、戦車の底部を狙う磁気式地雷なども爆風が逃げてしまい威力を充分に発揮できない。
また平地であれば60km/h以上で、舗装路であれば80km/h以上で巡航が可能である(ルーイカットの設計最大速度は120km/h)。
走行抵抗が少ないため燃費が良い。
デメリット
やはり装軌式車両に比べるとどうしても装甲の面で不安が残る点が挙げられる。ただしこれは装甲素材技術によってはある程度解消可能と思われる。
装軌車で可能な超信地旋回(キャタピラを前後逆方向に動かしその場で向きを変えること)はできない。
類似車両、およびこのタグの使用のされ方
2012年11月20日4:00(JST)現在、ルーイカット(またはロイカット)タグのついたイラストは存在しない。
ルーイカットと類似したコンポーネントの車両は古くは第二次世界大戦、ドイツのSd.Kfz.254に求められる。
ただしこれらの車両は、戦車とは似て非なるものである。Sd.Kfz.254は火力こそIII号戦車に迫るものがあるが装甲は充分ではなく、もとより対戦車戦闘を想定して設計されたものではなかった。
一方、アメリカが同時期に開発したM8グレイハウンド装輪装甲車は、M3スチュアート軽戦車並みの火砲と装甲を備え、当初は対戦車戦闘を想定しており、ルーイカットの直接の先祖と言えなくもない。しかし、開発途上でヨーロッパ戦線ではスチュアート程度の火砲と装甲では対戦車戦闘に不十分なことがわかり、結局こちらも制式化時の任務は偵察用になっていた。
(狭隘かつ峻険な熱帯雨林が主戦場となる太平洋戦線では悪路走破性能が不足した)
戦後も現代に至るまで同様のコンセプトで比較的大火力の砲を備える強行偵察車が開発されているが、いずれも備砲・装甲とも対戦車戦闘を念頭に置いたものではない。
装輪式とするのは、要は「戦車にあったら逃げるしかない」為の機動力を求めたものである。
(装軌式の戦車が無理に追従しようとすれば十中八九キャタピラが外れるかサスがいかれる)
Pixivでは現在のところ、これらの「戦車ではないけど戦車っぽいもの」にこのタグが使われている。
繰り返しになるが、対戦車戦闘を前提として制式化に至った装輪戦闘車両は現在のところルーイカットのみである。
フィクション
メタルマックスシリーズでは、タイヤ型シャシーでも改造内容によっては対戦車戦闘に堪える内容になっている。バスが最強クラスとか気にすんな。
また新世紀エヴァンゲリオンにはM551という試作装輪戦車が登場した。
このようにフィクション・架空兵器ではちらほらと散見することができる。