概要
ファミリーコンピュータ末期に発売された、日本国内のコンピュータRPGに一石を投じた力作。「竜退治はもう飽きた!」のキャッチコピーは有名。
それまで多くのRPGに使われていた世界観であったハイファンタジーとは一線を画し、「現実世界をモデルにしたポストアポカリプス」「戦いの武器となる主力が戦車」「ほとんど強制シナリオがない自由なゲーム進行」という独自の路線を作り上げた。
特徴
自由だからといってシナリオを放棄したゲームではない作りが秀逸であり、各地の登場人物によるドラマは他のRPGに決して引けを取らない。戦いだけに明け暮れるハック&スラッシュではなく、モブを含めた登場人物を丁寧に描写することで紡がれた物語はドンと存在し、それに対して参加/不参加という自由を提示している。極端な話、エンディングを迎える条件は自宅に帰って冒険を引退する選択をすることに尽きるため、ロクに何もしないまま引退してエンディングを迎えても一向に構わない。
だからこそ、自分がこの世界でどこまでやれるのかという冒険心をかきたてるように作られており、事実モブの科白にもそうしたメッセージがこめられている。
先へ進めば進むほど強敵は出現するようにはなるものの、先に進む為に倒すことを強制されるボスはほんの一握りしかない。そして、事件や強敵との戦いに首を突っ込むことは必須ではないため、いくつかの町を飛ばして先々の町へと向かい、強力な武装を整えてしまうことも決して不可能ではない。ゲームバランスに対する考え方は根本的に独自の方針になっている。
ともすればこれらの「戦車」とか「自由度」という評判が一人歩きしかねないシリーズだが、RPGとしての基本部分は意外なほどオーソドックスかつ丁寧に作られているのが特色でもある。決して根底が尖っている作品ではない。
そして、ゲームとしては甘くない。それどころか同時期に発売されたメジャータイトルよりもむしろゲームバランスは厳しいとさえ言える。「戦車と人間のRPG」といわれるだけあり、戦車に乗れば圧倒的な戦力を獲得することはできるのだが、もしも敵の攻撃に著しくさらされて戦車を壊されたり、あるいは戦車の入っていけない狭い地形で強敵に当たれば、生身での戦闘を余儀なくされる。そして、戦車が無ければ何の特徴もない、あまりに弱い「ただの人間」という事実に直面することとなる。それでもなお、地面を調べると回復アイテムなどを拾えることもあるため、文字通り死と隣り合わせの状態でもしぶとくあらゆる手を尽くして生き延びようとする「あがき」を試みることもできる。
一方で本当の窮地に立たされた場合に対する救済措置はしっかりしており、仲間の蘇生には一切資金はかからず、全滅した場合でも無料で蘇生させてくれるため、ゲームオーバーの心配は一切必要ない。
ただし戦車に乗っていた場合は大問題となる。戦車がそこへ置き去りになっているため、場合によっては回収が一筋縄ではいかず、予備の戦車がなければ町の施設で戦車を借りて慎重に進みつつ、下手すればダンジョンの奥底まで進んだのちに戦車を牽引・回収する手順を踏まなければならない。つまり戦車に乗って敵地へ乗り込むなら、相応の覚悟をして乗り込む準備と計画が求められる。戦闘で敵から逃げるリスクは低いため、逃げまくりながら難所を突破する選択は頭に入れておくといい。
戦車を手に入れるのは1台目こそ簡単だが、仲間が集まってくるとその人数分集めるのは意外なほど難しく、強敵を倒す必要があったり、あるいは極端なものになると、何のヒントも無い地面に埋まっているので金属探知機を使って各地を念入りに調べるなどの自発的な行動力が求められることもある。基本的に、丁寧に冒険をすれば見返りは返ってくる。その分、戦車が揃ってきた時の戦力アップは目を見張るものがあり、これまでおびえながら敵から逃げていたような地域をその大砲で蹂躙できる気分は本シリーズならでは。
本シリーズ全般に言えることだが、本作の「戦車」とは、「武器を搭載できて」「自走できて」「人間が乗れる乗り物」全てである。バギーだろうが救急車だろうが「戦車」であり、そのため「クルマ」と称される事が多い。機銃やミサイルを発射する救急車なんてそうそうないだろう。
そして本格的な肝になるのが戦車の「改造」である。専用の施設で技師に有料で依頼することによって、その性能をアップさせたり、戦車に積み込める武器の種類を変更させたりと、自分の戦闘スタイルに合ったスペックへ作り変えることができる。性能を高められる対象は本作ではまだ「シャシー」と「エンジン」のみだが、それでもチューンナップする楽しみは、レベル上げのような育成とは全く異なる方向性を打ち出している。
そんな自由度の高い戦車RPGにおいて、強敵との戦いはいかにして繰り広げられるかだが、これも本作でほぼ世界観が完成されている。指名手配された「おたずね者」という連中が各地に潜伏しており、これを倒して街の窓口へ報告することで賞金がもらえるようになっている。戦車の改造にかかる資金をこの方法で調達するのも楽しみの一つだろう。
しかしこの「おたずね者という設定」がなかなかマッチョであり、ダンジョンの奥底で待ち構えているパターンなど数えるほどしかない。ランダムエンカウントで突然自分たちの前に姿を見せたり、それも場合によってはダンジョンにさえ入らずその辺の草原や砂漠でいきなり現れることも。中には発見そのものが困難な相手さえいる。
⬆まさに「おたずね者を発見して個性的な戦車で戦いを挑む」という、本作ならではの一場面。
荒廃した世界で何を為すのか、為さぬのか、最後は自分との戦いである。
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