「フッ……
またどこかの臆病者どもが俺のうわさをしていやがる。」
概要
無数の賞金首を仕留めてきた最強のハンター。同名の赤い戦車を駆り、消えた恋人ニーナを探し旅をしている。
主人公は初めて戦車を手に入れるときに助けられ、仲間の女ソルジャーは自身の超えるべき目標として追うことになる。
しかし、その後はあちこちで噂は聞くものの、すれ違いになるなどで再戦の機会は訪れず、ついに再会した時は主人公達の目の前で卑劣な罠に嵌って悲劇的な最期を遂げることとなる。
また彼が探し求めた恋人のニーナともゲーム中で出会う事ができるが、プレイヤーの選択次第ではこちらも悲劇的な最期を迎えてしまう。
もっとも、どちらの選択が彼女にとって「幸せ」かは考え方によるが……
基本的にストーリー性が薄い初代メタルマックスにおいてこれらイベントのインパクトは強烈であり、そのためか本人が登場するのは初代、およびそのリメイクであるリターンズのみだが、愛車Rウルフはメタルマックスの名物戦車としてその後も各シリーズに登場し続けているほか、外見が彼を彷彿とさせる上に「最強の主人公」という肩書で発売前からファンをざわつかせた3の主人公や、パロディキャラである凄腕ハンターレッドフォックスなど、間接的な形でシリーズに登場している。
外見については、長いこと設定絵が公開されておらずドット絵から想像するしかなかったが、言動が
「フッ……」
「子猫ちゃん」
など気取ったセリフが多かったため、ファンの間ではいわゆる「キザなイケメンライバル」という認識が一般的だった。
リメイクであるリターンズでもこの認識を反映してか、黄金の甲冑に漆黒のマント、真っ赤な流しのボサ髪に緑のバンダナ、というド派手かつ明らかに「キザなイケメン」方向のデザインとしてディティールアップされている。
しかし最近になって山本貴嗣公式ブログあつじ屋の記事でその初期設定ラフが明らかになった。
このラフではゴーグルにロングコート、スカーフ、双眼鏡、編み上げブーツを履いた無骨な男である。
リターンズのドット絵とは全く方向性が異なるものの、オリジナルである初代版のウルフであればこのデザインと近く、そう思って見れば主人公に対する呼びかけかたも「坊主」と、それなりに年の離れた年長者のような雰囲気を漂わせているほか、前記したようなキザなセリフも「ニヒルで無骨な年長キャラ」が発しているもの、とみても違和感はない。
そう捉えると、彼のイベントもまた違った味わいが出てくる。
ただし山本氏はこのラフについて「あくまで試作品」「(上記のような、ファンからの長年のイメージがあるキャラの為)下手に具体化しないほうが良いのかも」とのコメントも残している。
前記の通り、現在の公式最新であるリターンズのドット絵とは全く方向が違う事から考えても、あくまで「デザイナーのアイディアラフ、初期案」と捉えておくのが良いと思われる。
ニーナ
恋人のニーナは、おなじ故郷の村で暮らしていた相手であり、結婚を誓った間柄でもある。
しかしウルフが村を留守にしているとき、悪党が村を襲って村人を皆殺しにし、ニーナを拉致してしまう。
以降、ウルフは攫われた恋人をもとめて各地を彷徨い歩くこととなる。
世紀末の悪党にさらわれて長いこと囚われていた故に、かなり過酷な目にあったものと推測されるが、その状況でもくじけず、悪党相手にタンカを切る事もできる気丈な女性である。
しかしその気丈さも「いつか必ずウルフが助けに来てくれる」と信じているゆえであり、とある戦車に乗っていくことで彼の死を悟らせてしまうと、後を追って自害してしまう。
彼の死を知らせなければ、その後も彼を待ち続けると語って生存するが、後述する通りレッドウルフ自身を助けることはどうやっても出来ないため、プレイヤーは
「叶わぬ希望とともに生き続けさせるか、真実を知らせて恋人の元へ逝かせてあげるか」
という哀しい二択を迫られることとなる。
また余談ながら、彼女がいまわの際にもレッドウルフの事を「ウルフ」と呼んでいることから、「ウルフ」は彼の本名であるらしい事がうかがえる。
余談
- 避けられない悲劇
賞金首ゴメスとの戦いにおいて、探し求めた恋人「ニーナ」をダシにされて罠に嵌り、非業の死を遂げてしまうレッドウルフだが、シリーズでも特に進行の自由度が高い初代(リターンズ)ゆえに、実はプレイヤーが先んじて「本物のニーナ」を発見して助けておくことも可能である。
しかし、レッドウルフの死亡イベントは「その場に主人公たちが到着する直前(要は一歩遅かった)」の出来事であるため、本物を助けていたところで運命を変える介入の余地がなく、結局彼は死亡してしまう。
- 初代とリターンズの違いあれこれ
初代においてはファミコンということもありフラグ管理などが色々と甘く、
- 本来は彼が敗北するイベントであるゴメス戦で、一定の条件を整えると勝利してしまう(バグで様々な不具合が起きる)
- 上記イベの最後、ウルフの遺言が終わった後の消滅エフェクト(何度か点滅して消える)中にも話しかけることができ、そうすると遺言をまた最初から聞くことになる(話しかける限り永遠に続く)
- ソルジャー加入イベを無視して進み、先にウルフの最終イベであるゴメス戦を見てから戻ると、ゴメス戦で死亡したはずの彼が平然と現れてソルジャーを殴り倒す
等々のおかしな光景が見られる。
リメイクであるリターンズではこれらの問題は解決されており、ウルフがゴメス戦で勝つことは無く、遺言が終わった後は当然、そのまま消え、ソルジャーイベントを後回しにした場合もウルフの死を踏まえた内容に変化する。
また初代ではゴメス戦の偽ニーナと、後に出てくる本物のニーナのドット絵が似ても似つかない(一番目立つ髪色すら全く違う)というネタも。
容量制限の厳しいファミコンゆえに専用グラが用意できないのは当然としても、それなら同じグラをつかえばよかったのでは…?という疑問は浮かぶ。
リターンズではこの点は改善されており、髪が同系色になっているほか、本物のニーナはもちろんとして、偽ニーナにもわざわざ個別の専用グラが用意されるという好待遇になっている。
ウルフ自身の装備にも違いがあり、ゴメスに勝ってしまう事もある初代ではロケットランチャーのような武器を使用しているが、リターンズではアサルトライフル(FA-MAS風)とSMG(MP5風)に変わっており「生身での絶望的な戦い」の雰囲気が増している。
- 回復アイテムもってない
ゴメス戦で生身で戦車と戦う羽目になり、非業の死を遂げてしまうレッドウルフだが、このとき、彼は回復アイテムを一切使用しない。
メタ的には負けイベなので当たり前(使えばムダに長引くだけ)だが、メタルマックスシリーズにおいて人間戦闘時の回復アイテムは他のRPGよりも重要度・使用頻度が高く「ハンターが回復アイテムをもってないなど有り得ない」こと、また、次作ではあるが敵ですら「まんたーん!ドリンク!」してくるヤツがいるなどの事情から「凄腕ハンターのくせにウカツすぎる」とネタにされることがある。
- バッド・バルデスとの因縁
ウルフの故郷の村を滅ぼし、恋人ニーナをさらったのは賞金首「バッド・バルデス」であるが、実はこの二人はお互いをよく知らなかったりする。
ウルフは「恋人をさらった犯人が誰なのか」を認識しておらず(そのため、後にゴメスの奸計にはまってしまう)、一方のバルデスの方も、外見的にはせいぜい性別くらいしか共通点が無い主人公を、ウルフと間違えるという有様である。
こうなると、なぜバルデスがウルフの恋人をわざわざ攫って逃げたのかすら謎になってくる。高名な凄腕ハンターに対する人質作戦なのだとしても、それならば攫って即実行すればよく、逃げ回る意味がない。
リターンズの制作時には、この疑問点を修正して「実はウルフとバルデスは元ハンター仲間、バルデスの動機は嫉妬」という因縁を設ける案もあったらしいが結局はボツとなり、初代とかわらず「お互いをよく知らない」状態となっている。
のちにスマホ向け作品メタルマックスファイアワークスにおいて、バルデスのセリフにこの没設定を意識したものが追加されている。