概要
ゲーム実況プレイ動画・RTA解説動画・ゲームプレイ配信などで用いられる画面構成のひとつ。「biim窓」や「biim式」とも通称される。
実際のゲームプレイ画面を枠いっぱいに表示するのではなく左上に寄せ、画面下部には解説文または実況ボイスの文字起こしを表示し、画面右側には現在の配信タイトル・進行状況・補足データ(あるいは余興のネタ動画)などを同時に表示するレイアウトである。
RTAプレイヤーのbiim兄貴ことbiim氏がニコニコ動画での動画投稿でこの形式を採用して人気を博し、その後使用が広まったことから「biimシステム」と通称されている。ただし、アドベンチャーゲームなどでは古くからよく見られる画面構成であり、またbiim氏以前にもこの形式で投稿された動画はあり、彼のオリジナルではない。(biim氏自身は、鬱ゲーとして有名な往年のアダルトゲーム『狂った果実』を元にしたと述べている。)
ADVの一例:シャドウゲイト(1987年)
目まぐるしく状況の変わるゲームプレイの中でも、画面に一度に豊富な情報を盛り込むことができるのが最大の利点。これにより、ゲーム未プレイの視聴者の理解を助けたり、エンターテイメント性を高めたりできるため、採用するゲーム動画投稿者・ゲーム実況配信者も多い。登山やドライブなど、ゲーム以外の動画に利用される場合もある。
一方、解説のテキスト起こし、ボイスの調声、右枠情報の編集など、簡素なゲーム動画に比べて投稿するまでに要する作業量が非常に多い。このため、投稿速度・投稿頻度の低下や、シリーズ作が未完結のまま投稿者が失踪…といった事態に陥ることがままあるのが欠点といえる。
最も作り慣れているはずのbiim氏自身ですら「平均で動画1分に1じかんはかかります。」「一番簡単なのがRTA動画の録画なのはまちがいない。」とまでボヤくほど(関連リンクにて)。
各部解説
- メイン画面
左上に最も大きく取られたメインの動画・配信画面。レトロゲーム配信においては、当時の画面比率が現在の一般的なモニターや動画枠の画面比率と合わないため、右と下に余白を取ることで画面比率の調整を兼ねている。
プレイ中に長時間のレベル上げなど視聴者が退屈するシーンが入る場合には、場繋ぎためのアニメや別動画の引用などに切り替えられる場合もある。(「視聴者のみなさまのためにぃ~」というねっとりボイスとともに、あまり出来のよろしくないアニメを流して視聴者の苦悶や乾いた笑いを誘うというのが、一種のお約束となっている。)
なおRTA動画の場合、メイン画面を切り替える際はゲーム画面をドラッグ&縮小で右枠に移動させるのが一般的。一瞬でもゲーム画面が消えてしまった場合、「別撮りのプレイに途中からすり替えたのではないか」という疑念を視聴者に持たせる余地が生じてしまうためである。
- 画面下部
画面の左下に投稿者・配信者のアバターを表示する。biim兄貴は主にゆっくり妖夢を使用するため、それを踏襲してゆっくり顔のキャラが使われる例も見られる。その右におおむね横書き2~3行で表示されるメインの解説枠があり、文章表示に合わせてSofTalk(いわゆるゆっくりボイス)やVOICEROIDなどの音声合成アプリで読み上げが行われる場合が多い。
- 画面右部
通称「右枠」。読み上げのメイン解説以外の様々な追加情報を表示する欄。最も右上に現在プレイ中のゲームタイトル、その下に現在地点や現在の目的を短く書くのが一般的で、それ以外の大部分は多機能に使われる。例えばプレイヤーキャラや敵モンスターのステータス、別撮りの参考動画、ネタ画像を表示するなど。
メイン画面を切り替える際は、こちらに本来のゲーム動画が一時移動される。生配信の場合は、配信者手元のコントローラ表示(操作スタイルを視聴者に示すほか、別撮りの動画ではないことを証明する意味もある)、サブ画面表示(ニンテンドーDSや3DSのタイトルなど)などに用いられる。
中には心拍計を身体に装着して心拍数を表示し、プレイヤーの心理状態を示してエンターテイメント性を高める配信者までいる。
biim氏は真夏の夜の淫夢・レスリングシリーズ・変態糞親父などのR-18コンテンツを右枠に多用して独特のノリでゲーム動画を構成しているが、視聴者の好みが分かれることや運営削除のリスクがあることから、biimシステムを採用していてもこうしたノリまでフォローするかは制作者次第である。
長時間のゲーム動画では、右枠を絶え間なく情報で埋めるのはかなり大変な作業。biim兄貴自身はインタビューで「右枠がいちばんつらい。biimシステムはみぎわくとの戦い。」「みやすく、情報はすくなく、しかしきらさず。ミチミチかきこむのはNG。」と右枠編集へのこだわりを語っており、その点がおざなりな動画には「右枠がスッカスカやんけ頃すぞ」との叱責が飛んでくる。
使用の広がり
当初はアマチュアのゲーム動画投稿者・実況者たちを中心に使われているものだったが、近年ではアニメや、果ては公的機関の広報動画まで、単にレイアウトの偶然の一致では済まない明らかなbiimシステムの利用例がみられる。
ただしゲーム実況・動画全体に通用する言葉でもなければ、biimシステムを使っていてもbiimリスペクト系のセリフ回しを避ける実況者・投稿者もいるので、無分別に使ってはいけない。