概要・定義
これといった明確な定義は存在しないが、日本では一般的に全長がおよそ4,200mm程度まで、全幅がおよそ1,700mm程度まで)の「5ナンバー枠」のサイズで、形はハッチバックやトールワゴンなどの2BOXタイプボディが主流である。トヨタ・オーリス、ブレイド、カローラルミオン、日産・ティーダ、ホンダ・フリードなどもコンパクトカーの一種に含むことが多いが、同じクラスのセダンはコンパクトカーに含まれない場合も多い。
エンジン排気量は1,000 - 1,500ccクラスのものが多いが、一部グレードや姉妹車に1,500cc超、車種によっては3,500ccもの大排気量エンジンを搭載しているもの(例:トヨタ・ブレイドマスターなど)もある。
米国におけるコンパクトカーはトヨタ・カローラ、ホンダ・シビック、マツダ・アクセラクラスの車を指す(欧州でいうCセグメントに相当)。全長は4,200mmから4,700mm、エンジンは多くが4気筒エンジンを搭載するものが多く、排気量はおおむね1,500 - 2,500cc程度である。→en:Compact carを参照。全長4,200mm以下はサブコンパクトカーに分類される。
ヨーロッパでは、AセグメントからBセグメントのハッチバックがおおよそ日本でいうコンパクトカーに該当する。ヨーロッパ諸国において主流となっているクラスである。
コンパクトカーの特質
利点
- 軽自動車よりサイズが大きい分、居住性が良い。
- ボディサイズが小さく、狭い街路や駐車場に入れやすい。
- 重量が1トン前後と比較的軽量であり、エンジンの排気量も手伝い燃費が良い。
- エンジンは軽自動車に比べパワーとトルクに優れ、高速走行にも比較的向いている。特に軽ターボと比較した場合、パワー・トルク・燃費・車両本体価格いずれも優れていることも珍しくない。しかも軽に比して排気量に余裕があるため低回転型となる。これは静粛性と追い越し加速時の再加速が容易であることを意味する。
量販モデルは軽自動車と本体価格差があまりなく、軽自動車の上位モデルとの比較ではむしろ安いことが多い。(ただし、税金などの諸経費込みの総額では同じ程度か、やや高めになる)
登録車(白ナンバー)である優越感が得られる。大きな車では扱いにくいなどの理由で小さな車が欲しいものの、「軽自動車では恥ずかしい」、「軽は小さいので安全性が心配」「軽では室内幅が狭い」とユーザーが考えた場合は、必然的にこのクラスを選択することになる。
軽自動車と比較すると、目視で判断できない基本性能(ボディ剛性、ステアリングフィール、乗り心地)は一般的にコンパクトカーの方が優れている場合が多い。
都市部では、軽自動車と維持コストを比較した場合、税金差などの軽自動車のメリットが、賃貸駐車場代等の維持費用を考慮するとほとんどメリットにはならず、上記の実勢価格、燃費などを含めると軽自動車を所有するより実質安くなる。
欠点
- 日本では軽や小さめのCセグメント車(カローラ、ティーダなど)との関係上、税金や車両本体価格(後述)に割高感があるなど中途半端なクラスと見なされることがある。
- 上下車格の車種との車両価格差があまりない。それらの車種が大幅な値引きを行った場合、価格が逆転することがあり得る。それどころか、場合によっては定価の時点でそれらより高額な場合さえある。
- 国内向けの一般モデルでは女性ドライバーなど地場における使用をメインにしている関係上、中低速の市街地走行を前提として設計されている場合がある。よって、高速度を出すと安定しない傾向にある。ただし欧州向け車種や、一部のスポーツモデルでは高速走行が重視されるため、この限りでない。
- 国内向け車種では基本的に街乗り用として設計されていることから、上級小型車に比べ連続長距離高速走行では疲労が蓄積する。
- ボディサイズは小さめながらも、居住性重視によりFFレイアウトを生かしたロングホイールベースの車種が多いため、車体サイズの割に小回りが利かない車種も散見される。特にヴィッツRSは5.6mにもなってしまっている。また、トレッドもホイールベースの割に広く、乗り心地が上位車種と比べると良いとはいえない。
- 最近のコンパクトカーは安全対策上、車幅が1,680 - 1,695mmと小型車枠一杯かそれに近いものが多い。2012年現在、車幅が1,670mm以下の(小型車(5ナンバー)枠より3cm以上狭く設計されている)国産コンパクトカーはトヨタ・パッソ/ダイハツ・ブーン(共同開発による双子車)、日産・マーチ、スズキ・ソリオ、三菱・ミラージュの5車種(実質的には4車種)のみで、これら以外の車種は軒並み小型車枠一杯かそれに近い車幅で設計されている。これはワンクラス上のハッチバックや小型セダンと同等の数値であり、さらには一部のミディアムセダンとも同じ車幅にまで膨らんでしまったため、狭い道のすれ違いや隘路における通行などに響く。(それどころかトヨタ・istは2代目の登場により3ナンバー枠に突入してしまい、もはや「コンパクト」カーとは呼べない車種まで出現した。)そのためすれ違いに不安があり車幅の狭さを求める顧客にとっては選択肢が非常に限られたものとなってしまい、軽自動車などを選択する事が散見される。さらにダッシュボードの奥行きがありフロント窓との距離が遠い車種では、ボンネットが短い割に取り回しにくい車種もある(ホンダ・フィットなど)。また、一部車種ではAピラーが太く、交差点などで視野を妨げる場合もある。
- 戦後早くに造成された住宅地や、農道などではオート三輪や昔の車両のサイズを参考に設計されているため、現在では軽自動車以上の車両では通行が困難な場合がある。また、踏切などで軽自動車や普通自動二輪車以上の車両の通行止めが標識によって提示されている場合も多く、その場合は迂回が必要となり手間が掛かる。(もっとも、そこまで極端なケースだと仮にボディの小さな登録車を作ってもダイハツ・ミラジーノ1000のように軽ターボに負けると思われる。)
- 女性や高齢者向きの車という外観のデザインイメージが根強くあり、男性から敬遠されることもあった。しかし近年では(維持費を抑えるため)デザインを気にしない男性も増え、またメーカーも男性をターゲットとした、あるいはユニセックス指向の車種・仕様を用意しているためそういったイメージも薄れつつある。
- 全長が短いため、万一の衝突時の安全性に不安を感じる向きもあるが、近年のモデルではボディ剛性強化、衝突安全ボディーの採用などにより、衝突安全性の改善が計られている。
長所でもあり、短所でもある面
軽自動車と比較した場合、中古車市場価格が軽に比べ安めとなっている。
これは中古車購入時には長所(同程度以下の予算で、走行距離が少なく程度が良い掘り出し物が多く見つかる)となる一方、売却時には短所(リセールバリューが低く、買い叩かれる)となることを意味する。また、税金、任意保険料、車検代等は軽自動車の方が安いが、古くなった場合の車体全体のヤレが違う。コンパクトカーは古い年式になると程度が良くても、購入層が少ないので店頭で売れにくく、走行距離が少なくて程度がよくても同じくらいの価格である。そのため程度の良いコンパクトカーを見つければ、修理費用がかからないので、同程度の価格で販売されている中古軽自動車より維持費用が安く上がるとも考えられる。