功利の怪物
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こうりのかいぶつ
思考実験のひとつ。功利主義は本当に正しいのか、真の幸福とは何か?
功利主義という概念がある。これは、最大多数の最大幸福を是とする主義主張で、「個人の幸福の総計が社会全体の幸福であり、これを最大化すべきである」というもの。
しかし、この功利主義に対して本当に正しいのかという疑問や、功利主義によって個人の人権や幸福が軽視されているのではないかという批判を投げかけているのがこの功利の怪物という思考実験である。
功利の怪物とは、ある経験に対して、一般人の何倍もの幸福を感じることができるという架空の存在である。
仮に一般人の1000倍の幸福を感じることができるとする。
大抵の一般人はケーキを食べると幸福感を味わうが、この幸福度を1とした場合、功利の怪物が感じる幸福度は1000となる。
ケーキが二つあった時、一般人と功利の怪物の二人で分け合うと、幸福度の総計は1+1000=1001となる。
一方でケーキを二つとも功利の怪物に与えた場合、当然一般人は何も貰えないため幸福度は0だが、全体の幸福度の総計は0+1000+1000=2000となる。
つまり、例え一般人を犠牲にしてでも功利の怪物に幸福を与えた方が社会全体の幸福度は大きくなるのである。
はたして、多数を犠牲にしてでも社会全体の幸福度を優先すべきだろうか?
当然、「一人だけ得して他大勢が損をする社会なんて幸福ではない」と考える人もいるだろう。
同様のことがトロッコ問題や臓器くじ問題でもいえる。功利主義に則れば、一人を犠牲にして大勢を助けた方が全体の幸福度は高くなるが、もしその一人が功利の怪物だったら…?
このように、個人、および社会にとって真の幸福とは何だろうか?という問いをこの思考実験は孕んでいるのである。
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