概要
2023年6月、月刊ヤングマガジン7月号より連載が開始された怪獣漫画。英語での表記は『GAEA-TIMA』
作者はKENT。
あらすじ
海から突如出現した怪獣と共に起きた大波で、港街・匡波町は被災した。活動を停止した怪獣は、海に溶け魚介類の豊かな栄養素となり、匡波町の経済を潤し、豊穣の神ゲァーチマと呼ばれるようになった。被災者である少女・杜野宮矢子はその出来事を形に遺すべくゲァーチマの人形を作り、土産物として販売され人気を集めていた。しかし、復興した匡波町に10年ぶりに怪獣が現れ…。怪獣は人類の敵か味方か?
登場怪獣
- ゲァーチマ(初代)
第1話に登場。
本編開始時から10年前に新潟県匡波市匡波町に出現した怪獣。
魚のような海中形態で接岸後、二足歩行の直立形態に変異し上陸を果たした。
だが間もなく液状に崩壊し、その体が溶けた海は「濁海」と呼ばれる怪獣が発生する海域となった。
後述の2代目と比べると口中に無数の細い牙がある等、全体のディティールが細かく、前肢はヒレ状になっているなど外見上に違いが見受けられる。
崩壊後は町の伝承にある豊穣の神様にちなんでこの名で呼ばれ、人形やまんじゅう等々様々に町興しに利活用されている。
葬蛇の里の少女・江刺ひばりによると、その正体は200年前の江戸時代に起こった日本海を襲った大波と大飢饉の元凶と言い伝えられている「大災禍ミヨケガミ」とされており、彼女からは「怒りの大波と共に来たりてあらゆるものを貪る怪蛇」、「世の全てを無の渦へと葬り去る悪神」として葬られるべき存在だと断言している。
尚、ゲァーチマとは新潟の方言でオタマジャクシを意味するものであるとのこと。
- ゲァーチマ(2代目)
第1話から登場。
ヨーボヤーに追い詰められた宮矢子が吐き出した謎の球が海水に触れて出現した新たなゲァーチマ。
初代と比べると全体的にデフォルメの効いたようなデザインで、たるみやシワのある怪獣の着ぐるみやソフビ人形的な質感。大まかなシルエットは初代を踏襲しているが、頭から首周りは宮矢子が造形したソフビ人形に近い形状で、前肢は五本指の手指になっているなど外観上の差異がある。
主な武器は頭部のツノと口から吐き出す爆発性の気泡。身体能力も同格の怪獣と比べても勝っておりヨーボヤーを引き裂き、組み合ったヘットルガを苦も無く投げ飛ばす。匡波に現れる怪獣達を倒しては捕食する生態が出来つつある。
初代と同様水中形態に変化できるが形状は大きく異なる。また、地中に潜むインガロンを探る際に首元からパラボラアンテナのような器官を生やして索敵していた。
宮矢子に対して夢を通じて自身の意思を伝えており、彼女を母親のように思っている。
- 小ゲァーチマ
ヨーボヤー戦後、宮矢子が回収した球が洗濯機の水に触れて出現した姿。触れる水の量に比例して大きさや実体化の時間も変わってくる模様。
洗濯機の洗濯槽からはみ出る程度の大きさしか無いものの、大人3人をやすやすと跳ね飛ばすパワーがある。
逃げる宮矢子を追うような行動を見せるが…。
- ヨーボヤー
第1話に登場。
初代ゲァーチマから10年ぶりに出現した怪獣。海産物が巨大化する黒い海「濁海」から現れた。
ウミヘビのような長大な体を持ち上陸時には二足歩行形態へ変異する。
防衛兵器群「堤防」の動力部を見抜き的確に攻撃を行い、知能のようなものを有していると見られる行動をとっている。
武器は長い尾から発する放電と、巨大な顎部での噛みつき。
ゲァーチマとの交戦で敗死し遺骸は捕食された。
- へットルガ(成体)
第4話~第7話に登場。
T字型の眼柄器官とカメムシのような胸部、エビのような尾が特徴的な怪獣。
鎌のような前脚と、ロケット弾様の爆発性投射物を放つハサミ状の中脚を使い分け、背中の翅からの怪音波でゲァーチマの感覚器官を狂わせて交戦を回避する技巧派。
体表の甲殻状の組織はゲァーチマの衝角も通さないほどに強固で、発する磁力で人類の兵器に使われる金属弾体は命中させることすら難しい。
攻防ともに優れた能力を持つがゲァーチマのブレスには耐えられず、ダメージを負った身体を脱ぎ捨て逃走を図った。
- ヘットルガ(幼体)
ヘットルガの体内から生み出される小型の個体。FUNEには既知の存在。
何らかの目的により地上を徘徊しておりFUNE匡波支部に姿を表した。この個体は竜國の撃った冷凍弾で動きを止めたところにミチルの蹴りを浴びせられ死亡。
また、成体の胸部前面内部にはこの幼体が無数格納されており、この幼体を溶かし固めることでゲァーチマの動きを一時的ながら完全に封じ込めている。
- 地底怪獣インガロン
第9話~第12話に登場。
ゲァーチマを憎む漁業組合長の息子・幸(ゆたか)がいじめっ子達に仕返しをしていた裏山に出現した地底怪獣。
当初は幼体のように小さく大人しく思われていたが、実は地上に出ていたのは鼻先であり、本体は非常に巨大。
外見はモグラとヒキガエルが合わさったようなずんぐりした体型の四足歩行。水分を蓄えて海から地中へ住処を移動できる。背中には袈裟のような棘か毛で覆われており、長く薄い尻尾を巻いてドリルのように回転させて地中を移動する。また聴覚にも優れている。
非常に食欲旺盛であり、父親に影響されてこの怪獣にゲァーチマを倒してくれる大きく強い怪獣に育ってくれるよう願った幸から毎日パンや野菜、魚などの食料を与えられていたが、それに飽きたらず山中の野生動物どころか人間すらも捕食するようになった。
- ツバグラ
第13話から登場。
インガロン撃破後と同時刻、突如として日本上空に飛来した飛行怪獣。
ステルス機とエイを掛け合わせたような生物感のない形態をしているが、ゲァーチマと同じ生体鉱物(バイオミネラル)の質感をしていることから板鰓類のような同族と推測されている。
上空を高速で飛行する能力を持ち、ムチのように細長い尻尾と猛禽類のような脚で飛べないゲァーチマを圧倒した。
岩手県にある形無き里・葬蛇(そうだ)の里出身の怪獣遣いの少女・江刺ひばり(えさしひばり)とは"つがい"の関係にあり、巻貝か鮫の卵のようなアイテムを通じて喚び出され彼女の意志に従う。
ひばり曰く200年前に怪獣遣いの少女と共に現れてミヨケガミ(ゲァーチマ)の猛威から人々を救ったとされており、人々を現在の東北地方に運んだのち黒沼湖を拠点に大飢饉の時は大陸から食糧を運んだという。
人の地を守るのはゲァーチマではなく自分のツバクラであるべきだと言うが、"つがい"はツバグラに認められた者にしかなれず、他者には一切心を開かないため、10年前の初代ゲァーチマが出現した時はツバグラに認められた者がいなかったため現れることはなかった。
登場人物
舞台は新潟県とされているが登場人物は宮城県に関連した名前が多い。
- 杜野 宮矢子(もりの みやこ)
本作の主人公。10年前ゲァーチマに遭遇。崩壊時に起きた黒い波に巻き込まれた。
自身の造形したゲァーチマのソフビはヒット商品となったものの、内心では複雑な思いを抱えている。
ヨーボヤーに追い詰められたとき憶えた怪獣への怒りからか、玉のようなものを吐き出す。その玉からはゲァーチマが生まれ出でた。
- 宮矢子の母
本名不詳。宮矢子よりも小柄な体格で口元にほくろがあるのが特徴。
「玩具とモケイのモリノ商會」の経営者と見られ、板金工場の元従業員を集め自社製ソフビ人形の製造工場を稼働させている。
怪獣生物研究機構「FUNE」
- 松島 竜國(まつしま たつくに)
海洋学者でFUNEのリーダー各。
自分の苦境を打破してくれた存在であるとしてゲァーチマへは無邪気な好感情を向けている。
第1話冒頭で沈んでいたのは彼の実家。
- 多賀城 透(たがじょう とおる)
生化学担当の研究員。
怪獣への警戒心は強く、怪獣を利用しようとする竜國と上司には懸念を抱いている。
- 塩竈 ミチル(しおがま みちる)
竜國のいとこにあたる長身の女性。
怪獣も生物であるという観点を持っている。
登場兵器
- 戦闘機
F4ファントムに似た外観の戦闘機。第1話に登場。
出現した初代ゲァーチマに攻撃を敢行するも搭載した限りある兵器では刃が立たず、やむなく帰投。
- 堤防
怪獣の出現に備え海岸線沿いに建造された防衛設備郡。第1話に登場。
多数の砲台、潜水機雷の投射装置、海中を探査する定点ソナーで「濁海」から出現した怪獣を迎え撃つ。
ヨーボヤーによって動力部を破壊され沈黙する。
- 戦車
M4中戦車シャーマンに似た外観の戦車。第5話でヨネザワ戦車隊所属の複数の車両が登場したが、ヘットルガに投げ飛ばされたゲァーチマに巻き込まれ行動不能に陥る。
第6話では残存車両で砲撃を実施するもヘットルガの放つ磁性により、金属の弾体は弾道を逸らされ効果を挙げられなかった。
- P―セイバー
F-86に似た外観の戦闘機。第6話に登場。
ヘットルガが持つ対怪獣欺瞞音波の発生器官を破壊すべく出撃。二機の連携により破壊に成功する。
- アイス9(ナイン)
竜國が携行するTAURUS社製CURVEと思しきハンドガンに装填された特殊な弾薬。
着弾点を凍結させる効果がある。
樹脂製の弾頭が幸いしヘットルガ幼体の足止めに成功した。
既刊情報
- 大怪獣ゲァーチマ(1) (ヤングマガジンコミックス):講談社 (2023/11/20)
- 大怪獣ゲァーチマ(2) (ヤングマガジンコミックス):講談社 (2024/3/18)
- 大怪獣ゲァーチマ(3) (ヤングマガジンコミックス):講談社 (2024/7/19)