概要
黒地にグレーのパネルが貼られた初代モデルの、いかにも速そうで近未来的なデザインが印象的である。
2008年シーズンに発表された。直後に行われたヨーロッパやアメリカの国内予選ではこれを着た選手が自己ベストを軒並み更新。世界記録も多数更新された。
その性能は「着るだけで1秒近くタイムが縮む」とも言われたほど。
特徴
それまでの水着に於いて追及されてきた「粘性抵抗(流体の摩擦抵抗みたいなもの)を減らす」というアプローチではなく「スイマーの体型の起伏、筋肉の振動や素肌の波打ちを抑えることで流線型に近づけ圧力抵抗を減らす」という方向性で性能が追及された。
開発にはあのNASAまでもが協力したと公表されている。
それによって出来上がった水着は筋肉の凹凸による起伏を抑える為にすさまじく締め付けが強く、特に全身を覆うタイプは一人では着ることができないほどと言われた。
(これには若干の誇張が含まれており、初回こそジッパーを上げるなどの補助を必要とするものの、二回目以降は生地が身体に合わせて伸びているため比較的容易に着用できるようになる)
この副次効果として、レース後半においても泳者の姿勢が崩れにくくなっており、これも圧力抵抗を減らすのに一役買っている。
また生地は撥水性の高いものが超音波による溶融で接着されるため縫い目が存在せず、摩擦抵抗に関してもそれまでの競技用水着に劣らぬものとなっている。
日本チームにおける着用問題
SPEEDO社は日本に於いてはゴールドウィン社とのライセンス契約の下商品展開をしていたが、肝心の日本水泳連盟がミズノ、デサント、アシックスとしか契約をしておらず、そのままでは日本競泳チームはレーザーレーサーを着用できないという状況下にあった。
そこで日本水泳連盟は契約している三社の改良型とレーザーレーサーを選手に試用させて様子見をしたが、レーザーレーサーの試用が許可されたジャパンオープンでは北島康介の世界記録を含む日本記録が連発されたため、以降の試合でも着用が許可されることとなった。
顛末
この水着の着用者が続々と新記録をマークしたこと、水着の承認如何によっていくつもの記録が取り消しになったこと、また翌年の世界水泳ローマ大会にて新型モデルを着用したスイマーがやはり多数の記録を更新したことを受けて、2009年に競技用水着の国際レギュレーションが厳しく改められた。
その内容は「材料は繊維のみとする(鮫肌加工、ラバー素材、パネル等の禁止)」「男性用は腰から膝まで、女性用は肩から膝まで(全身水着の禁止)」など多岐にわたり、レーザーレーサーの初代モデルを含む多くの競技用水着の使用が禁じられた。
このレギュレーション下で行われた2010年の日本水泳は新記録が激減したが、現在は萩野公介や瀬戸大也、山口観弘、渡部香生子、鈴木聡美といった新世代の台頭によって09年までの記録が徐々に破られつつある。
そしてレーザーレーサーの方もレギュレーションに合わせた形で再設計されたりなどして生き残っている。シームの位置や伸縮率の違う生地で可動性を持たせつつ締め付け効果を与えるなどといった工夫がなされており、初代のコンセプトを引き継いで昇華させていると言えるだろう。
ちなみに
当然ながら締め付け具合が個人的に合わなかった選手もいた。アテネ五輪女子800m自由形金メダリストの柴田亜衣もその一人であり、国内でレーザーレーサーを試用した際の記録は良好ではなく、五輪本戦でも準決勝に出ることすらできなかった。