概要
イギリス秘密情報部の諜報員で「007」のコードネームと「殺しのライセンス」を持つ。
愛銃は「ワルサーPPK」で「007 トゥモロー・ネバーダイ」からは「ワルサーP99」を愛用している。
(「慰めの報酬」「スカイフォール」では再びPPKを愛用している。)
世界を脅かす組織・富豪・科学者などのもとへと潜入し、その陰謀を阻止して世界を救い続けるエリート諜報員。
主要国の言語を自在に操る外国語能力や、射撃・体術などの戦闘能力はもちろん、女性を魅了する整った顔立ち、政治や経済から芸術や風俗に至るまでの幅広い知識、そして何より障害を徹底的に排除し任務を確実に遂行する冷徹さを持った、さまざまな面において一流の男。
ただし、任務の途中でもいい女を見つけるとついハントしようとしてしまう悪癖や、兵器開発室長の『Q』を毎度困らせる悪戯っぽさなどが玉に瑕。
飲酒する場面では、基本的に、ウォッカマティーニをシェイクしたものを頼む。
原作とシリーズ初期の設定では、おそらくは1920年代生まれの第二次世界大戦帰還兵で、大戦で活躍したとされている。
ボンド役がロジャームーアに交代して以降は、演じる俳優の誕生日に合わせた年齢設定がなされてきたが、基本的な設定は変わらなかった。
ダニエル・クレイグがボンド役に採用されてからは、1968年ベルリン生まれの男として再設定されている。
歴代俳優
初代 ショーン・コネリー
出演作品
- 第1作「007 ドクター・ノオ(1962)」
- 第2作「007 ロシアより愛をこめて(1963)」
- 第3作「007 ゴールドフィンガー(1964)」
- 第4作「007 サンダーボール作戦(1965)」
- 第5作「007は二度死ぬ(1967)」
- 第7作「007 ダイヤモンドは永遠に(1971)」
- 番外作「ネバーセイ・ネバーアゲイン(1983年)」
- ゲーム「007 ロシアより愛をこめて」
5作目まで起用されたところで降板したはずだったが、レーゼンビー出演作の不振により1作のみ復帰し、後に、MGMの手を離れて製作された番外編「ネバーセイ・ネバーアゲイン」にて再びボンド役への復帰を果たした。
映画の構造が固まっていない時期であるのも一因していることだが、コネリー時代のボンドは冷徹さと性欲とジョークの塊のような男として描かれている。
コネリーが後に出演した作品では、ボンドを演じていた彼のキャリアにオマージュがささげられていることもある。例えば「ザ・ロック」では、イギリスの元諜報員の老人を彼が演じているなど。
ガンバレルシークエンスでは、初期は飛びのきつつ半身で射撃する形、後期はすばやく体をひねり膝立ちになって射撃する形をとっている。
二代目 ジョージ・レーゼンビー
出演作品
- 第6作「女王陛下の007(1969)」
アクションの上手さを買われて見事2代目ボンドに抜擢されたが、イギリス人なのにイギリス英語が上手く話せない(オーストラリア出身であるため)、撮影中にわがままを言ってスタッフを困らせる、マスコミにはゴシップを書きたてられるなどさまざまな混乱を引き起こし、さらに作品の方もコネリーの人気の影響から脱することができず興行収入がそれまでと比べて低下したため、1作限りで降板することになった。
しかし、当時の監督などは彼の演技を高評価しているほか、ボンドの結婚とそれにまつわる悲劇を描いた第6作の評価は、現在はシリーズの中でもかなり高いものとなっている。
ガンバレルシークエンスは、スタイリッシュに体をひねりながら射撃する。後期のコネリーのそれに似ているが、彼よりも鮮やか。
三代目 ロジャー・ムーア
出演作品
- 第8作「007 死ぬのは奴らだ(1973)」
- 第9作「007 黄金銃を持つ男(1974)」
- 第10作「007 私を愛したスパイ(1977)」
- 第11作「007 ムーンレイカー(1979)」
- 第12作「007 ユア・アイズ・オンリー(1981)」
- 第13作「007 オクトパシー(1983)」
- 第14作「007 美しき獲物たち(1985)」
2代目ボンドの選定のゴタゴタの際に名前が挙がったムーアは、第6作と第7作の混乱を経て、3代目ボンドとして抜擢された。
年齢的には彼はむしろコネリーよりも3歳年上であり、白髪や皺の目立つかなり高齢のボンドとなった。第14作時点での57歳という年齢は、ボンドを演じた最年長記録である(ボンドガール役の女優の母親よりも年上だと知ってショックを受けたらしい)。
加えて、もともとアクションが苦手であるため(スタントマンによる代理演技を多用していた)、キャリア後期はひいひい言いながら必死で演じていたとか。
彼の時代の007シリーズはコミカルな描写が多く、彼自身のユーモラスで軽妙な演技ともあいまって、それまでのハードな雰囲気のシリーズとは大きく異なったものとなっている。
ガンバレルシークエンスでは、あまり体をひねらずに、左手で右手を支えすぐに射撃する。
四代目 ティモシー・ダルトン
出演作品
- 第15作「007 リビング・デイライツ(1987)」
- 第16作「007 消されたライセンス(1989)」
実は第6作の時点でオファーが来ていたが、そのときのダルトンは弱冠23歳であり、若すぎるとして自ら断っていた。
ダルトンのボンドは、日本でつけられた「危険なほどに野生的」というコピーが端的にその魅力を言い表している。
彼の演技は高齢だったムーアのそれとは対照的に若々しく活動的で、作品自体もムーア時代のコミカルな作風から、一転して本格的でハードな雰囲気へと回帰している。ダイアナ妃が第15作を「最もリアルなジェームズ・ボンド」と称したほか、彼のボンドこそが最も原作のボンド像に近いとする評価も多い。
このように彼の出演作の評価は高かったのだが、興行成績的にはいまいちであった。また、製作元が映画化権で揉めてシリーズの製作が滞ってしまい、彼はその間にボンド役への興味を失って降板してしまった。
ガンバレルシークエンスでは、すばやく正面に向き直り右手のみで射撃する。
五代目 ピアース・ブロスナン
出演作品
- 第17作「007 ゴールデンアイ(1995)」
- 第18作「007 トゥモロー・ネバー・ダイ(1997)」
- 第19作「007 ワールド・イズ・ノット・イナフ(1999)」
- 第20作「007 ダイ・アナザー・デイ(2002)」
- ゲーム 「ゴールデンアイ 007」
- ゲーム 「007 トゥモロー・ネバー・ダイ」
- ゲーム 「007 ワールド・イズ・ノット・イナフ」
- ゲーム 「007 レーシング」
- ゲーム 「007 ナイトファイア」
- ゲーム 「007 エブリシングオアナッシング」
ダルトンと同じく、四代目ボンドとしてのオファーが来ていたが、そのときは契約の都合で断っていた。ダルトンの降板を受けて、33歳で五代目ボンドとして出演することになった。
コネリーやレーゼンビー、ダルトンのボンドのハードな雰囲気と、ムーアのユーモラスな雰囲気、そして独特の紳士的な魅力を併せ持っている。また、体のキレがボンド役俳優の中でも随一で、発達したCG技術ともあいまって、迫力あるアクションを見せる。
第16作公開後に007の映画化権を巡った揉め事があったため、ブロスナン出演作でシリーズが再開されるまでに6年を要した。
彼の出演作は、冷戦が終結した後の時代での新たなスパイの活躍を描いている。M役がシリーズ史上初めて女性になり、1作ごとに監督が交代することで作風にも幅が出るなど、それまでと比べてシリーズの雰囲気が変わった。
第21作以降への出演にも意欲的だったが、若きボンドを描くには高齢すぎるため降板。
ガンバレルシークエンスでは、すばやく正面に向き直り、右手のみで射撃する。動作としてはダルトンとほぼ同様だが、その動きのキレと、すらりとした立ち姿が特徴的。
六代目 ダニエル・クレイグ
出演作品
- 第21作「007 カジノ・ロワイヤル(2006)」
- 第22作「007 慰めの報酬(2008)」
- 第23作「007 スカイフォール(2012)」
- ゲーム「007 慰めの報酬」
- ゲーム「007 ブラッドストーン」
- ゲーム「ゴールデンアイ 007(リメイク)」
- ゲーム「007 レジェンズ」
- 「幸福と栄光」
シリーズの設定をさらに一新し、ボンド像が冷戦期のヒーローから現代のヒーローへと変更され、さらに若く未熟なスパイである彼が成長していく姿が描かれるようになった。
そんなボンドを演じるために起用されたクレイグは、シリーズで初めて金髪である上に背も低く、それまでのボンド役俳優とは大きく印象が違い、起用当初はファンから猛烈な非難を浴びた。
しかし第21作が公開されてみると、シリーズでも随一冷徹な外見とキャラクター、そしてそれに反してスパイとしては不安定で未熟であるところ、そこから抜け出して真の諜報員・工作員へと成長していく姿が、非常に高い評価を得ることになった。
製作元の経営難と、作品のビッグバジェット化のために、公開スパンが延びており、キャリアの割に出演回数が少ない。ゲームの方が出演回数が多い有様である。
起用されてから2014年時点で8年が経過しているが、これは事実上、ムーアに次いで2番目に長いキャリアである。例えばコネリーであれば起用されてから5年で5作が製作されいったん引退しているし、ブロスナンも4作目に出演して引退している時期である。
しかし、クレイグは少なくともあと2作に出演する契約を結んでおり、製作元の経営難問題もひと段落したため、第24作の製作は進んでいる。
2012年ロンドンオリンピックの開会式で披露された「幸福と栄光」では、開会式会場まで007が女王陛下をエスコートするという設定で、とうとうエリザベス2世その人と共演を果たした。この作品は、会場上空からふたりでパラシュート降下するという衝撃的な結末を迎えた。
今のところ、従来どおりのガンバレルシークエンスに出演していない。
第21作は若きボンドの活躍にこれを髣髴とさせる演出が重ねられるという特異なオープニングであり、第22作以降はエンドロール直前にシークエンスが挿入されている。