由来
語源はギリシャ語“trauma(傷)”で、そのまま「外傷」を表す単語であった。
それが19世紀に「外部から付けられた心の傷」を説明する比喩表現としてフランス語に取り入れられ、更に英語圏で“psychological trauma(心的外傷)”として体系化されていった。
精神医療の発達が遅れた日本では、1980年代頃に専門家が「発見」した事で研究が始まり、1990年代の阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件といった事象を通して広く一般に認知されている。
故に大半の日本人にとっては「又聞きを繰り返して伝わってきたばかりの外来語」として広まったのであり、その手の言葉にありがちなように、本来の意味を理解した上で使われてきたとは言えない単語である。
概要
少なくとも正式な医学用語では無く、故にこれ自体が治療対象になる事も無いという事は最低限知っておいてほしい。
対象となるのは「トラウマ」の結果として発現する「鬱」や「PTSD」といった個々の症状であり、外傷に例えるなら「傷」自体よりもそれを付けた「凶器」や「暴力」に近い意味合いの言葉に変化していると捉えられる。
例えば日本政府による定義を見ると、厚生労働省HPでは部分的に単語が登場するのみで病名として扱われておらず、むしろ文部科学省HPに詳細な解説が掲載されている様子が伺える。「トラウマ」という単語が医学的ではなく文化的に使用されている事を示す証左である。
また、俗語と化した単語であるだけに「トラウマ」を積極的に否定する立場も存在しており、アドラー系の心理学者などは事実を事実としてのみ捉え、より有益な思考に矯正する事を研究している。
注意すべき点は、「トラウマ」が医学的に通用しないからと言って、個人が「トラウマ」と呼ぶ内容まで否定する事はできないという点である。相手は自身の症状が伝わりやすいように「トラウマ」という単語を選んでいるのかもしれず、「虫垂炎」を「盲腸」と呼ぶのが誤りだからと言って、苦しむ人間を前に何もしない人はいないだろう。
対処が分からない場合は素人判断をせず、専門家の判断を仰ぐべきである。そのために医者はいるのだから。
pixivにおける扱い
pixivにおいても「凶器」や「暴力」といった意味で、「何かと破壊力のある作品」にタグ付けされる傾向にある。俗語としての使用なので、精神疾患と無関係な内容は数多い。
また、ニコニコ動画等と共通して「みんなのトラウマ」というジャンルが確立しており、恐怖映像や極端な難易度のゲーム等が集められている。
それらは「R-18G」のような検索避け用としてよりもむしろ「予測可能回避不可能」として積極的に楽しまれている節があり、中には原作を知らずに単純なホラーとして閲覧に来ていると思われる者すら散見される。
とは言え、恐怖映像等を無理矢理見せる事は立派な虐待であり、そうした体験から心の傷を負ってしまう例も実在する。ネタタグであろうと付けているに越した事は無いのだろう・・・多分。
なお、本気で多くの人間が恐怖するような内容、特に閲覧者の意思とは無関係に不意打ちで出現するものには「精神的ブラクラ」の名前が付けられており、ネット上で広く用いられている。
つまり、それだけ世の中には不特定多数の人間に心の傷を負わせたいと考える、別方向の精神疾患を患った人間が存在しているわけで、いつ、誰が当事者になるかは誰にも分からないのである。
関連イラスト
関連タグ
みんなのトラウマ なにこれこわい(なにこれ怖い) ハートフルボッコ 精神的ブラクラ