この駆逐艦をモチーフにした「艦隊これくしょん」のキャラクターは、「夕雲(艦隊これくしょん)」を参照。
概要
「夕雲」は、マル4計画・仮称第116号艦として舞鶴海軍工廠(戦後、舞鶴重工業→日立造船舞鶴事業所を経て現在のジャパンマリンユナイテッド舞鶴事業所)にて1940年6月12日に起工し、翌1941年3月16日進水、その年の12月5日に竣工した、夕雲型駆逐艦のネームシップ。
夕雲型駆逐艦は『漸減邀撃作戦』を想定した雷撃戦主体の量産型駆逐艦としては最後のモデルで、前級の陽炎型に比して船体が延長され、艦尾喫水下の形状を変更したことにより艦によって不安定だった速力が安定するようになった。
ただし基本的には陽炎型とほぼ同じで、見分け方としては僅かに夕雲型のほうが全長が長く、狭隘だった艦橋を拡張し、空気抵抗減少を狙って流線型化したこともあり艦橋の形状が傾斜していることぐらいである。
のみならず建造時期も陽炎型の後期生産タイプと被っており、戦時のゴタゴタで当時の人たちも陽炎型なのか夕雲型なのかで認識が混乱するようなこともあった。初め「秋雲型駆逐艦」のネームシップになる予定があった、陽炎型最終19番艦秋雲は、その最たる例である。
ミッドウェー海戦～第3次ソロモン海戦
話を夕雲に戻す。
本艦は竣工と同時に横須賀鎮守府籍となるが、竣工の3日後に日本陸海軍が第二次世界大戦に参戦したため、本艦は海面防備部隊に編入され、東京湾外、伊豆諸島方面で対潜哨戒活動に従事する。
翌1942年3月14日、同型2番艦巻雲の竣工と同時に、巻雲、風雲および秋雲とともに第10駆逐隊を編成、その翌月には第1航空艦隊第10戦隊隷下に入った。
この年の6月にはミッドウェー海戦に参加するも赤城、蒼龍など空母4隻が全滅したこともあり敗北。翌月14日に第1航空艦隊も解散、本艦は第10戦隊ごと第3艦隊所属となる。
8月には桂島泊地を出港し、まずトラック諸島を目指すが、米軍機動部隊の出現によりソロモン方面へ急行、そのまま第2次ソロモン海戦に参戦、第1航空戦隊の直衛を務める。
10月の南太平洋海戦をはさみ、11月に生起した第3次ソロモン海戦では、本艦は支援部隊の直衛となった。
翌1943年2月、夕雲は巻雲らとともに第1次ケ号作戦に参加するが、ガダルカナル島カミンボ沖で巻雲が触雷、航行不能に陥る。巻雲は総員退艦となり、本艦により雷撃処分となった。
米駆逐艦と相打ちになり散る
その年の6月、夕雲は第1水雷戦隊に編入され、翌月にはキスカ島撤退作戦に兵員収容駆逐艦として参加、8月3日付で第1水雷戦隊を離れた。
最後の戦いになったのは10月に生起した第2次ベララベラ海戦である。
この時は夜戦で、秋雲（旗艦）、磯風、風雲に続いて本艦という単縦陣で航行し、米軍の駆逐艦3隻（セルフリッジ、シャヴァリア、オバノン）からなる戦隊を先んじて発見するも米艦に機先を制され、米艦の発砲を見た夕雲は戦隊内で最も早く射撃を開始する。
本艦は発砲炎で位置を特定され、集中砲火を受け大炎上してしまうが、構わずシャヴァリアに魚雷1本を命中させこれを大破。その行き足が鈍ったところに、後続していたオバノンが突っ込み艦首大破という状況にいたる。しかし夕雲もまた、シャヴァリアが放った魚雷を浴び沈没してしまう。機関長以下25名は、(オバノンにより雷撃処分された)シャヴァリアの救助カッターを乗っ取り、翌日ブイン泊地へ帰還したが、艦長の大迫東中佐ら、多くの乗員は戦死した。
他方、夕雲に砲火が集中したため他の3艦はほとんど攻撃を受けず、敵の撃退に成功した。この隙に、別行動をとっていた時雨や五月雨などによる撤収部隊がベララベラ島に到着し、救援を待っていた陸海軍部隊の収容に成功している。
2代目「ゆうぐも」は末妹に
夕雲は1943年12月1日に除籍されたが、その艦名は戦後、1978年度に就役した海上自衛隊の「やまぐも」型護衛艦「ゆうぐも」として受け継がれた。初代夕雲がネームシップだったのに対し、こちら2代目は「やまぐも」型6隻の末妹である。
本艦は2004年度末にめでたく除籍されるが、この2代目「ゆうぐも」の代替として就役したのが「たかなみ」型4番艦「さざなみ」である。奇しくも「たかなみ」型護衛艦は、初代夕雲の同型艦「高波」の名を継いだ3代目「たかなみ」をネームシップに持っている。
同じ日本海軍由来の艦名を持つ護衛艦では、その真逆のケースとして、長良型軽巡洋艦最終6番艦「阿武隈」を初代に持つ2代目「あぶくま」(1989～現役)があり、こちらは「あぶくま」型沿岸護衛艦のネームシップである。
