さよならジュピター
さよならじゅぴたー
概要
1977年に公開されたSF映画『STARWARS』やアニメ『宇宙戦艦ヤマト』のヒットを受けて空前のSFブームが巻き起こる中、日本では便乗企画として東宝の『惑星大戦争』、東映の『宇宙からのメッセージ』、円谷プロの『スターウルフ』が制作されていたが、いずれも不振に終わっていた。
そんな折、東宝は『惑星大戦争』以前に作家の小松左京に原作提供の申し入れをしていた。
アメリカ映画に負けない本格SF映画を作りたいという野心を持っていた小松氏は、若手のSF作家を集めての会議を計16回行い、1980年に初稿が完成。ノベライズ版の連載がスタートした。
また、この映画製作の為に株式会社イオを設立。東宝とイオの合作となった。
当初は以前に小松氏が原作を担当した『日本沈没』の森谷司郎が本作の監督として予定されていたが、森谷氏が急逝した為、助監督の橋本幸治が引き継ぎ、小松氏も総監督として現場指揮を執る事になった。特技監督には当時新鋭の川北紘一が勤め、83年4月に撮影がスタートした。
あらすじ
西暦2125年。地球の総人口が180億人を突破し、エネルギー不足に悩む未来。
太陽系開発機構「SSDO」は、エネルギー問題解決法として「木星太陽化計画」を立案。過激な環境保護団体「ジュピター教団」の妨害を受けながらも推し進めていた。
そんな折、計画主任の本田英二は疎遠になっていた恋人のマリアと再会を果たす。だが、彼女は計画の妨害を行っている「ジュピター教団」の工作員だった。
ある日、彗星探査に向かっていた宇宙船スペースアローが謎の遭難を遂げる。調査の結果、地球に接近しているマイクロブラックホールによる原因である事が判明した。
ブラックホールの到達予測期間は二年後。脱出の為の船団は1億人分しか用意できない。
この閉塞状況を打破すべく、SSDOは木星をブラックホールにぶつけて爆破し、軌道を逸らすという作戦を立案した。
作品の評価
邦画初となるモーションコントロールカメラの使用や本格的なCGの導入。メカデザインにスタジオぬえを起用するなど野心的な試みが行われたが、製作費が三分の一程度しか集まらず撮影は難航してしまい、評価も『幻の湖』や『北京原人Who are you』に並ぶ邦画屈指の駄作という烙印を押されてしまった。問題点として以下のものがあげられる。
- 詰め込みすぎた内容
元々3時間超を予定していた初稿を無理やり2時間に圧縮した結果、内容を省略しすぎた上に駆け足的な展開となってしまった。その内容も、「大災害を回避する人類の戦い」という本筋とは別に
- 宇宙人の船と言われているジュピター・ゴーストと火星古代文明の謎
- 太陽系開発機構に所属する主人公と過激な環境保護団体所属のヒロインとのラブロマンス
- 突然挿入されるヒッピーの歌と環境映像
- 主人公と環境保護団体、鮫との対決
- 木星爆破計画
等が詰め込まれ、作品のテンポを悪くしてしまった。
- 世界観の描写不足
初稿やノベライズ版では描けていたはずの未来社会が全く映像に表れておらず、環境保護団体もヒッピーの集まりのようになってしまっている。
- 無重力セックス
本編に主人公とヒロインとのラブシーンがあるのだが、何と3分にもわたって星々を背景に無重力のラブシーンが描かれている(部屋の重力を切って撮影したという逸話がある)という意味不明なシーンがあり、「色調が暗すぎてよくわからない上に、無理やり浮かせているようにしか見えない」と評されている。
これらが原因で配給収入は8億円のみとなり、製作費も回収できない大失敗に終わってしまった。後に発売されたビデオがある程度売れ、フジテレビに放映権が売れた為にプライムタイムでの放映も行われたが、結果として小松氏はある程度の借金を抱える事になってしまった。
その一方で、小松氏が執筆したノベライズ版は評価が高く、星雲賞を受賞している。