概要
1977年の『STARWARS』やアニメ『宇宙戦艦ヤマト』のヒットを受けて空前のSFブームが巻き起こる中、日本では便乗企画として東宝の『惑星大戦争』、東映の『宇宙からのメッセージ』、円谷プロの『スターウルフ』が制作されていたが、いずれも不振に終わっていた。
そんな折、東宝は惑星大戦争以前に作家の小松左京に原作提供の申し入れをしていた。
アメリカ映画に負けない本格SF映画を作りたいという野心を持っていた小松氏は、若手のSF作家を集めての会議を計16回行い、1980年に初稿が完成。ノベライズ版の連載がスタートした。
またこの映画製作用に株式会社イオが設立。東宝とイオの合作となった。
当初は以前小松氏が原作を担当した『日本沈没』の森谷司郎が監督として予定されていたが、森谷氏が急逝したため助監督の橋本幸治が引き継ぎ、小松氏も総監督として現場指揮を執ることになった。
特技監督には当時新鋭の川北紘一が勤め、83年4月に撮影がスタートした。
作品の評価
邦画初のモーションコントロールカメラ使用や本格的なCGの導入。メカデザインにスタジオぬえを起用など野心的な試みが行われたが、製作費が三分の一程度しか集まらず撮影は難航してしまい、評価も『幻の湖』や『北京原人WhoAreYou』に並ぶ邦画屈指の駄作という烙印を押されてしまった。
問題点として以下のものがあげられる。
- 詰め込みすぎ
元々3時間超を予定していた初稿を無理やり2時間に圧縮した結果、内容を省略しすぎかつ駆け足な内容になってしまった。
その内容も、「大災害を回避する人類の戦い」という本筋とは別に
- 宇宙人の船と言われているジュピター・ゴーストと火星古代文明の謎
- 太陽系開発機構に所属する主人公と過激な環境保護団体所属のヒロインのロマンス
- 突然挿入されるヒッピーの歌と環境映像
- 主人公と環境保護団体や鮫との対決
- 木製爆破計画
等が詰め込まれ、作品のテンポを悪くしてしまった。
- 世界観が描けていない
初稿やノベライズでは描けていた未来社会が全く映像で描けておらず、環境保護団体もヒッピーの集まりのようになってしまっている。
- 無重力セックス
本編に主人公とヒロインのラブシーンがあるのだが、何と3分にもわたって星々を背景に無重力のラブシーンが描かれている(部屋の重力を切って撮影したという逸話がある)意味不明なシーンがある。色調が暗すぎてよくわからず、さらには無理やり浮かしているようにしか見えないと評されている。
これらが原因で配給収入が8億円と製作費も回収できない大失敗に終わってしまった。後に発売されたビデオがある程度売れ、フジテレビに放映権が売れたためプライムタイムでの放映も行われたが、小松氏がある程度の借金を抱えることになってしまった。
なお、小松氏が執筆したノベライズ版は評価が高く、星雲賞を受賞した。
あらすじ
西暦2125年。総人口が180億人を突破し、エネルギー不足に悩む未来。
太陽系開発機構SSDOは、エネルギー問題解決法として「木星太陽化計画」を立案。過激な自然保護団体の妨害を受けながらも推し進めていた。
計画の主任本田英二は疎遠になっていた恋人のマリアと再会した。だが彼女は計画妨害を行っている「ジュピター教団」の工作員だった。
ある日、彗星探査に向かっていた宇宙船スペースアローが謎の遭難を遂げる。調査の結果、マイクロブラックホールが地球に接近していることが原因だった。
ブラックホールの到達予測時は二年後。脱出船団はどんなにがんばっても1億人分しか用意できない。
SSDO最後の希望として、木星をブラックホールにぶつけて爆破し、軌道を逸らすという作戦が立案そた。