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空中給油の編集履歴2018/07/05 09:29:47 版
編集者:gsbs
編集内容:文章の細部の修正ならびにリンク切れ画像のさしかえ

攻撃機が給油機を離れるときはいつも、悲運がまさにふりかかろうとしているような心地になる。まるで給油機が、秩序と混沌、平和と戦争をつなぐ最後の細い糸であるかのように思える。訓練ミッションの際にもときどき感じるのだが、自分の乗っている飛行機が、給油機とともに旋回しないとき、これから戦いにおもむくという実感がこみあげる・・・・・・

デイル・ブラウン「レッドテイル・ホークを奪還せよ(下)」P18より

概要

飛行中の航空機に直接、燃料を給油すること。戦闘機などの航続距離を延長する手段として重要である。艦艇爆撃機などの護衛を行う戦闘機や、長時間滞空して哨戒任務に当たる哨戒機、長距離飛行する偵察機、大量の爆装を積む為に燃料を減らして離陸する戦闘攻撃機、陸上機に比べて航続距離が短い艦載機、垂直離陸を行えるが燃費が悪いS/VTOL機には無くてはならない。

空中給油という概念自体は航空機が登場して間もなくから存在していたが、当初は空中で伸ばされたホースを手でキャッチし給油口に入れるという、あまりにも原始的かつ危険な手法であったため滞空時間の世界記録樹立などに使用されただけであった。実用的になったのは後述する専用の方式が開発された1950年代からで、以降軍用機が作戦行動を行う上で無くてはならないものとなっていった。

方式

現在では大きく分けて3つの方式がある。

フライングブーム方式

給油機から燃料を供給するためのブーム(竿)を伸ばし、被給油側の機体の給油口に差し込んで給油する方式。(こら、変な想像をするなよ!)主に空軍が多用する方式であり、給油機に搭乗したオペレーターが給油ブームを操作することで位置合わせを行う。このため1機ずつしか給油ができないが、反面大量の燃料を供給できるため爆撃機などの「動きは鈍いが大量の燃料を必要とする」機体に有利な給油方式である。重量とサイズからある程度大きい機にしかブームを積むことは出来ず、着艦時にはブームが邪魔になる為、艦載機への搭載は難しい。

プローブアンドドローグ方式

先端に漏斗状のパーツの付いた給油用ホースを給油機に取り付け、被給油側の機体がそこに空中給油専用の給油プローブを接続する方式。位置合わせは被給油側の機体操作で行われる。このため被給油側のパイロットにも技量が要求される。また、一回あたりに給油可能な量も少なめ。但し「ホースを給油機からぶら下げておくだけ」なので、ホースの数さえ増やせば一度に複数の機体に給油できる。また、フライングブーム方式ではローターが邪魔で給油できないヘリコプターへの給油も可能。給油装置自体が小型の為、戦闘機などのパイロンに給油用のバディポッド(後述)を懸架することで簡易的な空中給油機とする事も出来る。戦闘機などの小型でよく動き、それほど燃料を必要としない機体に有利な方式で、米海軍をはじめ他の国々でも採用されている。

HIFR(Helicopter In Flight Refuling)

洋上の艦艇から飛行中のヘリコプターに給油を行うための方法。「飛行中のヘリに給油する」という意味で、立派な空中給油の手段の一つである。悪天候時や艦艇側に十分な着艦スペースが無いような場合に使用され、艦艇と並行して飛行するヘリコプターが給油ホースを受け取るためのフックを降ろし、そこに給油用ホースを引っ掛けてヘリに引き上げ、給油口に空中で接続する。「とりあえず給油用ホースさえあれば実施できる」という利点があり、哨戒ヘリには必須のテクニックである。各国の海軍組織でも「必修科目」の一つになっている。

余談

  • 「バディポッド」という装備を使えば、スマホ同士でmicroUSBを介して給電するケーブルの如く、戦闘機同士での空中給油もできる(プローブアンドドローグ方式のみ)。大型の給油母機では危険を伴う敵地上空での給油を想定したもので、制約上大型の機体を運用できない海軍で多く使われている給油方法でもある。口移しとか言うな。
  • フライングブーム方式でも、給油用パイプの先端にアタッチメントを追加すればプローブアンドドローグ方式が前提の機体にも給油できる。
  • フライングブーム方式の機体であってもプローブが付いたドロップタンクやコンフォーマルフェールタンクを装着すればプローブアンドドローグ方式に対応できる。
  • ソ連の爆撃機Tu-16の空中給油機型は、給油側と受油側の翼端同士をホースで結合させ、給油を行うユニークな給油方式を採用していた。
  • ロシア(旧ソ連)のPAZ空中給油ポッドは戦闘機などに搭載するバディポッドとする以外に輸送機等を空中給油機に改造する際にも使用されている。
  • フォークランド紛争イギリス軍は2機のバルカン爆撃機をフォークランド諸島に到達させる為に11機のヴィクター空中給油機を使用し、バルカンへの給油のためにヴィクター同士の給油もリレーのように行った。(ブラック・バック作戦)
  • 偵察機SR-71は飛行して機体が膨張して温まるまではパネルの隙間から燃料が駄々漏れの為、離陸後に給油を必要としていた。
  • 近年の殆どの戦闘機(マルチロール機)は最大積載重量>最大離陸重量の為、フル爆装で離陸する際には搭載燃料を減らして離陸後に空中給油をする。
  • フライングブーム方式の機体に描かれたノーズアートには給油口が絵の股間部となるように描かれた下品なものもある。
  • F-15用のコンフォーマルフェールタンクにはフライングブーム方式のバディポットも計画されていた。

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